8月1日（土）より放送される、桜庭ななみ主演のフジテレビ系オトナの土ドラ『13（サーティーン）』は、13歳の時に忽然と姿を消した少女が、13年後に突如家族の元に帰ってきたことから始まる衝撃のクライムサスペンス。

原作は、イギリスで大ヒットを記録したBBCのドラマ『サーティーン／13 誘拐事件ファイル』。浅野妙子が脚本を手がけ、原作のもつサスペンス要素をそのままに、家族それぞれのストーリーも丁寧に描いていく。

桜庭演じる相川百合亜は、13歳で誘拐され、13年後に生還するが、家族はバラバラでそこに彼女の居場所はない。当初は、監禁された被害者の美少女として注目されるも、犯人の男と顔見知りであった可能性が浮上すると一転、男を誘惑した小悪魔だと、世間から追及される。

外見は26歳ながら、精神は13歳で止まったかのようで、とらえどころのない百合亜。二転三転する彼女の証言に、捜査を進める担当刑事たちも疑問を持つ。そんな中、第二の事件が発生し…。

百合亜が隠していた真実、家族が抱えていた秘密とは？13年ぶりの彼女の帰還がもたらすのは、家族の再生か、それとも…？

美しくはかなげで、不思議な雰囲気をまとった百合亜は、しかし苦境にもめげずに生きていく心の強さを持つ。そんなヒロインを演じた桜庭に、作品の魅力、役柄への向き合い方、自身の少女時代などを聞いた。

──すでに撮影は終了しているそうですが、撮影を振り返っての感想はいかがですか？

今回、オトナの土ドラの主演を初めて務めさせていただきました。今までサスペンスドラマをあまり経験したことがなかったですし、誘拐されるという役柄は想像の中でお芝居をしなければなりませんでした。物語も衝撃的で、自分にとって新たなチャレンジで、すごくいい経験をさせていただきました。

撮影は無事終わって、あとは放送されるのを待つだけです。たくさんの方に見ていただけるような作品になったと思います。

──百合亜は13歳で誘拐されますが、桜庭さんが13歳の時は、どんな女の子でしたか？その時の気持ちや経験が今回の役づくりに役立ったことはありますか？

中学1、2年生の時は、軟式テニスで部活に励んでいました。朝7時から朝練をして、放課後にまた練習して、真っ黒に日焼けした活発な女の子でした。

百合亜は、26歳の直前に監禁場所から出るのですが、気持ちはまだ13歳の部分が多く残っています。

13歳のころは、何事にも一生懸命だったり、純粋に物事に取り組む気持ちというのを持っていると思います。そんな13歳のころを思い出しながら演じました。

──当時、好きな男の子はいましたか？

13歳の時より、小学6年生の時の方が好きな人がいました（笑）。自分の好きという気持ちを相手に伝えるのは恥ずかしかったので、ドキドキしながら話したり、手紙の交換をしていました。

──百合亜は、前半はほとんどセリフがなく、表情や動きで見せていくと思いますが、どこに難しさを感じましたか？

取調室や家のシーンが多かったのですが、1話2話3話と進むにつれて、ちょっとずつ表情を変えています。ただ、それよりも、「この人は何を考えているのだろう？どういうことを思っているのだろう？何を隠しているのだろう？」と、見てくださる方に思ってもらいたくて、心の中でお芝居をしている感覚が強かったです。

今回は、感情を内に秘めて演じることが課題だったので、その加減が難しかったです。

──お芝居としてほかにチャレンジしたことはありますか？

13歳の一面を持っていたり、監禁されているからこそ変に敏感になったり、変に強くなったり、いろいろな面を持っている、そういう役は初めてでした。新たな私を見ていただきたいです。

──原作ドラマをご覧になって、主人公のアイビーが魅力的だとおっしゃっていました。桜庭さんが百合亜を演じる上で、参考にしたり刺激を受けたところはありますか？

原作ドラマを見た時に、最後まで答えがわからなかったり、何をどう思っているのかわからない表情がすごく魅力的でした。アイビーが純粋さと色気を併せ持っているところにも引き込まれていったので、そういうところを自分も出せたらと思いました。

でも、日本版にリメイクするにあたって、原作とは違って、家族を色濃く描いているので、私自身も家族の関わり方などを深く考えながら演じました。

──“桜庭”百合亜として、もっとも意識したことは何ですか？

人によってしゃべり方を変えたりしました。例えば、犯人に自分のことを信じ込ませるとか、犯人に自分は寄り添っていると伝えるところは、すごく本気っぽい話し方にしたり、逆に、家族といるときは13歳の少女のような話し方で、それが嘘っぽく見えるようにしたり。

でも、嘘っぽく見えるけど、それは百合亜の本心だったりするので、見てくださる方が「どうなんだろう？」と思ってくださるとうれしいですね。

──ご自身で混乱しませんでしたか？

混乱ばかりしていました（笑）。取り調べのシーンは、百合亜の表情が変わらなかったりするので、「あれ？今何やっているんだろう？」と思ったこともありました。

でも、監督と確認しながら、1シーン1シーン丁寧に作っていけたと思います。

──百合亜は、監禁されて、助けが来ないという絶望の中、それでも生き抜こうとします。その望みを失わずに、彼女を支えたのは何だったと思いますか？

それは、誘拐される前の13年間の家族の愛や、当時好きだった恋人への気持ちや思い出が強かったのと、絶対に待っていてくれると信じる気持ちが、あきらめない気持ちになったのだと思います。

──今から13年前は、桜庭さんが芸能界に入った節目の年です。そこから女優として活動した13年間がまるまる奪われてしまったらと、演じながら考えましたか？

それは、すごく想像しました。自分の中で、13年間がなくなったらどうなっているのだろうとか、家族と13年間離れていたらどうなるのだろうと考えたら、もう百合亜が本当にかわいそうとしか言えません。

この後どういうふうに生きていくのかということにもつながります。人との関わりがなくなってしまったら悲しいですよね。そういうことをすごく考えました。

──桜庭さんだったら、生き抜いていけそうですか？

う～ん、立ち直ることができるのでしょうか。でも、私も百合亜と同じように家族の愛を受けてこの年まで生きてきたし、今もそうですけど、家族の愛や周りの方の支えがあるから、生きていきたいと思います、前を向いて。

百合亜は、本当に強いと思います。きっと、誘拐される前から自分の意思が強かったのだと思います。ただ、不器用でその強さを表現できないので、他の人から勘違いされたりするんですけど。

──新型コロナウイルス感染症の影響で、撮影が約2ヵ月間中断されましたが、その間、どのような気持ちで過ごしていましたか？

撮影ができない間も、自分の中から百合亜が離れることはありませんでした。ただ、自粛したからこそ、より百合亜に向き合うことになったし、もっといい作品にするためにどうしたらいいかと考えるようにもなりました。

あの2ヵ月で、冷静になって百合亜を見ることができたので、表情や話し方を深く考えられて、お芝居の仕方も変わったと思います。監禁された時の恐怖の表情は、よりリアルにできたんじゃないかな、と（笑）。

──浅野妙子さんの脚本はいかがでしたか？

人に対しての愛情描写や、百合亜と犯人のちょっとしたト書きにも恋愛要素を匂わせていて…そういうところが魅力的でした。

物語の展開も、早く次が見たいと思うような終わり方で、とても素敵な脚本だと思います。

──シリアスな展開が続く中、現場の雰囲気はいかがでしたか？

現場は、すごく楽しかったです。家族や警察のキャストの方と楽しくお話させていただきました。

「犯人とはあまり仲良くならないでね。撮影が終わってから楽しく話して」と監督に最初に言われたのですが、犯人役の方がすごくおもしろかったので、結局、楽しくお話しちゃいました（笑）。

──最後に、視聴者のみなさんへメッセージをお願いします。

13年間は、待ち続けた家族にとってすごく長いし、女性としても13歳から26歳はもっとも変化する時期だと思います。百合亜が帰ってきたときの家族の反応や、家族の関係性が日本版ではすごく魅力的に描かれていますので、ぜひ見ていただきたいです。

監禁されている場所は、原作は鉄格子をはめ込んだコンクリートの部屋ですけど、日本版は、本当は逃げられるんじゃないかと思ってしまうような日本家屋なんです（笑）。でも、それが逆に洗脳されて逃げ出せないのかと思わせたり、すごくおもしろく描かれているので、そこも注目していただきたいです。

この作品は、見ていて吸い込まれていくような、目が離せないサスペンスです。百合亜の最後もどうなるかみなさんに応援していただきたいし、前に進む百合亜と同じように、“過去は変えられないけど、未来は変えることができる”というメッセージを感じていただけたらうれしいです。

撮影：島田香