いつ、どんな時代でも、私たちに夢、ときめき、感動、笑いといったカラフルな感情をもたらしてくれるテレビドラマ。その世界の中で、時に主人公を支え、時に物語に彩りを与えるのがバイプレイヤーだ。彼らの存在はキャストを輝かせ、物語のスパイスとなり、見るものをより楽しませる。
そんなドラマに不可欠なバイプレイヤーへのインタビュー企画 『支人【ささえびと】~人を輝かせる達人』。
今回は、現在放送中のフジテレビ系オトナの土ドラ『パパがも一度恋をした』で、主人公・吾郎(小澤征悦)のいとこ、英太=通称:トカレフを全力熱演中の塚本高史をフィーチャーする。
本作のようなコメディからハードボイルド、恋愛モノに人情話まで、幅広い作品で多彩な役柄を演じる彼が語る、バイプレイヤーの愉悦とは?
トカレフ役はスーパーポジティブで憎めないヤツだと思っていただけるように、見た目から作りこみました
――時折、吾郎の前に現れるトカレフは、謎めいたキャラクターですが、塚本さんにとってはどんな人物なのでしょうか?
神出鬼没で、吾郎と多恵子ちゃん(塚地武雅/本上まなみ)の仲をかき回したかと思えば、相談に乗ってみたり。口では「会社を経営している」と言っていますが、劇中で描写があるわけでもないので、本当に謎な人物ですよね。
「今が面白ければいいや!」と思って行動しているキャラなので、時にゲスなことを言ったりもしますが、スーパーポジティブで憎めないヤツだと思っていただけるように、見た目から作りこみました。
――衣装も髪型もド派手といいますか、インパクトがすごいですね!
「亡くなった妻(本上)がおっさん(塚地)の姿でよみがえる」というありえない設定に真実味を持たせるために、スタッフさんがすごく頑張ってくれているんです。僕の衣装も、基本は古着なんですけど、すごい熱量で探してくださっていて。だから、髪型も「せっかく僕がやるなら」と、スタッフさんとディスカッションしながら決めていきましたし、サングラス、イヤーカフなどの小道具も毎回みんなで一緒に考えながら使っています。
――もしこんなことが自分に起こったら…と考えてしまうストーリー展開ですが、どう受け止めていますか?
現実世界では亡くなった人の魂がよみがえって他人に乗り移るなんて、ありえないんでしょうけど、僕も僕の家族も、この先どんなふうに見た目が変わってしまうか、わからないですよね。その時にどういうふうに相手と向き合って、支えていけるのか、というのは人間にとって究極のテーマだと思います。
僕自身は、見た目がすべてではないと思っているから、大切だった人に「よみがえってきた」と言われたら、最終的には信じると思います。受け止めるまでに時間はかかるでしょうけどね。
――そんなありえないことが身に降りかかった吾郎の喜怒哀楽を、小澤さんは見事に表現されていますよね。
小澤さんと塚地さんがガッツリ突き抜けて、恥ずかしげもなく恥ずかしいことをやってくれているので、僕らもこの作品をもっともっと面白くしようと思います。それに、スタッフも心から楽しんでものづくりをしていることが伝わってくるんです。
でも、原作が完結しているから、続編はないでしょうし、この現場は今回で終わってしまう。なんだかそれがもったいなくて。そんなふうに思える現場は久しぶりかもしれないですね。
『木更津キャッツアイ』から18年。自分が古田新太さんが演じたオジーのような立ち位置の役を演じていると思うと、感慨深い(笑)
――ノリがよくてポジティブなトカレフは、『木更津キャッツアイ』(TBS)シリーズで演じたアニに通じるようにも思いますが、こういう作品との相性がいいのでしょうか。
三枚目のおバカキャラが好きなんです。カッチリした作品とは違って遊びがあるから、自分でもアイディアを出しやすい。あれから18年経って、『キャッツ』で古田新太さんが演じたオジーのような立ち位置のキャラクターを自分が演っていると思うと、感慨深いな(笑)。
でも当時から、主役はやりたくないとずっと言っていたんです。ずっと脇でバカをやっているような役ができていれば、僕は幸せですって。
――なぜ「主役はやりたくない」と?
もちろん、主役は選ばれた人しかできない、魅力がある人にしかできない仕事。でも、脇役がしっかり地に足つけて演じているからこそ、主役が輝くんだとも思うんです。脇役として主役を輝かせるほうが技量を求められる部分もあると思いますし、それがきちんとできる役者さんは決して多くないんじゃないかって。僕は、例えば、大杉漣さんのような役者さんに憧れがありますね。
それに、主役を演じる俳優さんって、否が応でも注目されちゃうでしょ!?(笑)その分、制約が出てきてしまうので、それよりはもっと自由な存在でありたいなと思っています。
――自由だから、さまざまな役に挑戦することができ、見る側からしても新鮮に感じるのかもしれないですね。
僕自身、役や作品によって自分の知らない自分をたくさん引き出してもらって、仕事を始めてからの22年間は「こんなこともできるんだ!」っていう発見の連続でした。
そうやって発見を積み重ねてきたお陰で、最近ようやく、自分に向いているもの・いないものも分かってきて。自分が演(や)っても150%の力を発揮できる自信がない役は、お断りする踏ん切りもつくようになってきました。
――さまざまな役を演じていらっしゃいますが、具体的にこんな役を演じたい、というのはあるのでしょうか?
今年で38歳になりましたが、どっしりした存在感や演技が必要とされる役柄は40代、50代になってからでもできると思うので、30代の今でなければできない役柄で、今を切り取ったような作品にたくさん関わっていきたいです。そういう意味では、『パパ恋』のトカレフは今しかできない役柄だと思っています。
僕なりに先を見据えて、新しい共感を呼ぶものを発信していきたい
――では、40代、50代に向けての展望は?
10代の僕は2020年に東京でオリンピックをやるなんて想像したこともなかったですし、世の中、何が起こるかなんてわからないですから。インターネットの発達にともなって、テレビや映画を取り巻く状況もどんどん変化しているし、僕の表現の場所も、今と同じではいられないだろうとは思っています。
『木更津キャッツアイ』があの時代になかった新しいことをやったからこそ若者の共感を得たように、新しいことにチャレンジする新しい世代もどんどん出てくるだろうし。でも、「若い人たちの間で、こういうのが流行ってるからやってみよう」となるんじゃなくて、僕なりにこの先にどんなことが起こるかしっかり見据えて、新しい共感を呼ぶようなものを発信していけたらと思っています。
――最後に、『パパ恋』の視聴者へメッセージをお願いいたします!
最後まで吾郎ちゃんの気持ちになって、夫婦のファンタジーの物語をたっぷり楽しんでいただければ、見終わった後、いい話だったなってきっと思っていただけると思います。今後の展開の中で、トカレフの恋も描かれますので、相手が誰なのか、どんな恋なのか、そこも期待してください!
撮影/河井彩美