石橋貴明が文化人、ミュージシャン、タレント、アスリートなどジャンルを問わず“話してみたい”ゲストを迎え、焚き火の前でじっくり語り合うフジテレビ『石橋、薪を焚べる』。
2月16日(火)の放送は、佐賀県唐津市にある川島豆腐店有限会社の会長・川島義政氏が登場。「ざる豆腐」を考案した理由、豆腐作りへのこだわりなどを語った。
水にさらさない「ざる豆腐」を考案した理由
石橋はまず、川島氏が考案した「ざる豆腐」について聞いた。
石橋:なぜ「ざる豆腐」を作ろうとしたんですか?
川島:普通の豆腐って水にさらすじゃないですか。あれは、さらさないと、悪くなるから。
石橋:悪くなるから、水にさらしてるんですか。
川島:はい。ところが今は、冷蔵庫があるから。冷蔵庫で冷やせば悪くならないんですよ。で、旨味も残るし。水にさらしたらね、豆腐の旨味が抜けていっちゃう。
石橋:抜けていっちゃうんですか、固めていても?
川島:はい。水槽に移すとね、どんなに良い大豆を使っても水っぽい豆腐ができる。ところが「ざる豆腐」になると、水にさらさないから旨味がそのまま残る。そこで初めて、良い大豆を使った意味があるのね。
その「ざる豆腐」を手にした石橋は「まずデカい。重い!」と声をあげた。川島氏は、「約2キロほどある」と言い「まずは塩で」と勧めた。
石橋:濃い。すごい濃い!
川島:豆の味がね。
石橋:豆の味が。うん、美味しい。
川島:ありがとうございます!
石橋:すごい美味しい!やっぱり、お水の中に入れちゃうとこの濃い感じが流出しちゃうんですか。
川島:そう。
「チーズみたい」と石橋が言うと「これに塩をかけてワインを飲むのが毎日の楽しみ」と、川島氏は笑った。
美味しい豆腐のためには「大豆が大事」
川島氏は、「ざる豆腐」を作るために徹底して素材にこだわっている。
川島:問題は豆です。大豆が大事。
石橋:大豆もいろんなところを見たんですか?
川島:使いました。
石橋:大豆って日本全国にあるんですか?
川島:ありますね。
北から南までさまざまな大豆で豆腐を作ったが「やっぱり佐賀の、畑の大豆が一番美味しい」という。自身も3000坪の畑で大豆を育て、「それでは足りないから、近所の人に作ってもらって全部買い取っている」と語る。天候や育ち方によって、大豆の値段は大きく変わってしまうのだが、川島氏は豆腐の値段は変えない。
川島:だけんもう、あれですよ。「商売」じゃない。「意地」ですよ(笑)。職人なんですよね。
石橋は、「高くても良い豆使って、美味いものを作ると。それが川島さんの“意地”」と、その職人魂に唸った。
「豆腐は四角に決まっている」と言われたが…
しかし、「ざる豆腐」が認められるまでには時間もかかった。
川島:初めはね、ざるに入れて作って回ったんですよ、ホテルや何か。「豆腐は四角に決まってるだろう」なんて言われましたよ(笑)。
石橋:「こんなざるに乗った豆腐なんて。白い四角のやつじゃないとダメだ」と。
川島:そう言われましたけどね。「ざるの方が美味しいから」と持って回って。3年くらい。
石橋:3年!
川島:ただで、置いてきましたね。「とにかく食べて」と。
そんな努力の甲斐あって、次第にホテルの料理長らから「美味しい」と認められ、だんだんと売れるように。
そんなある日、川島豆腐店の地元・唐津駅にある女優がやってきて、再び転機を迎えた。
川島:ちょうど平成元年かな。中田喜子さんが唐津に来て「これ美味しいわね、送って」と言われて。
石橋:中田喜子さんが。
川島:それから初めて、「豆腐って送れるな」ということで。わざわざ木箱作ってね(笑)。ちょうどクール宅急便が始まって、それで送ったのが(現在のお取り寄せの)始まりですね。
石橋:クール宅急便で送れば、鮮度も落ちずに。
川島:今、持ってきた味です。
と、先ほど石橋が試食した「ざる豆腐」も宅急便で送ったものだと話し、クール便のスタートと相まって「ちょうどマッチした」と笑った。
素材へのこだわりと丁寧な仕事、そして従業員の教育
川島豆腐店の「ざる豆腐」が広まると、全国各地で同様の豆腐が作られるようになっていった。
川島:パクられたら本物ですよね(笑)。
石橋:あっという間に、川島さんのものだった「ざる豆腐」が、全国いろんな人が作るようになっていって…。
川島:商標登録取ってますけど、「作っちゃダメ」とは、うちは言ったことない。
石橋:「作れるもんなら作ってみろ!俺より美味いざる豆腐を」と。
川島:そうそう(笑)。負けてたまるかってね。
石橋:これだけ大豆だとかそういったものにお金かけているとは、みんな…。
川島:思ってない。見えないじゃない。
石橋:でも、これは食べた人はわかりますよね。
川島:食べたらわかる。見てもわからない(笑)。
川島氏は、素材にこだわり、丁寧な仕事をするほかに「従業員の教育」も大事だと語る。
石橋:何人くらいいらっしゃるんですか?
川島:従業員は、20人。
石橋:息子さんも後継者として?
川島:今は僕が会長になっちゃって、息子が社長になって。
石橋:息子さんがちゃんと切り盛りして。
川島:そう。「いつ死んでもいいよ」って言われてる(笑)。
豆腐作りは「飽きない。毎日違う」
代々続いてきた川島豆腐店だが、川島氏は父親から「豆腐店には将来がないからサラリーマンになれ」と言われ、家業を継がない道を選択したこともあったという。しかし「豆腐が好き」という気持ちから、サラリーマンを辞め修業の道へ進んだ。
石橋が豆腐作りの楽しさを聞くと「飽きない。毎日違う」と川島氏。素材へのこだわりや水の温度管理など「消費者に見えないところで努力するのが豆腐屋」「見せないのがカッコイイ」とその美学を語った。
また、川島豆腐店の今後については「(跡を継いだ息子に)美味しい豆腐を作って、豆腐を生かした料理をしてもらうこと」と、ミシュラン一つ星も獲得している「豆腐料理かわしま」にも期待していた。