テレビマンの仕事の極意と、彼らの素顔に迫る「テレビマンって実は」。
今回は、『めざましテレビ』(毎週月〜金曜5時25分〜)に放送開始から関わり27年、現在はエンタメコーナーの発生演出を担う、石田央美が登場。
長年、お茶の間に親しまれている朝の情報番組は、どのように作られているのか?全4回にわたる連載の第3回目では、連載に石田を推薦してくれた高橋龍平チーフプロデューサーを交えて、生放送中に焦った苦い思い出や、『めざましテレビ』への思いを聞いた。
<【第2回】『めざましテレビ』を熟知する演出担当・石田央美、笑顔の裏で「本当は大汗をかいてる」>
歴代キャスターには「タイプを見極めてアドバイス」
――番組開始から27年で多くのアナウンサーがキャスターを務めてきましたが、コミュニケーションで意識していることはありますか。
石田:やっぱり、みんなキャラクターが違いますから、接し方は多少変えています。特に女性キャスターは交代スパンが短いので、厳しく言われて成長するタイプか、褒められると伸びるタイプか、なるべく早い段階で見極めてアドバイスしています。
高橋:石田さんから見て、歴代の女性メインキャスターはどんなタイプでしたか?
石田:初代の八木亜希子さん、2代目の小島奈津子さんは私より年上で、私自身まだ入って間もなかったので、演出するというよりイチ後輩として接していました。
高島彩さんは本当に器用で、何でもできちゃう。生野陽子さんは、うっかり屋さんなところもあるので(笑)、一緒に確認しながら番組を作っていましたね。加藤綾子さんも、高島さんみたいに何でもできる。永島優美さんは入社してわりと早い段階でキャスターに就いたので、よく相談にのっていました。
現在の井上清華さんは就任からまだ1年経っていないこともあり、何ごとも一生懸命がんばっています。でもがんばりすぎないように、たまにブレーキをかけてあげますね。
キャスターとのコミュニケーションを大切にするのは、私だけでなくフロア(スタジオ)スタッフも同じです。キャスター陣に「ネクタイが曲がってますよ」とか「スタッフにウケてましたよ」とか、ちょっとでも話しかけていくことで、信頼関係が築けていくものです。だからフロアスタッフのみんなには、「積極的に話したほうがいいよ」とよく伝えています。
――これまでの経験で、特に大変だったことを教えてください。
石田:えーと、何がありましたっけ…(苦笑)。
高橋:失敗だらけで、覚えていないんじゃない(笑)?
石田:あ、この前…エンタメコーナーが始まったときに、スタジオにエンタメキャスターが誰もいないという事件がありました(苦笑)。
みんな外で、時間ギリギリまでVTR台本の調整や読み合わせをしていて。「5分前!」と「3分前です!」まで伝えたことは覚えているんですが、ハッと気づいたときには、直前のスポーツコーナーが終わる寸前の締めのコメント中!焦りました…。軽部さんが、あの体で猛ダッシュでスタジオに駆け込みながらナレーション原稿を読む…。放送事故は免れましたが、久々にやってしまいましたね。
高橋:『めざましテレビ』はエンタメだけでなく、いろいろなコーナーが短い尺でどんどん入り、秒刻みで状況が変わりますからね。
――スタジオでの石田さんは、秒単位で変わる尺を把握し、それに合わせて台本を調整し、周りにも気を配り…と、同時にいくつもの仕事をこなしています。頭の中は、どのように動いているのでしょう?
石田:例えば、20秒押しているとわかったら「井上アナのコメントをやめて、軽部さんのコメントも一部カットして、さっき打ち合わせしたパターンのように20秒縮めよう」ということを瞬時に考え、キャスターだけでなく、番組指揮官やほかのスタッフにも伝えます。
そうでないと、カメラが「ここで井上アナがコメントするはずだから」と井上アナを撮ってしまったり、画面の切り替えが不自然になったりと、番組が大きく混乱します。
高橋:『めざましテレビ』は、石田さんのように情熱を持つ、“めざまし愛”にあふれるスタッフが支えています。210人いる番組スタッフのうち、フジテレビ社員は約10分の1、多くは制作会社のスタッフです。私を含むフジテレビ社員は異動があるので、ずっと同じ番組を担当することはほぼありません。
石田さんをはじめとした制作会社所属のベテランスタッフの皆さんが、この長寿番組のリズムを作り上げています。「きょうのわんこ」も、2人のベテランディレクターが続けています。『めざましテレビ』の伝統を継承している石田さんたちは、番組に欠かせない存在です。
エンタメコーナーは『めざましテレビ』の“発明品”
――高橋さんはチーフプロデューサーとして、『めざましテレビ』をどんな番組にしたいと考えていますか?
高橋:こんな時代だからこそ、視聴者の方には、番組を見てポジティブな気持ちになってほしいと思っています。心のスイッチがオンになって、1日を気持ちよくスタートしてほしい、というのが『めざましテレビ』の根幹です。新しい情報をどんどん紹介しながら、どうやってスタジオにポジティブな空気を作り、視聴者の方がホッとできる瞬間を届けられるか試行錯誤しています。
朝はいろいろな情報番組が放送されていますが、『めざましテレビ』には『めざましテレビ』の良さがあると思います。
――「エンタメコーナー」については、どう捉えていますか?
高橋:「エンタメコーナー」は今でこそ、どのテレビ局でも当たり前のように放送していますが、『めざましテレビ』の“発明品”です。それまでは芸能ニュースといえば、ワイドショーでスキャンダルを取り扱うくらいでした。それが、「このアーティストの曲がバズっています」とか「あの芸人が新CMに出演します」という身近な最新情報を扱うようになった。
ちょっと語弊があるかもしれませんが…『めざましテレビ』にとって「エンタメコーナー」は、総裁選のニュースと同じくらい大きな価値があり、心のスイッチを入れていただくために欠かせないものだと思っています。
<最終回「『めざましテレビ』演出担当が守る、初代プロデューサーと八木亜希子アナの教え」>