若手漫才師日本一決定戦『M-1グランプリ2019』の敗者復活戦に挑んだ唯一のアマチュアとして、一躍スポットライトを浴びた「ラランド」。
ツッコミのニシダ(25)とボケのさーや(23)は、上智大学お笑いサークル「Sophia Comedy Society」の同期で結成された男女コンビだ。ボケの手数の多さとキレのあるテンポ感が特徴で、その実力は、プロダクションやプロの芸人からも定評がある。彼らの人気を裏付けるように、2月に行われるコンビ初となる単独ライブのチケットも早々に完売したとか。
なんと言っても肩書きが異色であることでも注目される2人。さーやは大学卒業後、広告系代理店に就職し“会社員”として、卒業を見送ることになったニシダは“大学生”として、それぞれ「二足のわらじ」で活動している。
ネクストブレイク必至!といわれている彼らが、事務所に入らずあえてアマチュアを貫くその理由とは?フジテレビュー!!は、単独取材を行った。
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さーや「有休やフレックス制度利用で、平日もお笑いの仕事を」
――さーやさんは広告系代理店勤務とのことですが、どのようなお仕事をしているのですか?
さーや:主に企業のPRです。商品の売り出し方をプランニングしたり、イベントを運営したり、平日の5日間は普通に出勤してますよ。入社してしばらくは仕事を覚えるのに手一杯でしたが、今は少しずつ慣れてきたので、有休やフレックス制度を利用しながら、平日もお笑いの仕事をちょこちょこ入れています。上司の理解があるのもありがたいですね。
ニシダ:就職したらもうお笑いはやらないんじゃないか?って思ってたけど、ちゃんと両立してるよね。
さーや:最初から両立する気満々だったからね。そもそも広告系の会社を志望したのも、仕事内容が「お笑いの世界と表裏一体」だと思ったからだし。芸人として表舞台に立ちながら代理店として裏方も知ることができたら、最強じゃない?どっちの経験も活かせるし、これは無双できるチャンスだ! と思って(笑)。
――実際に「会社員としての経験がお笑いに役立った」と思うことはありますか?
さーや:PR・広告の業務を通して、どうしたらメディアが取材してくれるか、商品価値を際立たせることができるか、という「メディアフック」を考えるようになりました。おかげで、自分たちを売り出すには何が必要か、何が不要か。今までよりも客観的に考えられるようになったかなと思います。
ニシダ:じゃあ、俺たちのフックって何?
さーや:やっぱり“現役大学生”と“港区OL”っていう肩書きだよね。本当はOLですっていうの嫌だけど、メディアに切り取ってもらうためにはこれくらいわかりやすいパッケージの方が絶対いいから。今だと“第7世代”っていう言葉もそう。おかげで、若手の芸人にもやっとスポットライトが当るようになったしね。
ニシダ:“第7世代”ってくくられるの、そんなに好きじゃないけどね。
さーや:尖ってんなー(笑)。どっちも私たちにとってはありがたいフックですよ。
「どうやったらテレビに出られるか」広告業界の目線でネタ作りを考えるように
――では、ネタづくりでの変化はありますか?
さーや:実は最近、ニシダのネタを制限しがちなんです。
ニシダ:そうだっけ?
さーや:ごめん(笑)。ニシダの提案するネタってブラックか下ネタだからさ。面白いけど、マス(大衆)向きじゃないなと思って。やっぱりテレビでカットされずに使われるには、局側のコンプラとか、“大人の事情”も考えてネタを作らなきゃいけないわけじゃん。
ニシダ:でも、ライブでは結構出してるよね?
さーや:生の現場だと、逆にちょっと尖ったネタの方が反響があるからね。だから、そういう時はニシダの存在がすごくありがたい。
ニシダ:社会人経験のおかげで、ネタの使い分けができるようになったってことか。
さーや:逆に、芸人としての意見が広告の仕事で役立ったこともあるよ。お笑いと社会人って一見無関係に見えるけど、やっぱりちゃんと線で繋がってるなって実感してます。2つの顔を持って活動するメリットはでかいと思う。
ニシダ「色のあるツッコミをしたいから、本をめちゃくちゃ読む」
――ニシダさんは、大学生活いかがですか?
ニシダ:今は大学3年で、一度退学して復学しました。同じところでずっと足踏みしてる感じ。「残りのキャンパスライフを楽しもう」とか、もはや考えたこともないですね。とりあえず卒業したいです。
さーや:でかい顔して居座るんだったら、サークルにも貢献しないとだよ。ニシダ主催のお笑いライブとかやったら?後輩を育てるためと思ってさ。
ニシダ:そうか。残りの学生生活に意味なんてないと思ってたけど…何かやってみようかな?
さーや:私はニシダをもっともっと前に立たせたい。せっかく見た目も備わってるし、何振られても返せるくらい知識もあるんだからさ。
ニシダ:本はめちゃくちゃ読んでたからね。中高6年間は、年間100冊以上くらい。今も週1冊ペースでは読んでるかな。小説、エッセイ、純文学、詩集、ハウツー本…。ちなみに今読んでるのは『20歳の自分に受けさせたい文章講義』っていう本。
さーや:お前いくつだよ!今25だろ(笑)。
ニシダ:文章の構成とか学んだことないからさ。色々学んで、今よりもっと「色」のあるツッコミができるようになりたいんだよ!俺の伸びしろは、まだまだあると思ってます。
――ニシダさんも卒業後は就職を検討しているのですか?
ニシダ:どうしよう。就職しようかな。
さーや:ありだと思う。やっぱり収入源はあった方がいいし。
ニシダ:(さーやと)同じ会社、入れる?俺。
さーや:絶対無理(笑)。ニシダは建築関係行きなよ。
ニシダ:なんでだよ。ステージ上がる前にクッタクタだよ。
さーや:それか資格取ったらいいんじゃん。野菜ソムリエとか日本酒検定とか。『え、その見た目で?』みたいなギャップのある資格持ってたら面白くない?その掛け算は絶対にお笑いにも生きるはず…って私、ニシダよりニシダの将来心配してる(笑)。
「“二足のわらじ”と言われることに違和感、プロ・アマの枠組みもナンセンス」
――アマチュアかつ“二足のわらじ”と言われていますが、周りの反応はいかがですか?
さーや:正直、「お笑いごっこ」とか「趣味でしょ」っていじられることの方が多いですね。なんでこんなに風当たり強いんだろうって、悔しい思いをしてきました。今はテレビにも出るようになってきたので昔ほどではないですが、それでもやっぱり、言葉に棘を感じることはあります。なんでだろう。“二足のわらじ”っていうと、片方をむげにしているように聞こえるのかな?
ニシダ:どっちも、遊びでやってるわけじゃないのにね。
さーや:そもそも“二足のわらじ”って言われるのにもちょっと違和感を感じてる。だって、他の芸人さんだってさ、お笑いやりながらバイトしたり副業したり…何かしら二足履いてるわけじゃないですか。それと大して変わらない気がするんだけどなぁ。
ニシダ:もう“わらじ”とかじゃなくて、“はだし”でいいんじゃない(笑)。
さーや:プロとかアマチュアとか、そういう枠もいらないよね。令和になって働き方改革とかフリーランスとか、新しいスタイルが尊重され始めてるのに、その考え方はナンセンス。枠組みに捉われず、もっと広く自由に活躍していきたいなって思ってる。お笑いもそうだけど、いずれは私、音楽とか舞台とか演技とか…いろんな顔を持ってマルチに活躍できるようになりたいんですよ。
ニシダ:いいね。でもそれにはまず、お笑いで有名にならないと!あと、自分たちの思っていることを表現できる場も欲しい。テレビだけじゃなくラジオとかWEBとか、幅広く。
さーや:あとはやっぱりM-1ね。あからさまに人生変わると思う。
ニシダ:優勝したいね〜。けど、今のままじゃまだ全然足りない。まずは決勝に進めるように頑張ろうか。
「まずはフリーの芸人として挑戦したい、次の賞レースは決勝目指す」
――2020年の展望は?
さーや:今は社会人とお笑いのバランスが5:5くらいですが、ありがたいことに仕事のオファーが増えつつあるので、今年はお笑いの方が増えるんじゃないか?と期待しています。
ニシダ:そのためにもオーディションを頑張って、出れる場をもっと増やして行かないと。
さーや:次の賞レースは絶対決勝いかなきゃ!公式のYouTubeチャンネルも公開して、単独ライブの動画とかも上げていきたいし。Instagramとかnoteとか、SNSでの発信にも力を入れていきたいね。
――この先、事務所に入る予定はありますか?
ニシダ:今のやり方がラランドに合っていると思うから、しばらくはないかな。
さーや:フリーの芸人として、自分たちの力でどこまでいけるのか挑戦したいね!ただ、フリーでの活動にも賞味期限はあると思うから。新しさが必要になったら、その時こそ事務所にお世話になるタイミングなんじゃないかなと思ってます。“ラランド第二章”に突入みたいな(笑)。そこからは、事務所に入っているからこそ実現できる大きな仕事も経験させてもらって。更にその先の第三章、第四章を考えていけたらいいなと思っています。肩書きや枠に捉われないで、これからも前代未聞なことをどんどんやっていきたい!
プロフィール:ラランド
2014年に上智大学のお笑いサークルSCS( Sophia Comedy Society )で結成。学生漫才大会での優勝や、在学中に出演したプロライブへの出演など、学生時代から実力派として注目されてきた。『M-1グランプリ2019』では、アマチュアで唯一準決勝まで勝ち進んだコンビとして一躍話題に。若手芸人の登竜門とも言われる『新春おもしろ荘』(元日に日本テレビ系で放送)への出演も果たした。