「秋ドラマ辛口放談」の後編は、賛否が分かれる作品が続出した。

11月13日(土)の『週刊フジテレビ批評』は、「本質を突く力作ぞろい!秋ドラマ辛口放談」の後編を放送。

<【前編】『SUPER RICH』江口のりこの魅力&野心作と実質満票の高評価!!ドラマ通が忖度ナシで斬る!各局秋ドラマ>

そんな各局ドラマを、ドラマ解説者・木村隆志氏、日刊スポーツ芸能担当記者・梅田恵子氏、コラムニスト・イラストレーターの吉田潮氏、お笑い芸人の橋爪ヨウコ(こじらせハスキー)というドラマ通たちが、忖度ナシに斬った。

後編は、まずは「ドラマ通におすすめの1本」というドラマを、各人が1作ずつセレクト。

『顔だけ先生』は、貫地谷しほり&八嶋智人のコンビがいい

吉田氏が挙げたのが、ルックス抜群も教師らしいことはしない“顔だけ先生”(神尾楓珠)が高校内で起きるトラブルに巻き込まれる学園ドラマ『顔だけ先生』(東海テレビ・フジテレビ系)。

吉田:これはもう、なんといっても役者陣の魅力です。主演は、神尾楓珠が“顔だけ先生”という、顔だけが良いっていう若い非常勤講師の役。貫地谷しほりが中間管理職で、全部丸投げしてくる教頭先生の役を八嶋智人。もう、この2人のコンビネーション。今さら言う話でもないし、この2人の技術は、芸能界随一なんですけど、改めてその2人のやりとりを見たときに、「すごいな」って思ったんですよね。

プラス結構、息子さん系が多いんですね。サッカーのカズ(三浦知良)の息子さん(三浦獠太)とか、ミスチルの櫻井さん(Mr.Childrenの櫻井和寿)の息子さん(櫻井海音)とか。それぞれが、なんかとてもいい感じの立ち位置で、「あ、なんかそういう括(くく)りもいいな」と思わせるというか。まあ、だから総じてキャスティングがセンスいいかなっていう。

木村:まず顔だけって言いきっちゃうのが、東海テレビの思いきりの良さであって。今、オリジナルの学園ドラマを作ろうって、「どこにマーケットがあるんだ?」っていうようなところ(へ行く)、そこも含めて志が高いですよね。

系列局だけども…っていうところではなく、良いコンテンツを作れば全国で見てもらえるという盛り上がりを感じます。物語は正直、もう少し練ってほしいなと。オリジナルなので、もう少し練る時間と、お金(制作費)も含めてあると、もうワンランク、新しいものが見られたんじゃないかなと思いました。

『スナックキズツキ』は、エアギターあたりから…

橋爪が挙げたのが、お酒を出さないスナックのママ(原田知世)がさまざまな心の傷を抱える客をもてなし癒す『スナックキズツキ』(テレビ東京)。

橋爪:この『スナックキズツキ』で、解決策がエアギター弾いたりとか、いきなり歌い出したりとか、ピアノ弾いたりとか。「どういうこと?」っていうのもあるんですけど、「どういうこと?」くらい、ちょっとズレた方が、私たちも傷ついたのが消化されるじゃないけど、共感できるというか。なので、なんか深夜にゆったり見るにはちょうどいい。

梅田:まあ、私はね、あのエアギターあたりからちょっと狙いすぎだなと思って(笑)、ついていけなくなっちゃったんですけれども。でも、「もうダメかな」って思ったときに、ここに行くと、ちょっと癒されて、ちょっとだけ明るくなって扉を出て帰っていくっていう。そういう世界観が私好きなので、見届けようと思っています。

新美有加(フジテレビアナウンサー):原田知世さんに、私も癒されたいなと思ったんですけど…。

吉田:全然思わない!まったく思わない。そもそも酒がないスナックは行きませんし、その「無理やり歌わされるって、どんな嫌がらせ?」と思いますよね(笑)。

木村:(この流れで)良いお話をしたいんですけども、逆ですね。2010年代っていうのは、ゴールデンプライム帯のドラマが停滞していたんですよ。世帯視聴率を取るために、刑事、医療、法律などの定番型の作品が多くて、停滞していた。一方で、深夜ドラマは自由度が高い分、名作がたくさん誕生していた。

でも、昨年あたりから深夜ドラマが配信数とか有料会員がどれだけ増えたかというところの指標が重視されるようになって、ものすごくベタな漫画原作の作品とか、あとは、お客さんがたくさんいるような、アイドル俳優を使ってしまったりすることで、クオリティ自体は、すごく下がっています。

『和田家の男たち』は評価が分かれ…

木村氏が挙げたのが、ネットニュース記者の息子(相葉雅紀)、テレビ局報道マンの父(佐々木蔵之介)、新聞記者の祖父(段田安則)が一つ屋根の下で暮らし、メディアや家族のあり方を問うホームドラマ『和田家の男たち』(テレビ朝日)。

木村:これ、僕の中では『最愛』(TBS)、『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ)、『SUPER RICH』(フジテレビ)と並ぶ今クール4強、順不同です。全部面白いと思っていて、まず3世代と3マスコミをリンクさせるっていうところは、大石静さん(※)じゃないとできないし。これをやろうと思って乗っかったテレビ朝日もすごいなと思って。

(※)脚本家。秋の叙勲で旭日小綬章を受賞。代表作『ふたりっ子』『功名が辻』(ともにNHK)。

もう1つ魅力がありまして、映像がすごくいいんですよ。映画監督の深川栄洋さん。叙情的な映像を、料理もそうだし、風景もそうだし、人物描写もそうだし、とにかく癒されるっていうところを、金曜日の11時台に作り込んでいるところはすごい。まあ『ドクターX』とか『相棒』(ともにテレビ朝日)とかばっかり作ってるわけじゃないぞ、というところを見せたいんだと思います。

梅田:うーん、私は今のところ何を描きたいのか見えてこないな、という感じなんですよね。まぁ、新旧メディアのカルチャーの違いっていうのを、うまいことコメディにして笑わせてはくれるんですけれども。ほのぼのとした世界観はわかるんですけど、ちょっと私には刺さってない。

『アバランチ』は、今のところ新しい要素が見つからない

梅田氏が挙げたのが、綾野剛演じる主人公が所属するアバランチが、巨大な権力を持つ悪に立ち向かうアクションドラマ『アバランチ』(カンテレ・フジテレビ系)。

梅田:アクション好きにはおすすめですね。もう私、アクション大好きなので、「よっしゃ!」って感じですね。主演の綾野剛さん、春ドラマで、なぜか人魚と恋してたんですけど(笑)。なんか「あら?」って感じだったのが、アクションに戻ってきて、やっぱり綾野剛、こっちだよねっていう。

もうほんといいですよね。まあ、ちょっとあの最後の“ネット私刑”みたいな。ああいう落としどころっていうのは、これ好みがわかれるところだと思いますが、私は許容範囲で。とにかく暴れて、アクションやって、もうかっこよくて、最高!最後まで見ます。

吉田:宣伝としては、看板を大きく打ってましたよね。「新しい」とか「今までに見たことのない」ドラマみたいな。ものすごい期待して見たら「あれ?なんかこれ、どっかで見たことある系の感じですね」みたいな。ちょっと私には、新しさとか珍しさはまったくなかったのですよ。

役者の適材適所はすごくいいと思うんです。だけど「あれ?もっとなんか来るんじゃないの?」って思っていたので。このあと、ハッとさせるような見せ場があるのかなと思うと、ちょっと疑問ですよね。綾野剛があれだけ言ってるっていう作品に対しては、めちゃくちゃ期待値をあげたいんですよ。超えたものが見たいんですよ。だけど、「うん?」って感じですよね。

木村:イヤな言い方をさせていただきますけども、「映像が最高。物語は凡庸」という印象を受けました。もう、ほぼ潮さんに近い。藤井(道人)監督の映像は、連ドラ界トップクラス、最高峰だと思います。ただ、物語はもうド定番要素を山盛りでですね、今のところ新しい要素ひとつも見つかっていません。

こういう作風になったのは、もしかしたら月9との2段組み(編成)になったからじゃないかと思ってしまったんですね。月9からの視聴者は流れてくるというか、まあ流れてほしいということに1話完結のこういう定番の事件ものを扱ったのかなと思ってしまいました。

だとしたら、カンテレらしさが失われてしまうので、ちょっと心配しています。

『真犯人フラグ』には、もうだまされない!?

そして、ここからは「おすすめの1本」に入らなかったドラマについても言及。

企画・原案 秋元康、突然家族が行方不明になった主人公(西島秀俊)が犯人と疑われ追い詰められる、2クール放送の『真犯人フラグ』(日本テレビ)。

梅田:う~ん、まあ考察好きな方にはどうぞ、っていう感じですけど。

一同:(笑)

梅田:思わせぶりな表情をさせたり、意味があるのかないのかわからない小道具で何かを思わせたりとか。そういうのが多くて、ちょっと話が動いてないですよね、全然。私としては、宮沢りえさんが17年ぶりに民放連ドラに復帰って。宮沢りえさんが、なんでこれで復帰したのかの方が謎。こちらの方を考察したいくらいで(笑)。

吉田:そうよねー(と、大きく頷く)。

梅田:私は『あなたの番です』(日本テレビ)も脱落してしまったので。西島秀俊さんと芳根京子さんなので、ここまで見ていますけど、ちょっとこのは先わかりません。

橋爪:私は、ハマってて「秋元康さんぽいな」と思いながら楽しんでるんですけど。でも、ちょっと軽さがあって。私は、軽さがあまり要らないタイプなので、もうちょっとサスペンスというか、「どうなっちゃうの?」をやっていただきたいんですけど。

吉田:いやもう、秋元康にはだまされないぞっていう。

一同:(爆笑)

吉田:だって前回のときに、私(おすすめドラマに)『漂着者』(テレビ朝日)挙げちゃったんですよ。もう、穴があったら入りたい(笑)。本当に、ごめんなさいと思いました。あまりに、雑な最後っていうか。そこに対しては、もう信用しないと思っています。

ただ、まあ、私の好きな役者が入っていて。特に“二択刑事”の渋川清彦が好きなんですよ。「あなた、わかるの?わからないの?どっち?」って。二択でいつも聞いてくる刑事とか、その脇でちょこちょこっと、いい役者さんがいるので、それを見るためだけには見ますかね。

木村:これは、2クールの長編ミステリーに挑んでいるっていうだけで、あんまりけなしちゃうのも大人げないと思っているんですよ。それだけ難しいことやってるんだという話なので、「フジテレビ、じゃあやってくれる?」っていうと、誰も手を挙げないと思うんですよ。というくらい難易度の高いことをやっているので、アラが出るのは当たり前で、前半に盛り上がりがないというのも、ある程度仕方がないから我慢して目を細めながら、後半まで見ましょうという感じはあります。

『ラジエーションハウスⅡ』は、テレビ朝日のよう

窪田正孝演じる天才放射線技師が病の原因を見つけ患者の命を救っていく医療ドラマの第2弾『ラジエーションハウスⅡ~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ)。

吉田:まあ、なんかほら、テレ朝と同じような枠に入っちゃったっていう。もう今さら、『相棒』は挙げないよねっていう。

木村:10年くらい放送するつもりなのかなと思って。

吉田:そうそうそう。

渡辺和洋(フジテレビアナウンサー):その領域まで行っていますか。

木村:領域というか、そういうやり方をやってるってことですよね。変えていかない。定番を見せていく。

吉田:うん。

梅田:私は『ラジハ』ファンなので、続編も快調で、おめでたい!っていう感じですね。月9、最近『監察医 朝顔』とか『ナイト・ドクター』とか、やたら医療ものに頼りがちですけれども。『ラジハ』に関しては、若さとキラキラした、ちょっとした恋もありつつっていう。これは、月9のコンテンツとして間違いがないものだと思うので。しっかり、月9として楽しんでいます。

最後は、木村氏が今クールのドラマを総括。「今期、ハズレがないんですよね。特にプライム帯に関しては。なので、好みが分かれてしまって、全体の視聴率というのは上がりにくいかもしれないですけども、みんなこう愛情を持った作品があるということで、いいクールになって、まあ特に恋ですとか、恋愛ものは『SUPER RICH』もそうですね。いい感じで、クリスマスを迎えると思います」と締めくくった。

「本質を突く力作ぞろい!秋ドラマ辛口放談」前後編は、FODにて無料配信中!