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NHK紅白歌合戦「けん玉ギネス記録への挑戦」3年間の軌跡の裏側

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2019年の大晦日の夜、第70回紅白歌合戦で盛り上りを見せた「けん玉ギネス記録への挑戦」。そこに参加した筆者(フジテレビけん玉部部長)が、その舞台裏を明かす。

ことの発端は2017年、第68回NHK紅白歌合戦に出場する“けん玉道四段”を持つ演歌歌手・三山ひろしが、持ち歌の「男の流儀」を歌唱している間に、三山を合わせた計124人が、連続でけん玉を成功させるというギネス世界記録に挑戦したことだった。

しかし初年度は、14番目の男性の失敗により記録達成とならなかったが、翌2018年は成功し、感動の一幕となった。そして3年目となる2019年、連続成功を狙ったが、チャレンジは失敗に終わった。

この3年間に渡るギネス記録への挑戦にスタッフとして携わり、チャレンジにも参加した筆者が、裏側からの実情を踏まえ、どんなドラマがあったのかをお伝えする。

自腹参加!日本全国からけん玉愛好者が集結!

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ギネス記録の挑戦記録名は「Longest line of people catching a kendama ball consecutively」、直訳すると「けん玉を連続してキャッチする最多人数」。

この挑戦では、けん玉に3つあるどの皿に乗せてもいいのだが、紅白では大皿に乗せることになっている。

けん玉パフォーマンスユニット「ず~まだんけ」のコダマンとイージー。けん玉を世界に広める活動を行っている「一般社団法人グローバルけん玉ネットワーク(以降GLOKEN)」の代表・窪田保が中心となり、北海道から九州まで全国から参加者が集められた。

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一般参加者はすべてボランティアで、年末の本番を含む3日間の宿泊費、交通費、飲食費すべて自腹のため、かなりの意気込みで参加している。そうして集まった参加者は“けん玉ヒーローズ”と呼称されている。

2017年の一般参加者は121人。そこに、三山、DJ KOO、三山のけん玉の師匠であるけん玉ちばちゃんも参加した。

未知への挑戦 !楽勝ムードが一転、成功への不安

参加者はNHK内のスタジオに3日間こもってリハーサルを繰り返す。けん玉の“大皿”という技は、けん玉の技の中でも最も基本的で、けん玉を嗜む者にとっては非常に簡単な技である。

参加者には、けん玉プレイヤーとして名人・達人級も少なくなかったため、楽勝ムードが漂っていたのは間違いない。

しかしながら、いざリハーサルを始めてみると成功率は3割程度。リハーサルを繰り返すごとに「成功するのだろうか…?」という不安な空気が漂い始めていた。

どれほど難しいチャレンジなのか?

そもそもこのチャレンジが、どれほど難しいものなのかを数値で表してみる。

“大皿”を100回中99回は成功する人が、124人集まったとする。
0.99^124≒0.288=28%(0.99の124乗)
確かに、約3割しか成功しなかった数字が計算通り現れている。
であるのならば、1000回に1回しか失敗しない場合を考えると
0.999^124≒0.883=88.3%
約9割の成功率が導き出された。

本番で成功させるためには、124人が1000回中999回成功する状況を作らなければならない。

初年度となる2017年は、誰が失敗してもおかしくなかった。実際“14番さん”は、リハーサル中に1度も失敗しなかった実力の持ち主であった。

それに加え集まった参加者は一般人であり、日本で最も視聴率の高い番組のひとつであるNHK紅白歌合戦で、ギネス記録を達成するだけでなく、姿勢、表情、目線など、ステージ上では“出演者”であることを求められる。

まばゆい照明で照らし出され、3800人の観覧客を目の前にする状況の中で、平常心で臨むことは困難だ。リハーサル中に辞退者が出るほど、プレッシャーは計り知れない。

心無いバッシング…本番での失敗が14番さんにもたらしたもの

そんな状況の中で失敗してしまった14番さんは、心無いバッシングもありその後、1週間家から出られず、けん玉に触れることもできなかったという。

しかし、本番が終わり落胆ムードが漂ったこの日、三山ひろしは挑戦者のいたリハーサルスタジオを訪れ、「紅白歌合戦という舞台に立ち、ギネス記録挑戦に参加したこと自体、みなさまが勇気あるヒーローであることなのです」と 121人の参加者に労いと感謝の言葉をかけた。

翌2018年、14番さんは、各所で開催されたけん玉イベントにゲストとして呼ばれたり、週刊誌での対談企画に取り上げられたりと、けん玉ヒーローズの象徴として活躍。けん玉に対するモチベーションも上がり、腕をさらに磨いた。

2017年の失敗は日本国民の記憶にも残り、2年連続の紅白歌合戦出場へ繋がった。けん玉の知名度を上げたことは間違いなく、けん玉愛好者にとってその功績は多大なものである。

リベンジを掛けた2018年 絶対成功への道

そして2018年、三山ひろしは「絶対に失敗しない!」と事前にメディアで宣言した。『いごっそ魂』を歌唱する中で改めてギネス記録へ挑戦することになり、再びけん玉ヒーローズが招集された。

リハーサルは前年同様3日間行われたが、“絶対に失敗しない”ため、出場枠121人に対して、140人を招集。前年に涙を飲んだ14番さんは特別枠での出場が決まっていたため、140人のうち20人は出場することができない。リハーサルは1軍と2軍を決めるテストから始まった。

テストは、140人全員で100回連続で大皿に挑戦するという方法で行われた。1度でも失敗したら即2軍落ちとなる。「いーち!…にー!」の掛け声に合わせ大皿に玉を乗せていく。この時点で5人が脱落となった。

続いて4グループにわかれ大きな輪を作り、順番に大皿に乗せていく。これを10分間繰り返したが脱落者は出なかった。さすがに全国から集まった猛者たちである。

続いて、大皿より難易度の高い“とめけん”(玉をまっすぐ引き上げ、けんに挿す技)を、残り15人の脱落者が出るまでサドンデスで行った。

この時、世界タイトルを持つ者が脱落するハプニングが。とめけんは、基本的でありながら、達人であっても失敗するリスクをはらむ技なのだ。出場者は忖度なくその場の実力で決められた。

こうして決まった2軍の中で、さらに20回連続とめけんの成功回数を競い、最も成功率の高い人を“第1リザーバー(補欠)”とした。つまり、1軍であったとしてもリハーサル中に1度でも失敗すれば、第1リザーバーと即交代というルールである。

リハーサル1日目は失敗者が出なかったが、2日目は遅刻者1人がリザーバーと交代。再度集合直後に100回連続大皿のテストが行われ、2人が2軍落ちとなり、リザーバーと交代となった。

続く15回目のリハーサルで1人が大皿を失敗。再度2軍内で決定した第1リザーバーと交代となった。1軍にいたが2軍となり惜しくも出場できなかったメンバーは計4人いた。

出場者は 2日目のリハーサルで最終決定となった。これまでの失敗は20回中1回。124人が1000回中999回成功する確率を超えていた。 

果たされた約束

2018年の紅白歌合戦では三山が宣言した通り、見事成功を勝ち取ることができた。

「成功です!」

と発表された瞬間、歓喜の声が沸き上がり、三山も台本になかった「勝鬨(かちどき)だ!エイエイオー!!」と、けん玉ヒーローズらと高らかに声を上げた。

成功後、リハーサルスタジオに戻る道中。多くの出演者から「おめでとう!」という声がかけられ「14番の子いる!?」と一緒に記念撮影する人もいた。

3度目のギネス記録への挑戦

そして、2019年12月8日、三度けん玉ヒーローズ召集の連絡がされた。2019年は沖縄からの参加もあり、より広い範囲からの参加者が集結した。

さらにけん玉好きのタレントが、けん玉ヒーローズに加わりともにギネス記録にチャレンジすることになった。

参加したのは、毎年参加しているDJ KOOに加え、GENERATIONS数原龍友、ノンスタイル石田明、マキシマムザホルモン上ちゃん、ラグビーの堀江翔太選手、ミルクボーイ内海崇ら。

集められたヒーローズは114人、リザーバーが2人、上記のタレント6人、ちばちゃん、ず~まだんけ、GLOKEN窪田、そして「望郷山河」を歌唱する三山という計125人でギネス記録に挑んだ。

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2019年のギネス記録攻略方法

リハーサル初日、昨年の厳しい雰囲気とは変わって朗らかな空気で始まった。

昨年はリザーバー20人が本番には参加できず悔しい思いをしたが、せっかく集まった参加者が「挑戦を楽しんでほしい」という、ず~まだんけとGLOKEN窪田の方針変更から、リザーバーは最低限の人数とされた。

しかしながら、再び成功を目指すのは命題である。

そのため、参加者全員にリハーサルまでの間、1日大皿100回連続、とめけん10回連続を毎日達成する練習方法が伝えられた。

さらに、リハーサル中に実力を判断しながら順番を入れ替えることで成功率を上げる方法を打ち出した。

初日、まず100回連続で“大皿”を全員で行う。ここで1度でも失敗した人は、なるべく難易度の低い位置に配された。

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位置による難易度の差にはいくつかポイントがある。1~38番までは立った状態から技をするので比較的容易だが、39~114番までは、しゃがんだ状態から立って技を行う。

順番が後ろになればなるほど、しゃがむ時間が長く疲れが出る。リハーサルで何度もそれを繰り返せば膝も痛くなる。さらに折り返し地点の人は、立った直後、技に取り掛からねばならぬため難易度が高い。

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また、114番から最後の三山までを繋ぐ人たちは、立ったままだが曲の尺に合わせてスピードを微調整するという難しさが加わる。

リハーサルを繰り返しながら、人員配置を試行錯誤しベストと思われる順番が決められた。

リハーサルでの成功率は92%!

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そしていよいよ迎えた本番当日この日は一緒にチャレンジをするタレントの方々が、リハーサルの合間を縫って加わった。けん玉を嗜む方が選ばれていることもあり失敗することはなかった。

3日間の通しリハーサル全25回中で、失敗したのは初日と、2日目のステージリハの2回のみだった。成功率は92%とかなり高い。雰囲気は朗らかながら、緊張感のある非常に良いものであった。

極度の緊張状態…いよいよ本番の舞台へ本番直前

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午後8時30分。リハーサルスタジオで114人が隊列を組み舞台へと向かう。本番までは途中の廊下で待機する。

114人それぞれが様々な思いでこの時間を過ごす。中には緊張で涙を流す者もいた。ヒーローズを率いるず~まだんけのコダマン、イージー、GLOKEN窪田保はみんなを励まし、鼓舞し、全員とハイタッチをする。

「本番です!」

スタッフの声とともに駆け足で配置につき、タレントの方々も列に加わる。イントロと同時に、1番目を務めるラグビー堀江選手からチャレンジが始まる。

15番目を務めた自分も無事にやり過ごし正面のモニターを見ながら成功を祈る。「成功率も高かった。このままじっとしていれば歓喜の瞬間がやって来るはず…」と願っていたが、中盤で会場内に

「わーーー!!!」

という声が沸き起こった。2017年にも聞いたことのある声だ。テレビでは聞こえない会場内にしか響かない声。

大概のヒーローズはこれを聞いて失敗を知る。しかしチャレンジはあくまで演出であるので、最後までやり遂げなければならない。「望郷山河」 が終わり、なんとか玉が乗ったけん玉を掲げる。

審査員の結果に、「もしかしたら…」と一縷の望みをかけていたが、やはり結果は変わらなかった。

「残念でした」の声とともにステージを後にした。

「頭が真っ白に」失敗に終わった2019年の挑戦

本番を終えたヒーローズはリハーサルスタジオに戻り、落胆の雰囲気はあるものの、お互いをねぎらい合う。ここで知り合った者同士、記念撮影をしたり、連絡先を交換している様子も見られた。

失敗してしまった86番さんは号泣の中、友人たち4人が彼をきつく抱きしめていた。そして皆が彼に暖かい言葉をかけていく。

それは参加者の誰が失敗してもおかしくない、もしかするとそれは自分だったかも知れないということを理解し、この挑戦に挑むこと自体の勇気や覚悟をわかっていたからでもある。

そして、打ち上げが渋谷のけん玉ができるバー「DENDAMA&DARTS BAR RE/D」で行われ、そこには86番さんの姿もあり、あの瞬間の話を聞くことができた。

彼曰く、ステージに立つ前から自分が普段とは違うことに気付いていたという。自分の3人前から頭は真っ白になり、玉は一度皿に乗ったものの、手が震えて玉が踊り、落としてしまったそうだ。

演出上自分の番が終わったら前を向かなければならないが、どうしてもそれができないという感覚だけがあり、そこからの記憶もほとんどないという。

彼自身2017年の14番さんと同じく、毎朝恒例の100回連続大皿も、リハーサル中も失敗は一度もなかった。

本番の舞台、目の前にいる会場の3800人だけでなく、テレビのその先に何千万もの人が見ているという非日常の空間で平常心を保ち、いつも通りに技をこなすことは難しい。

彼は打ち上げの場で、3日間を共に過ごした仲間たちに知り合えたことに感謝し、語り合い、これからもけん玉により精進することを誓っていた。

2020年の紅白歌合戦に向けて

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今回からタイトルも「望郷山河~第三回 けん玉世界記録への道~」と“第三回”という言葉が付くようになり、このけん玉ギネス記録チャレンジは年末の恒例行事となりつつある

筆者としても、2020年の紅白歌合戦にリベンジの機会が与えられ、再びあの感動の瞬間に立ち会えることを期待している。


筆者:上島 和也(かみしま かずや)
一般社団法人グローバルけん玉ネットワーク 企画担当
フジテレビけん玉部 部長

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