毎回さまざまなジャンルで活躍するゲストが集い、多彩な話題や事象を取り上げていくフジテレビのトーク番組『ボクらの時代』。
2月21日(日)の放送は、映画「すばらしき世界」に出演している役所広司、六角精児、脚本・監督を務めた西川美和が登場。
役者、映画監督になった経緯や子どものころの思い出、趣味の話で盛り上がり、新型コロナウイルス感染症の仕事への影響にも言及した。
電車で旅する代わりに、散歩する喜びを発見
新型コロナウイルス感染症の拡大が深刻になる前の2020年の1月に終了していたという映画「すばらしき世界」の撮影。
西川:たまたま撮影は終わっていたので、以後は編集とか少人数でできる作業で、何とか乗りきったんですけど。撮影終了してから、どういうふうにお過ごしでしたか?
六角:何にもしなかった。
役所:(六角が好きな)電車にも乗れないしね。
六角:そう!
西川:そうですよね、旅に行けないですよね。
六角:これはもう仕方ないことなんですけれども、自分が気楽に「どこどこに行こう」って気ままに出かけていた旅行というもののありがたみというか、大切さみたいなものは、今、本当にわかります。
以前は、2日休みがあれば出かけていたという六角。自粛期間中は、旅の代わりに「散歩をしていた」と話し、「近所にこんなお店があるんだ」など新しい発見をしたという。
役所も「散歩したり、自転車で走っていたりしても、全然風景が違って見える。ちょっとした冒険」とうなずいた。
これからどうやって“ドラマ”を作っていくのか
3人は、コロナ禍におけるエンターテインメント制作についても言及。
役所:僕は、ほとんど去年やる予定の仕事は延期になりましたね、今年に。
西川:あ、今年に。
役所:今年になって、3月、4月にやろうとしていたのが、また延期になりました。
西川:じゃあ、大きな作品は、去年は結局…。
役所:そうですね、ほとんど自粛していました。
「自宅で過ごす時間が増えた」と語る役所と六角。西川が「自粛が続くと、息苦しくなりませんでしたか?」と訊ねると、役所は「これから撮影が始まって、やりにくさを実感するのではないか」と回答。
西川:久しぶりに(映画を)見直したんですけど、ものすごい至近距離で、お二人もお芝居されてますよね。顔と顔を近づけて怒鳴り合いみたいな場面もあるじゃないですか。あれを今、思いきってそうやってくれって、演出側として言えない気持ちになっているなと。これからどうやってドラマを作っていくんだろうって。
役所:僕たちの仕事は、本当に接触がないと成立しないですからね。
六角:そうですね。
西川:人と人とがこんなに距離があって、どんなドラマ書けるんだろうと思って、私もどうしようかなと思ってるところですけどね、今はまだ。
すると、すでにほかの作品の撮影に参加している六角は、本番直前までフェイスシールドを着用していると言い「マニュアル通りにやっているんですけれども、僕らが演じてるというところ以外での、スタッフさんの不便さはすごいと思います」と裏方の大変さも語った。
何でもセーブするのが当たり前になっていくのがかわいそう
六角:しかし、こういう状況はいつまで続くんでしょうかね。これからどうなるんでしょうかね。本当に。
西川:やっぱり、子どもとか若い人はかわいそうだなと思いますよね。思いっきり遊んだり、それこそ修学旅行もなくなったし。
役所:そうそう。
西川:大学生は、大学に通えなくて、友達もできないのに家賃だけ払わなくちゃいけないとか。人と距離を取ったり、何でもセーブするのが若い人の当たり前になっていっちゃうのが、かわいそうだなと思いますけどね。
と、3人は若い世代のことを思いやった。
失敗できない世の中はどうして生まれたのか?
映画「すばらしき世界」で、役所が演じる主人公は「人生の大半を刑務所で過ごした」という設定だ。西川は、映画を観た人たちから「自分たちの今感じている息苦しさや先の見えない不安が、すごく主人公に重なる」と感想をもらったという。
西川:一回失敗したり、セリフにもありましたけど「レールを踏み外した人」に対して、そういう人を叩く風潮っていうのがあるじゃないですか。あれって、いつからこうなっちゃったんですかね。元々、そうなんですかね、私たちがね。
六角:そのほうが、(話題に)取り上げたときに、人の興味をひくんじゃないですか?やっぱり世の中の人って、人が上手くいったりすることに対して、純粋に喜べるということが、とても難しい世の中なんじゃないかと思うんですよ。これは、僕も含めて言ってるんですけど。
西川:わかります。ひがみっぽいなって思いますよね、自分自身も。
六角:同じ年代の人間が売れ始めたときに感じた「チクショウ!」という気持ちは、どこか今でもありますもんね。「あいつ、具合でも悪くなりやがれ」ってね(笑)。
西川:(苦笑)。
役所:(人間のそういう部分は)昔からあるんでしょうね。ネットの世界で、それがどんどん言い過ぎになってきているんでしょうね。
六角は「一人ひとりが発言できるのは素晴らしい」とした上で、「一つひとつの発言が見えることで、それだけ他人を傷つける機会が多くなっているのだから、これからの時代は、それを踏まえてもっといい世の中にしていけるのではないか」とコメント。
役所も「監督も何かに書かれていましたが、『もうちょっと頑張れば、こんなに素晴らしい世界が待っているんだよ』って。そんな感じがしますよね」と、期待を込めた。