東京大学法学部出身という共通点を持つ、同世代の作家3人が語らいました。

9月4日(日)の『ボクらの時代』(フジテレビ)は、新川帆立さん、辻堂ゆめさん、結城真一郎さんが登場。

大学在学中に作家デビュー、そのとき…

新川と結城さんは、辻堂さんの大学在学中の作家デビューの衝撃を振り返りました。

新川:私が(大学卒業後の)ロー・スクールのときに、辻堂さんのデビューを知って。

辻堂:あ、そういうことか。(新川さんが)ロー・スクール2年生のときに、私が(大学)4年生。

新川:4年生でデビューして。で、(東京大学)総長賞をとられていましたよね?

辻堂:あ、そうですね。

新川:で、「やっべー」って思った(笑)。

辻堂:(笑)。

結城:あはははは!まったく同じ。「やっべー」って思いました(笑)。

新川:これがいわゆる「辻堂ショック」です。(結城さんに)ですよね?

結城:そうですよ。学食か何かで友だちとラーメン食べているときに、「同級生が小説家でデビュー決めたらしいよ」って言われて。みんなは「へぇ」くらいだったんですけど、僕だけラーメン食う手止まって、「は?」っと思って。「出し抜かれた」と思った(笑)。

辻堂:いや、出し抜いてないですよ(笑)。

結城:やっぱり結構、いろいろ取材とかでも、「同世代、同じ学部にこんなに(作家が)いるって、珍しいですよね」っていうふうに言われるんですけど。珍しいのは事実だと思うんですけど。でも、そのきっかけとして、やっぱりひとつ「辻堂ショック」っていうのがあるので。

新川:いや、ありますよ。

結城:だから、必然っちゃ必然な気もするんですよね。それ(辻堂さんのデビュー)に触発されて、あとに続いたっていう感じだと思うので。

結城さんは「あそこで辻堂さんが出てなかったら、月9二期連続新川帆立(※)はなかった」と言い、新川さんも「本当ですよ」と同調しました。

(※)新川さんは、現在放送中の月9ドラマ『競争の番人』(フジテレビ)と、前クールの『元彼の遺言状』の原作者。

刊行ペースの秘密は家族にあり!?

結城さんは、新川さんと辻堂さんの刊行ペースについて「速い」と言及しました。

結城:純粋にすごいなって思います。「ようこんな出し続けられるな」と思って。僕、結構ビビってるんですけど。

新川:ビビってる(笑)?

結城:新川さんとか「デビュー何年目でしたっけ?」っていう。

辻堂:新川さん、ほんとペース速いですよね。

新川:私はまだ、1年と半年なんですよ。

辻堂:信じられない。

結城:なのにもう、1人(新川さんだけ)の棚ができるぐらい(書籍が)出てるんで。

新川:このなかで、一番後輩です(笑)。

結城:いや、そのはずなんですけどね(笑)。「なんであんなに書けるんだろうな」って、すごくビックリしてるんですよね。

新川:(辻堂さんに)「1日6時間は書く」とか決めてらっしゃる?

辻堂:うん。2人目(の子どもが)生まれてから5時間に減って、どんどん自分に甘くなってるんですけど。

新川:いやいや。

結城:え、5時間って相当すごいですよ。

辻堂:いや、でも、会社員として働いていたときは、定時が当たり前に8時間はあるわけじゃないですか。そこからなるべく落とさないようにって、なぜか強迫観念があって。

新川:おお。

結城:ストイックさ。

辻堂:「フルタイムで働いていたい」みたいな気持ちが。会社員の気持ちが抜けきらないまま、専業作家になっちゃった節がありますね。

新川:おうちで書かれるんですか?

辻堂:家が一番多いですかね。ほとんど家のリビングのダイニングテーブルとかで書いてます。新川さんは?

新川:私も家派で。

辻堂:あ、家なんですね。

新川:どこでも書けるんですけど、家が一番疲れないというか、楽だなと思って。基本、家でもう…。

結城:どこでも書けるって、ちなみに、どのレベルの環境でも書けます?

新川:私、マジでどこでも書けて。普段、海外、シカゴにいたりするんですけど、シカゴと日本と行ったり来たりするときの、飛行機に乗り込む前の搭乗口の椅子とかで書いてます。

辻堂&結城:(笑)。

辻堂さんと結城さんは、「これが刊行ペースの理由か」と感心しました。

このあと、新川さんが「(辻堂さんのように)毎日のルーティンが守れない」と打ち明けると、2児の母でもある辻堂さんは「やり始めると止まらない性格。でも止めないと、どこかで生活にひずみが出てきちゃう」と語りました。

辻堂:家族に迷惑かけてもいけないし…。

新川:いや、もう私、家族には迷惑をかけ続けてるんです、そういう意味でいうと(笑)。

辻堂:そうなの?

結城:え、どんなところで(迷惑を)かけているなって実感してます?

新川:私が追い詰められてるときに、家事がまったくできないので、もうだいたい夫が全部やってくれて。

結城:(笑)。

辻堂:(笑)。やさしい。やさしい旦那さん。

結城:やさしい。めちゃくちゃ、いいじゃないですか。

新川:夫を残して日本に帰って、一人暮らししているときは、生活に時間を取られて生産量落ちるんですよ。

結城:(笑)。

辻堂:旦那さんがいないと、落ちちゃうんだ(笑)。

新川:うちの夫が一緒にいると、ちょっと書ける枚数、増える。

結城:なるほど。原稿に専念できる…。

新川:できる。

結城:環境が整うと。

辻堂:めちゃくちゃ支えられてる!

新川さんは「私の原稿が表に出てるのは、本当、夫のおかげ」と感謝しました。

同じ経歴を歩んできたのに…ツイートに凹んだ過去

「辻堂ショック」を経て、作家への道を本格的に探り始めたという新川さんと結城さん。

結城:(辻堂さんのデビューが)悔しい反面、自分にも別に不可能じゃないんだろうなっていうのは思ったんですよ。要は、身近にそういう人が実際、出ているんで。可能性ゼロの道じゃないんだろうなっていうのは、素直に思えた。だから、頑張れたっていうのもあるかもしれないです。

新川:でも、私は経歴の近さにむしろ、凹んだときがあって。

辻堂:そうなんですか(笑)?

新川:私、小説を書くために、3回転職していて。どんどん拘束時間が短く済むように転職を。で、ちょうど転職の切れ間の無職のときに、辻堂さんのTwitterをフォローしていたら、辻堂さんにお子さんが生まれてっていうのを見て、私はそのとき、パートナーもいなくて、無職で、小説家でもないんですよ。

辻堂:(笑)。

新川:「同じ経歴を歩んできたのに、何がこんなに大きく差ができてしまったんだろう?」みたいなふうに思いました。

辻堂:じゃあ、劇的な状況の変化じゃないですか。私の子どもが生まれてからって…まだ2歳半なんで、2年半しかたってないのに。

新川:そうです。

結城:そうですよね。

辻堂:結婚されて、アメリカに住んでいて、本もバンバン出ていて。すごいですよ。

結城:それで、ドラマ2期連続(原作)で。

新川:いや、違うんですよ。違うんですよっていうか、私がやってることは変わってないんですよ。書いてる内容も生活も変わってなくて。なんか…周りが追いついてきた。

辻堂&結城:(笑)。

「偉そうに聞こえるけど、本当にそうなんです」と語る新川さんに、結城さんは「すごい。言ってみてぇ!」と声を上げました。

東大を目指した理由と親からの声がけ

3人は「なんで東大入ろうと思ったのか」についても語りました。

新川:最初、医者になろうと思ったんですね。

結城:ほう(笑)。ほう。

辻堂:理系?

新川:森鴎外コース。

結城:ああ、そういうことか。

新川:「小説家になりたい」っていうのは、常にあったんですけど、それは結構、時間がかかるなと思って。当時、出版業界のことを調べて、で、全投稿者数とデビューした数を割るとだいたい5%くらいなんですよ。てことは、1年に1作書いて20年続ければ取れるはずじゃないですか。

辻堂:すごい(笑)。

結城:おー。だいぶ。

新川:とりあえず、20年くらい見とけば小説家になれるだろうと思って。

辻堂:すごい(笑)。

新川:で、その間、食べなきゃいけないので、それだったら医者かなと思って。東大も最初は、医学部というか医学部にいけるはずの理科三類っていうところがあるんですけど、そこを受けてたんですね。で、前期試験でそこ落ちて。で、医者はダメだったけど、「専門職で安定して働く」というところで医者を選んでいたので、法学部いって弁護士になれば同じかなと思って法学部に。

結城:(笑)。

辻堂:(笑)。医者か弁護士か、だったんですね。

結城:すげぇ。

新川:何か、資格を取ろうと思って。

辻堂:はあ。すごい。

新川:で、なんで東大かっていうのは、あんまり明確な理由がないんですけど。

結城:そうですね、それでいくと自分も明確に東大でなきゃならない理由があったわけじゃなくて。自分が都内の中高一貫の男子校の、わりと進学校といわれる学校だったので。周りが自然と(東大を)目指してる友人が多くて。その波にあえて逆らうだけの、何か自分のやりたいこととかがあるわけでもないし…。

新川:え、でも中高、進学校ってことは、小さいころからお勉強はできたんですか?

結城:できたかどうかはわかんないですけど、でもやってましたし、やって、ある程度の成績が出たりっていうことはあったんで。だから、そんなに苦手意識とかが別に勉強にあるわけではないですね。

新川:ご両親に「勉強しなさい」って言われたことありますか?

辻堂:「勉強しなさい」って、その言葉自体は、あまり言われなかったです。

結城:ああ、それは言われたことないですね。

辻堂:具体的に「あの宿題の、これやんなくていいの?」とか、「プリント5枚やったら?」とか。その辺は、たぶん親が自分がやってる勉強のことを、何をやっているかを把握しながら言ってたから、あんまり反発したくならなかったんじゃないかなって。

結城:それはまさにそうですね。うちも漠然と「勉強せよ」って言われたことはないっすね。だから「これを今日ここまで終わらせたほうがいいんじゃないのか」とかっていうことが多かったんで。

新川:へぇー。できる管理職の指示出しみたいな感じですね。

辻堂:(笑)。

結城:そう!そうなんですよ。

新川:ちゃんと見ていて、進捗わかってて、ちゃんと次の一歩を教えてあげるっていう。

辻堂:そうかもしれない。

辻堂さんは「ただ『仕事しろ』とか『怠(なま)けてるんじゃないのか』みたいなものではなかった」と、親からの声がけを振り返っていました。

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