「うる星やつら」シリーズ、「機動警察パトレイバー」シリーズ、「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」などヒット作を生み出し続ける、アニメ・映画界の巨匠、押井守監督。
世界を舞台に40年以上、第一線で活躍を続ける中で、大事にしていることがあると言います。
それが「語る」ということ。
「アニメーション監督は机上で映画を作ることが仕事です。机の上には映画の根拠となるもの、現実の風景も役者も存在しません。そこにあるのは言葉と、それが作り出すイメージだけです。そして、だからこそ僕は映画を語ることに拘ります」
アニメ監督こそ、語らなければいけない―。
そうした信念を持つ押井監督は、今年2月、自らの思考や映画監督として実践していることを合計300分にも渡って語るオンデマンド講座を、英語圏中心にサービス展開する「Naro.tv」で始めました。
「映画を語ることによってしか根拠を持てないことは、アニメーション監督の宿命なのです」
「語ること」を宿命とまで考えている押井監督に、演出論や人生哲学について語ってもらいました。
<【写真】押井守監督、ホワイトボードに手描きイラストと英語で「アイデア」を説明>
「10本が10本ともすべて絵柄も違えばスタイルも違う」
3月、新潟市で開催された「第1回新潟国際アニメーション映画祭」。
約50本のアニメーション映画が一堂に会するアジア最大級の長編アニメーション映画祭で、審査委員長を押井守監督が務めました。
初日のオープニングセレモニーに登場した押井監督が強調したのが「アニメの可能性」についてでした。
「アニメーションとひとことで言っても、僕やみなさんがご存知の日本のアニメーションがアニメーションの代表ではなく、アニメーションという形式にはいろんな可能性があると思います。
10本が10本ともすべて絵柄も違えばスタイルも違う。
アニメーションというのは非常に裾野が広い表現であることをぜひ自分の目で確かめていただきたいと思っています」
絵柄も違えば、スタイルも違う。この「多様な表現」こそ、アニメの本質だと押井監督は考えています。
実際、グランプリに輝いたピエール・フォルデ監督の『めくらやなぎと眠る女』は、かなりシンプルな印象を受ける作品。
ともすると、複雑な線や色で描かれ、滑らかで激しい動きをするアニメがもてはやされる時代に逆行しているようにも思えます。
しかし、この作品は「シンプル」という表現手法でなければならなかったと言います。
『めくらやなぎと眠る女』は、村上春樹さんの6つの短編小説を原作としてアニメ化した作品です。ところが、押井監督によると「現代文学の言語感覚を映像化するのは基本的に不可能」だと言います。
不可能を可能にしたもの。それが、「最小限の情報」と「線画」だけで行なわれた表現スタイル。あえてこの手法をとったことで説得力が生じたと言い、「一見すると非常に地味なスタイルですが、現代文学を表現する最適のスタイル」と評価しました。
「やや意外な結果になったかもしれませんが、新潟国際アニメーション映画祭、第1回に相応しい、かなり画期的な賞になったのではと考えています。それは違うだろ、という考え方の方もいらっしゃると思いますが、それは私に文句を言ってください」
村上春樹さんの作品を翻訳するのではなく、本質の部分だけを抜き出して再び言語化する。これこそ、グランプリに選ばれた要因でした。
「僕の映画について語ってくれる観客を常に求めています」
本質を抜き出して、言語化する能力。それは、アニメ監督だけでなく、日常や仕事でのコミュニケーションでも欠かせないように感じます。
そこで、物事の本質を普遍化したり言語化したりするのにコツがないか、押井監督に尋ねてみました。
答えはイエス。教えてくれたコツは「誰かに伝え、説得してみること」でした。
「具体的な人間に伝えること、説得すること。それを繰り返しているうちに自ずと普遍化されてゆくものです。ひとりで考え込んでいても本質や普遍性には辿り着きません」
ただ、「まず誰かに語ってみる」という単純なことであるにもかかわらず、実際にはアニメの現場でもないがしろにされていることが多いと言います。
「映画を語るには語る相手が必要となります。しかし、困ったことにアニメーションの現場の人間たち、アニメーターと呼ばれる人たちは語ることを好みません。
そして、驚くべきことに、映画を観る人たち、つまり観客と呼ばれる人たちも日常の言葉以外で映画について語ることを好まないのです」
映画についてもっともっと語ってほしい。そんな想いから「Naro.tv」でのオンライン講座を始めたと言います。
「僕は僕の映画を観てくれる観客を求めるだけでなく、僕の映画について語ってくれる観客を常に求めています。
僕の映画についての言葉が、世界の何処かにいるであろう、映画について語りたい人に届くことを信じます。ネットの世界は広大だそうですから」
「Naro.tv」は英語圏を中心に日本文化を発信するサービスで、大相撲の元力士・小錦さんや、Perfume・BABYMETALなど人気グループの振付師・MIKIKOさんなど日本を代表する講師陣が名前を連ねています。
その中で、初のアニメ・特撮カテゴリーの講師として参加することになった押井監督。
アニメに全く関心がなかったという若い頃のエピソードや、「傑作」ではなく「駄作」を見ることの大事さ、「嘘も方便」という創作力の磨き方など、クリエイションの秘訣を多岐に渡って語っています。
英語圏への配信が中心になるため、世界中の観客が語りたくなるようホワイトボードに自ら英語で解説を書くなどの工夫もしています。
20セッションという長編講義のなかで、最も訴えたかったこと。それは「選択肢の作り方と優先順位」だと言います。
「映画の演出は論理的なものであり、そこには『演出術』というべきものがあります。幾つかの原則と体験から得られた経験則、選択肢の作り方と優先順位。表現の基礎となる技術の側面を伝えたいと思いました」
講義の中では「感覚・感性ほど当てにならないものはない」と強調し、論理的な思考ができていない人はダメだとキッパリ語っています。
アニメ関係者だけでなく、クリエイターやビジネスパーソンにも響くような内容。
実際、アニメに興味がない人でも、アニメや映画を学ぶことで人生や仕事に役立つことがあると感じているそうで、「『選択肢を生み出す方法』と『優先順位の重要さ』は、人生でも仕事でも同じです」と教えてくれました。
選択肢と優先順位。
たくさんの選択肢を作り続ける押井監督自身が「仕事の優先順位」として一番大事にしていることを最後に尋ねてみました。
「誰と組んで仕事をするかー。そのことが最も重要です」
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