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『silent』風間太樹監督「時間を一緒に超えてもらいたい」回想シーンへ込めた思い

毎週木曜22時~『silent』

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『silent』の風間太樹(かざま・ひろき)監督が、第5話で話題となったシーンについて語りました。

毎週木曜22時から放送中の木曜劇場『silent』。

主人公の青羽紬(あおば・つむぎ/川口春奈)が、本気で愛しながらも、突然、別れを告げられてしまった恋人・佐倉想(さくら・そう/目黒蓮)に、再会したことから動き出すラブストーリーです。

第4話の見逃し配信が、放送後1週間で688万再生となり、フジテレビ歴代最高記録を樹立。Twitterで「#silent」が世界トレンド1位を獲得するなど、大きな反響を呼んでいます。

風間監督は、ドラマ『帝一の國 ~学生街の喫茶店~』(2017年/フジテレビ)、映画「チア男子!!」(2019年)、「チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~ 」(2022年)などを手掛けており、本作ではこれまで第1話、第2話、第5話の監督を務めています。

フジテレビュー!!は、風間監督にインタビュー。本作の演出でこだわっている点や、撮影時のエピソード、キャストの印象などを聞きました。

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撮影前のディスカッションに時間をかける

――本作は大きな話題となっていますが、今の気持ちを聞かせてください。

うれしいです。心を尽くして作ったものを、視聴者のみなさんが本当に丁寧に観てくださっているという実感があります。いろいろな感想を、SNSなどを通して届けてくださることが、本当にありがたいです。

――SNSでは、ドラマに対するさまざまな考察で盛り上がっています。このような広がり方は想定していましたか?

純粋なラブストーリーなので、意外でした。脚本の生方(美久)さんが描かれるシナリオには、さりげない中にも核心をつく言葉や、キャラクター性を表す綿密な表現があります。視聴者のみなさんが思いさまざまに物語を追ってくださっていること、「そういう見方もあるんだ」という着眼の驚きと、うれしさを感じています。

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――村瀬健プロデューサーも「ことさらに演出をせず、脚本どおりに撮る」と話しています。

そうですね。シナリオが持っている世界観は大事にしつつ、彼らが生きる世界をできるだけ近くに感じていただけるような情景や空気感作りを大切にしながら、映像表現として何ができるかを、日々考えています。

現場では、各シーンの撮影前に「段取り」といって、ディスカッションやリハーサルをする時間があります。ここで、俳優のみなさんと一緒に登場人物の心情を話し合うことで、最善な表現方法が生まれていきます。

――撮影現場で風間監督がキャストと話し合う様子が、番組公式Twitterでたびたび紹介されています。1シーンを作るのに、どのくらい話し合っていますか?

シーンにもよりますが、第5話の冒頭、紬と戸川湊斗(鈴鹿央士)がフットサル場でビブス(ゼッケン)を干すシーンは、もっとも長い時間を費やしました。

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湊斗が紬に告げる「言葉」の表現には、さまざまな選択肢がありました。湊斗自身の「心のふた」をどの程度ひらいて見せるのか、あるいは見せないのか。その選択ひとつでシーンのあり方が大きく変わっていく、繊細なシーンであったように思います。

湊斗の言葉に潜(ひそ)められている本心について、鈴鹿くんとディスカッションすればするほど、湊斗が抱えてきた葛藤の輪郭が見えていきました。素直さと強がり、相反する気持ちが内混ぜの状態というのが、このときの湊斗に寄り添った答えでした。

また、紬の気持ちについても「別れ」の予感に対する悲しさや切なさだけではない、ある種の悔しさが議論の末に生まれ、段取り前後で大きく見え方が変わったシーンだったと思います。

その時々の気持ちのあり方に寄り添っていくのが、段取りの時間です。お互いに納得して作るためには、必要な時間でした。

――キャスト、スタッフが一丸となって作っている様子が伺えます。

段取りの間は、もちろんスタッフも一緒に撮り方を考えていますが、技術的なことより、芝居と向き合う時間のほうが圧倒的に長いです。そんな状況でもスタッフがあたたかく見守ってくれているからこそ、各シーンを丁寧に作ることができています。

ただ、時間には限りもあるので…。その日のスケジュールにどれくらい余裕があるか、時間をかけたいシーンから逆算して撮影予定を組めるかということにも、日々、頭を使っています。

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――第5話の紬と湊斗の電話シーンは、2人を別々に撮影するのではなく、本当に通話して同時に撮影していたそうですね。ネット上では「難しい撮影方法だ」と、驚きの声も上がっています。

これは「ただ電話すればいいんじゃないの?」ってことでもなくて(笑)。紬の部屋でも湊斗の部屋でも撮影できる、“2班体制”を組めるのかということと、タイムラグのある通話状態を技術的にどういう戦略で録音するのか、そういったハードルがありました。

今回は、セットの中に、紬と湊斗それぞれの部屋があったこと、数台のカメラを回すために技術スタッフが集まってくれたこと、そして「第5話はこのシーンにかけたい」という思いをプロデューサーが理解してくださったことが、大きいと思います。

俳優陣からは、同じ緊張感のなかで同時に芝居ができて「表現しやすくて、ありがたかった」という言葉をもらえたので、思い切った撮り方ができてよかったと思っています。

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――本作の撮影全体でこだわっている点を教えてください。

過去(高校時代)と現在(2022年)の表現の仕方に差をつけない、ということです。

過去の表現というのは、どうしても褪(あ)せたものになりがちです。そうではなく、キラキラしていた高校時代と、いろいろな思いを抱えて生きている現代、どちらの時間軸も“今”として平等に、シームレスに描くことが、特に第1話ではテーマのひとつでした。

大事な記憶や、自分の中に閉じ込めていた、本当の意味で向き合いたい思いが、過去のシーンを挟むことで、だんだんと色濃くわかっていく。ひとりひとりにとっての大切な時間を、じっくり描きたかったんです。

――第5話の電話シーン後、湊斗は1人ベッドで眠りますが、目が覚めると隣に紬が。付き合いはじめた頃の回想シーンへ“シームレス”に突入する演出に、SNSでは感嘆のコメントが寄せられました。

いろいろな解釈の仕方があると思うので、あまり言及はしませんが、どんな状況にあっても特別に紐づいてしまう記憶って、誰にでもあると思うんです。ごく自然体なままに、いつの間にか思い出してしまうような特別な記憶。

視聴者のみなさんにも、湊斗の心情そのままに着いてきてほしいという思いもありながら、さりげなく時間を一緒に超えてもらえるような、そんな届き方ができたらいいなと思って作りました。

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――風間監督から見たキャストの印象はいかがですか?

みなさん、芝居に誠実な方ばかりなので、僕も本当に心地よい空気のなかで演出させていただいています。

川口さんは感性豊かで、心情表現の引き出しが多い方だと思います。僕が「いま紬はこういう感情だと思う」と伝えると、僕の言葉をポジティブに汲み取ってくれる。アプローチしたい感情に対する反応が、ものすごく早い。

たとえば「悔しい」という表現ひとつとっても、川口さんなりのエッセンスとして、哀情と後悔のようなものを孕(はら)ませて表現されるんです。それが、表情を見るだけで伝わってくる。いつも「そうきたか」と思わされる、驚くような表現を目の当たりにします。

目黒さんは、撮影の中でどんどん進化しています。

手話は、手と表情がセットになって、ひとつの言葉となります。目黒さんは、伝えたい思いを手話に乗せるということを、撮影前からじっくり学び、感覚として取り入れていました。

日々、撮影現場を見ていると、目黒さんの手話がどんどん表情豊かになっているんです。まだまだ僕たちが見えていない、彼自身の魅力があるような気がしていて。最終話までもっともっと、目黒さんの良さを引き出していけるといいなと思っています。

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