青春群像劇の名手・志村貴子による、様々な恋模様を淡く繊細に描いたオムニバス漫画「どうにかなる日々」が劇場アニメ化され、10月23日(金)より劇場公開される。
志村は、心の機微までも写し出すような繊細な線から紡ぎ出される、唯一無二な空気感を持つ作品で人気の漫画家。
アニメ化もされた「青い花」(全8巻/太田出版)や「放浪息子」(全15巻/エンターブレイン)といった作品同様に、魅力的な登場人物たちが日常を舞台に織り成す恋物語は、淡々としていながらも心に突き刺さり、時に扇情的な一面を見せる。
2002年に発表された「どうにかなる日々」 は、志村が「群像劇を描きたいと最初に自覚」し、その後の作風を決定付けた記念碑的作品。今回、16年の時を経て、詩的な映像・音楽演出に定評のある佐藤卓哉監督(「あさがおと加瀬さん。」)によってアニメ化された。
フジテレビュー!!では、原作者である志村に、この作品を描いていた当時のこと、志村作品に見られる重要なファクターである“関係性”、そしてアニメ化への想いなどについて、話を聞いた。
<志村貴子 インタビュー>
「すべてここから始まっていたのかな」
――最初にアニメ化の話を聞いた時の気持ちは?
20年近くも前の作品なので、「なぜ今?」って(笑)。お話をいただいてからは、どんどん完成に向けてプロジェクトが進んでいきました。しみじみと「いよいよか」ということもなく、「もう!?」という感じです。
アニメに関しては、すべてお任せして大丈夫だなと思い、私から何かを言うということはなかったです。苗字しか決めていなかったキャラクターについて、「下の名前を決めてもらえませんか?」と、聞かれて答えるくらいでした。
――アニメは原作のネームを忠実に生かされていて、志村作品が持つ“心地良い間”まで再現されています。実際にご覧になっての感想は?
「この人たちはこんなふうに動いてしゃべるんだ!」と、感動しました。だいぶ昔の作品ということもあり、自分では細かいところを忘れていて、「そうだった、こんなネームを書いていたな」って思い出したり。
実は、恥ずかしくて原作をちゃんと読み返していないんですよね。今回はキービジュアルを描くために、速読レベルでバーッと読み返して「理解した!」くらいの感じで(笑)。原作者としては、恥ずかしい気持ちと嬉しい気持ちとありがたい気持ちと、複雑な感情が渦巻いています。
ありふれた日常が大切な物語になる
関係性から生まれる4つの物語
――アニメには原作から「えっちゃんとあやさん」「澤先生と矢ケ崎くん」「しんちゃんと小夜子」「みかちゃんとしんちゃん」の4つのエピソードが選ばれています。
「入れて欲しいエピソードがあったら教えてください」と尊重してもらったんですが、選んでいただいた4つは、たまたま私も気に入っていたエピソードだったので、そこも含めて異論はありませんでした。
この作品を描いていた当時は、「次はどうしよう、その次はどうしよう」という感じで本当にいっぱいいっぱいな状態で、今見ると「もっとこことここを繋げられたら良かったのにな」とか、後悔もあったりします。
――志村作品には、いろいろな関係性が登場し、その関係性から生まれる物語が多いように思います。
今はもう明確に自覚して「群像劇を描きたい」というスタンスで描いていますが、いろいろな人が登場して、1話ずつクローズアップする人が変わる、というものを自分は描きたいんだと自覚した最初の作品です。後々考えると、すべてここから始まっていたのかなと思います。
そういう作品ばかり描いているからか、時を経て突然に、「この時のこの2人はこの後どうなったんだろう?」と、自分自身で掘り下げたくなります。だから作品のキャラクターをしれっと別の作品に登場させる時もあります。
――新作の「おとなになっても」(講談社「Kiss」にて連載中)は、「えっちゃんとあやさん」のその後の物語のようにも感じます。「おとなになっても」の編集担当も「どうにかなる日々」と同じ上村晶さんですね。
「どうにかなる日々」の執筆時は、まだ私が漫画の仕事を始めて間もない時で、担当の上村さんも漫画編集の仕事を始めたばかりで…本当に長い付き合いになりました。私は初めての連載でペースも分からないし、「私が描きたいものって何なの?」ということも分からなかった頃です。
「漫画家になりたくてなったはずなのに、何も描きたいものがないなんて」と悩んでいた時期だったので、仕事の打ち合わせや雑談をしていて、「一緒にお仕事をするのはこんなに楽しいんだ」と思わせてくれる存在が上村さんでした。上村さんとの出会いは本当に大きかったんです。
――漫画家と担当編集という2人の関係性も作品に影響を与えているんですね。(インタビューに同席していた)上村さんにお聞きします。悩んでいた志村さんに対して、どんなアドバイスをされたんですか?
上村:私はもう1回1回のモチベーションをとにかく上げてもらうということに注力していました。「今日元気になってネームに取り掛かってもらえたら…」という気持ちで(笑)。でもこの作品がいろいろな人間の関係性を描くシリーズになると良いなとはずっと思っていました。
――志村さんは、どのような時に創作意欲が湧きますか?
人と会って話したりしている時ですね。仕事のことを考えなければいけないのに、それこそ上村さんととりとめもない雑談をしているうちに、「あ!これ漫画にしたい」と急にひらめいたり。上村さんとの月イチ映画会というのも大きくて、映画を観ている時に、「あ、百合(女性同士の恋愛)描きたい!」となったり。そうして「描きたい」と思い始めると、もう進んでいきます。
何かが起こりそうで起こらない感じを好む人に観て欲しい
――アニメはクリープハイプが主題歌を担当し、初めて劇伴音楽を制作しました。聴いた時の感想は?
聴いた瞬間にすぐ「めっちゃいい曲。好き!」となってしまいました。もちろんクリープハイプさんの曲は存じ上げてはいましたが、劇伴音楽でも関わってくださるということも驚きでしたし、主題歌も書き下ろしてくださることになって、びっくりしちゃいました。音楽に関しても全てお任せしています。
――アフレコ現場の見学にも行かれたそうですね。
一度だけ見学に行きました。アフレコ現場の雰囲気自体は過去にもちょこちょこ見学させていただくことはあったので知っていましたが、いまだに緊張しちゃうというか、慣れません。
もちろん休憩の時間はみなさん和気あいあいとされていますが、いざ本番となると、当たり前だけど誰もしゃべらないでアフレコを真剣に聴いている緊張感にまず耐えられないし、しかも私が書いたネームを読み上げられているという(笑)。自分のネームじゃなければもっと客観的に聴いていられるのに、恥ずかしいんですよね。
それにアフレコを聴いていると、過去の自分と対峙できていない部分を掘り起こされている感じで叫びたくなります。最近の作品だとしても、「今ここでネームを読み上げますね」と言われたら「ちょっと待って!」となります。
――最後に、このアニメをどんな人に観てもらいたいですか?
掴みどころのないフワッとした話ばかりなんですけれど、アニメは「いかに原作の空気感を壊さずに映像化するか」ということを大切にしつつ丁寧に広げてくださっているのでそこを楽しんでほしいです。
テーマらしいテーマもない、メッセージ性もない、観る人を元気にさせるという作風でもないのですが、何かが起こりそうで起こらない感じを好む人にこの映画を観てもらえたら嬉しいです。
「どうにかなる日々」
監督 :佐藤卓哉
原作:志村貴子「どうにかなる日々」/太田出版
キャスト:花澤香菜 小松未可子 櫻井孝宏 山下誠一郎
木戸衣吹 石原夏織 ファイルーズあい 早見沙織 島﨑信長 田村睦心 天﨑滉平 白石涼子
音楽:クリープハイプ
主題歌:「モノマネ」/クリープハイプ
最新情報は、「どうにかなる日々」公式サイトまで
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