8月4日(火)、第46回放送文化基金賞が発表され、2019年9月26日(木)放送の『奇跡体験!アンビリバボー 仲間たちとの12年越しの約束SP』が【番組部門】テレビエンターテインメント番組で最優秀賞、この番組で主人公だった杉田秀之さんが【番組部門】出演者賞を受賞した。
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また、フジテレビが開発した「総合コンテンツ管理システムとオンラインキューシートで実現した送出ワークフロー改革」も【個人・グループ部門】放送技術を受賞し、フジテレビは3部門で表彰された。
放送文化基金は、広く放送文化の発展に寄与することを目的として設立された民間の財団で、放送に関する調査・研究や事業に対する助成、制作者フォーラムの開催など人材育成の支援を行っている。「放送文化基金賞」は、過去1年間の放送の中から優れたテレビ、ラジオ番組や個人・グループに送られる賞だ。
【番組部門】テレビエンターテインメント番組で最優秀賞を受賞した『奇跡体験!アンビリバボー 仲間たちとの12年越しの約束SP』は、一度は夢を諦めた男性が果たした奇跡の“復活”と、叶えられなかった仲間たちとの約束を、12年の歳月を経て実現させる一部始終に番組が独占密着。また、主人公の男性、杉田秀之さんが【番組部門】出演者賞を受賞した。
2019年、日本中を熱狂させたラグビーW杯。その夢の舞台での活躍が期待されていた杉田さん。しかし、慶應義塾大学ラグビー部に所属していた杉田さんは、2007年夏、合宿中の練習試合で頚椎(けいつい)・頸髄(けいずい)を損傷し、ラグビーができない体に。合宿の最後に「皆で富士山に登ろう」と誓っていたが、その約束は果たされなかった。そして、10年の歳月が流れたある日、仲間たちから「いつ富士山に登るの?」とメッセージが。
約束を忘れたわけでなかったが現実的ではないと諦めかけていた杉田さんだったが、仲間たちの思いに動かされ、再び富士山を登る決心をした。2019年8月、杉田さん、ラグビー部員、その関係者約80名が富士登山に挑む姿を追った本番組。
インタビューでは、杉田さんが事故当時から現在に至るまでの思いを明かし、ご家族や仲間たちも複雑な心境を率直に語り、それぞれが今回の富士登山をきっかけに「今だから言えること」を告白。2007年当時、ラグビー部の学生トレーナーとして事故現場に居合わせたフジテテレビの鈴木麻衣子ディレクターが企画し、イースト・エンタテインメントとともに番組化、見る人すべてに勇気を与える感動の実話だ。
最優秀賞について「練習試合中の不慮の事故で選手生命を絶たれた慶大ラグビー部の杉田秀之さんが、ケガから12年後、仲間の支えによって約束の富士登山に挑む。その一部始終を、綿密な取材と質の高い再現ドラマ、そして登山への密着取材で見応えたっぷりに描き出した。
杉田さん、監督、部員たち、それぞれの止まっていた時間が動き出す瞬間が記録された奇跡的な番組となった。20年以上にわたって人間が生み出す「奇跡」を追い続け、再現ドラマの手法を磨き上げてきた『奇跡体験!アンビリバボー』の歴史が結実した屈指の“神回”である」、出演者賞について、「自分の弱さを受け入れることで、人は強くなれるということを身をもって示した。“転んでも起き上がる”ラグビーのような彼の生き方が、番組に説得力と感動をもたらした」と評価され、277件(うちエンターテインメント67件)の応募の中から見事受賞した。
一方、【個人・グループ部門】放送技術を受賞した「総合コンテンツ管理システムとオンラインキューシートで実現した送出ワークフロー改革」は、放送だけでない出口が増える中、従来、送出マスター設備のサブシステムとして構築していた番組バンクでコンテンツを管理する考え方から、コンテンツファーストの設備構築に転換したものだ。
「送出ワークフロー改革」総合コンテンツ管理システム概要図
今後も増えるであろうコンテンツの出口に柔軟かつ迅速に対応できるようクラウドを活用、さらに番組の進行情報を記したキューシートを電子化して組み合わせることで、送出ワークフローを改革し、より安全確実な送出を人的リソースを削減する中で実現したことが評価された。
「送出ワークフロー改革」オンラインキューシートシステム概要図
「総合コンテンツ管理システム」は、従来、VTRで管理していた番組素材をデータファイルとして管理するシステムであり、2019年2月から稼働している。本システムでは、放送用番組素材とインターネット動画配信用番組素材などをデータファイルとして一括管理。放送が終了したアーカイブ素材はクラウドサービス上に保管することにより、必要となる機材とスペースを減らしてコストを削減し、運用の自動化と省力化を実現させた。
「送出ワークフロー改革」全体図
また、「オンラインキューシートシステム」は、従来、放送運用のために必要なキューシートを手書きで作成していたが、電子化すると共に、インターネットおよびクラウドを活用することにより、利便性と省力化を実現させた。
<受賞者コメント>
【番組部門】テレビエンターテインメント番組 最優秀賞 受賞
『奇跡体験!アンビリバボー 仲間たちとの12年越しの約束SP』
ディレクター 鈴木麻衣子(フジテレビ)
「この奇跡のストーリーを世の中のたくさんの方に見ていただきたい」というテレビマンとしての思いと、「当時、事故現場で無力だった私が、彼の人生をテレビで描いていいのか」というひとりの人としての思い――この2つの気持ちの間で、企画書を出し、番組にするまで約1年半葛藤しました。
今こうして素敵な賞をいただき、私もこの番組を通じて、“勇気を出して一歩踏み出せば、新しい景色が見えてくること”“仲間の支えがあれば困難も乗り越えられる”ということを学びました。取材にご協力いただいた皆様、放送の機会をくださった皆様、そして番組を見てくださった皆様に心から感謝しております。
ディレクター 谷 悠里(イースト・エンタテインメント)
このような素晴らしい賞をいただき、大変光栄ですし、とてもうれしく思っています。番組では、視聴していただいた皆様に少しでも勇気や希望を感じていただければという思いを胸に日頃から制作を行っています。この回については、障害を負った杉田さんご本人の不断の努力とそして何より慶應大学ラグビー部の皆さんの絆が素晴らしいと感じています。
誰しも困難に直面した時は、一人で抱え込みがちになるのですが、お互いに支え合うことで、一人の時よりも何十倍も力を発揮することができると実感させられましたし、多くの方に勇気や希望を感じていただけたのではないかと思っています。今後も、この賞を励みにより皆様の心に響く番組作りを目指していきます。
【番組部門】出演者賞 受賞
『奇跡体験!アンビリバボー 仲間たちとの12年越しの約束SP』 主人公 杉田秀之さん
12年越しに果たした富士登山の約束、頂上で見た景色の記憶は御来光でも絶景でもなく、涙と笑顔に溢れた仲間の姿でした。人は誰かの支えがあればどんな困難も乗り越えられることを、仲間と経験することが出来ました。私たちのストーリーを番組にしていただいたこと、そして何よりアンビリバボーな出演者賞の受賞をとてもうれしく思います。一人では躊躇してしまう一歩を誰かの力を借りて踏み出すこと、誰かの踏み出す一歩を応援してあげること、そんな支え合いの気持ちが今後もメディアを通して社会に広がることを願っております。
【個人・グループ部門】放送技術 受賞
「総合コンテンツ管理システムとオンラインキューシートで実現した送出ワークフロー改革」
総合コンテンツ管理システムプロジェクトメンバー代表 井村紀彦(フジテレビ放送部)
番組コンテンツの効率的な利活用が求められており、それを実現したシステムとなります。これまで培ってきたファイルベースワークフローにクラウド技術を組み合わせて、さらに磨きをかけました。この度、とても名誉ある賞を受賞できたことを光栄に思います。これからも本システムの有効活用を進めながら、さらなる新しい技術を研究し、みなさまに貢献できるよう努めてまいります。
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