『アライブ がん専門医のカルテ』第1話完全版
恩田心(松下奈緒)は横浜みなと総合病院に勤務する腫瘍内科医。様々な症状のがん患者と日々向き合い、忙しい毎日。この日、心は担当患者・高坂民代(高畑淳子)に再発の告知をしていた。民代にとっては幾度目かの経験で、軽口を叩き去っていく。
一息つく間もなく、次は、化学療法室から緊急の連絡。初日の研修医・結城涼(清原翔)と共に駆けつけると、初来院の男性患者、殿山俊樹(石田明)が倒れていた。心たちが適切な処置を施し落ち着きを取り戻すが、紹介状に添えられたカルテを見て、心は違和感を感じる。担当医である消化器外科部長の美川に生検を進言しようとするが「勝手に人の患者を診るな」と言われてしまう。
仕事を切り上げ、向かったのは関東医科大学附属中央病院。3ヶ月前に事故に遭い意識不明となっている夫を見舞うためだ。少しの滞在の後、すぐに息子の漣を迎えに行き帰宅すると、義父・京太郎(北大路欣也)が出迎える。来ることは聞いていない。世話を焼いてくれるのはいいが、気を使う相手。公私共に息つく暇がない…これが、最近の心の日常だった。
心は民代から紹介された患者家族会に顔を出す。互いの辛い心中や、未来への展望を患者やその家族が吐露しあっていた。心が語る番になり、匠のことを話し出す。しかし、心は途中で「こんなことをして意味ありますか?」と言ってその場を離れてしまう。心が自転車を取りに行くとタイヤがパンクしていた。
仕方なく押して帰ると、一台の車が傍に止まった。女性は患者家族会にいたスタッフで、彼女の車に乗せてもらうことに。心は先ほどの自分の発言に動揺している。静かに話を聞いてくれる女性に心は匠の話を続け、いつしか涙が溢れ出す。
数日後、心が殿山の検査をオーダーしようとすると、すでに受けていることがわかり、結果を見ると予想は的中。だが、カンファレンスで美川から今度は「勝手に検査をするな」と言われる。
身に覚えがない心が反論しようとすると、自分が検査をしたと名乗り出る女性医師の姿が…。それは、患者家族会の帰りに心を車に乗せてくれた女性で、別の病院から転籍して来た消化器外科医の梶山薫(木村佳乃)だった。ともあれ、殿山は心が気がついた検査を薫が行ったことで初期がんである事が判明し、手術が可能となる。
次の患者は、村井恵子(石野真子)。恵子は原発不明がんで他の病院で余命宣告されているが、治療方針を探りたいと訪れた。心は結城と、同じく研修医の夏樹奈海(岡崎紗絵)を伴って診察にあたる。
恵子には山本忠司(田口トモロヲ)というパートナーがいた。心は二人に原発不明がんは手術が難しく根治は望めないと説明する。それでも恵子を治して欲しいと懇願する山本に、心はがんの治療に必要な三つの“あ”を教える。“焦らない、慌てない、あきらめない”山本はその言葉を持参したICレコーダーに収めた。
その日も診察を終えた心は、匠の病院に寄ってから漣を連れて帰宅。すると、京太郎が夕食を作って待っていてくれた。漣を寝かしつけた京太郎は心に一人で抱え込まないようにと告げる。患者家族会のチラシを見てしまったのだ。京太郎は心と漣の生活を心配している。そして、京太郎は匠についてはお互いに覚悟しなくてはいけないと話す。
心は再び患者家族会に行き、先日の発言を詫びる。そんな時、参加者で妊娠している女性が腹痛を訴える。心はスタッフとして居合わせた薫とともに女性を診て、救急車を呼んで彼女が通っている産婦人科に搬送。
二人の連携の甲斐(かい)あって、女性は無事に出産する。産婦人科医が心と薫に感謝を述べる。その時、産婦人科医は女性が卵巣腫瘍で卵巣を一つ取っていたために癒着が酷く、手術に手こずったことを明かす。その言葉に心はある事に気づく。
それは、恵子について。心が恵子に卵巣がんの検査を行うと他の病院の検査ではみられなかった反応がみられた。しかし、CTなど詳細な検査では恵子の卵巣、卵管に病巣は認められない。心は恵子が女性だけ、しかも10万人に5人以下という腹膜がんであること診断する。心は腹膜がんの性質は卵巣がんと同じなので、抗がん剤で腫瘍を小さくしたのち手術も可能だと恵子と山本に話す。
早速、恵子の抗がん剤治療が始まるのだが、アレルギー発作を起こしてしまう。別の薬に変えてみるのだが、またしてもアレルギー発作を起こす。すぐにでも手術を出来ないかと焦る恵子に、心は現状では難しいと話す。すると、恵子は治療をあきらめると言う。恵子のパートナー、山本は若年性認知症を患っており、恵子は山本の記憶が定かなうちに思い出を作っておきたいと心に打ち明ける。一方、恵子のアレルギー発作を知った薫は、前の病院の同僚医師、須藤進(田辺誠一)に手術の可能性を相談。薫は恵子の手術を手伝う事になっていたのだ。
恵子の治療についてのカンファレンスが行われる。婦人科医の前園敬之(高橋洋)は現状での手術はリスクが高すぎると言う。だが、薫は手術を勧める。前園は反対するが、薫はこのままだと恵子はいずれ腸閉塞になると反論。判断は心に任されることに。
治療を断念して退院しようとしていた恵子を、早朝、心は車椅子で院内庭園に連れ出す。そこには山本が待っていた。ちょうど日の出の時間。太陽が姿を現し、あたたかな光が空に広がる。山本は指輪を出して恵子にプロポーズ。「来年の今日、自分は恵子を忘れているかもしれないが、恵子のいない明日は考えられない」と告げる山本。その言葉で、恵子は手術を決断する。
恵子の手術は困難を極めたが、薫も執刀に加わって無事に成功する。数日後、病室に戻った恵子は、山本がレコーダーに記録した三つの“あ”をずっと聞き勇気づけられていたことを明かし、心に「ありがとう」と伝える。
一緒にいた結城は、医局に戻る途中「ありがとうは、四つめの“あ”ですね」と心に話す。院内庭園で心は薫に感謝を述べる。しかし、薫の脳裏にはある出来事が去来していた。心はいつものように匠の病院へ…。
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