楳図かずおさんという漫画家に、皆さんはどのようなイメージを持っていますか?
「まことちゃん」、「おろち」、「猫目小僧」などの代表作か、もしくは、赤×白のボーダーTシャツを着た愉快なおじさん?はたまた、15年ほど前にちょっとした物議をかもした奇抜な“まことちゃんハウス”でしょうか。
そんな楳図さんの“比類なき芸術性”に焦点をあて、代表作を通じて、気鋭のアーティストらとともに「楳図かずおの世界」を表現する美術展「楳図かずお大美術展」が、現在、東京・六本木ヒルズにて開催中です。
「楳図先生の世界を全身で浴びたい」
そんな思いを胸に、いざ「楳図かずお大美術展」内覧会へ乗り込んだのは、アラフィフ編集者の信子。
当サイトの“自称人気コーナー”ドラマ対談<信子と庸平>を担当する信子は、ドラマやイケメンも好きだけど、実は楳図歴約40年の古参ファン。小学生のときに従兄弟から「まことちゃん」を薦められ、“まことちゃんブーム”が到来。
モナカを見ると、いまだに「中には〇〇が入っているのではないか?」とドキドキし、母乳を飲まない赤ちゃんがいると聞けば、「お母さんの〇〇に〇〇が!?」と疑ってしまうほどの毒されっぷり。
作中に登場した「英一、父、いいえ」「母、貴世子、よき母」といった回文は、今もしっかり脳裏に焼き付いています。
ちなみに、楳図先生が生んだ傑作キャラクター群における推しは「赤んぼう少女」の“タマミ”と、「まことちゃん」の“らん丸”。
会場へ足を踏み入れると、最初に出迎えてくれるのは本展のメインビジュアル。
2017年に高畑充希さんと門脇麦さんのW主演でミュージカル化もされた「わたしは真悟」の主人公、真鈴と悟が東京タワーを登っている光景に、いきなりテンションが上がります。
続いては、2002年にフジテレビで『ロング・ラブレター~漂流教室~』として、ドラマ化もされた「漂流教室」のエリアへ。
原作では、大和小学校の高松翔ら6年生たちが荒廃した未来世界へ送り込まれてしまい、翔たちは未来で生きることを選択するという物語が描かれましたが、ドラマ版では舞台を高校に移し、教師役で窪塚洋介さんと常盤貴子さん、生徒役で山田孝之さん、山下智久さんらが出演。大きな話題となりました。
そんなことを思い出しながら歩を進めると、注目のアート・ユニット「エキソニモ」による「わたしは真悟」をテーマにした巨大インスタレーションがお目見え。
12台のモニターには「わたしは真悟」の作中場面が映し出され、床に山積された大量のケーブルの上にはランドセルが無造作に転がっています。
27年ぶりの新作は、マンガではなく101点の連作絵画
楳図年表や各年代で発表した代表作、映画化された作品のポスター展示に続いて、この大美術展の目玉である「ZOKU SHINGO 小さなロボット シンゴ美術館」のゾーンへ。
これは、1990年代の「14歳」以来、楳図先生にとって27年ぶりの新作となるもので、1980年代に描かれた「わたしは真悟」待望の続編なのです。
製作に4年の期間を費やし、完成した本作はアクリル絵画による101点の連作で、真鈴と悟がたどったその後が描かれています。
コマ割りが一切ないため、すべてにセリフが存在するわけではありませんが、端のほうに小さく鉛筆でキャプションが書きこまれており、真鈴と悟の心情が生々しく伝わってきます。
ここは最も時間をかけて鑑賞してほしいエリアです。
興奮さめやらぬ私の目に飛び込んできたのは、「14歳」グラフィックゾーン。
1990年に連載がスタートした本作を読んで以来、鶏肉のササミを見るたびに細胞からチキン・ジョージが生まれてくるのではないか、と緊張してしまうのはここだけの話(笑)。
その後は、楳図にインスパイアされたアーティスト・冨安由真さん、鴻池朋子さんらによる作品を展示。そして、グッズショップで本展は終了となります。
しかし、お楽しみはまだまだ続くのです!
展覧会会場と同フロアにあるカフェ「THE SUN&THE MOON」が、コラボレーションカフェ「UMEZZ CAFÉ」として期間限定オープン。
楳図作品や楳図先生本人をイメージしたメニューを提供していて、その“キモかわいい”メニューは一見の価値あり。
楳図先生は今秋、86歳となります。ですが、先生の遊び心と創作意欲は衰えることなく、いまだ発信を続けています。
見えない敵が猛威を奮う世の中だからこそ触れていただきたい、楳図先生ならではのユートピアがここにはありました。私は、心の中で「サバラ!」と唱え、会場を後にしたのでした。
最新情報は「楳図かずお大美術展」公式サイトまで。
©楳図かずお ©エキソニモ ©冨安由真 ©鴻池朋子 ©楳図かずお/小学館