視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。
3月2日(火)放送回では、演歌界の次世代を担うホープと期待される演歌歌手・丘みどりに密着。
丘は子どもの頃、コンサートで見た鳥羽一郎に憧れて演歌の道を志し、11歳で兵庫県日本民謡祭名人戦優勝。「霧の川」で日本作曲家協会音楽祭「奨励賞」を受賞すると、2017年には『NHK紅白歌合戦』(NHK)に初出場を果たし、一躍、演歌界で若手のトップに躍り出た。
伸びのある歌声と明るいキャラクターでファンを魅了してきた彼女だが、昨年は、3年連続出場していた『NHK紅白歌合戦』(NHK)に落選し、コロナ禍で軒並みコンサートが中止となる挫折を味わった。
それでも、新たな楽曲に挑戦するなど、前向きに演歌の道を突き進む彼女のセブンルールとは。
ルール①:衣装は当日に決める
コロナ禍で、昨年の春から延期になっていた公演。丘はリハーサルで、その日に披露する曲や演出の変更を申し出た。気になる部分があればコンサート当日でも修正していく。
そして、開演の40分前。丘にはここで決めるものがある。それは、ステージで着る衣装だ。
彼女は、落ち着いた柄と華やかな柄の着物のどちらにするか迷っていた。「遠くから見てみよう」と、廊下の離れた場所から見比べ、観客からどのように見えるのか確認。それでも悩み、密着スタッフへ「どっちがいいと思います?」と意見を求め、笑ってみせた。
曲の構成や衣装にここまでこだわるのは、「とにかく今日見に来てくださる人に、最高だったなって思って帰ってもらいたい」という思いがあるから。「ステージに立てることは当たり前じゃないし、今日ステージに立つのが最後かもしれない」と一つの公演にかける思いを語る丘。
この日、最終的に選んだ衣装は、2階席のファンにも見えやすい華やかな柄の着物だった。
ルール②:1日3本 ドロドロのメロドラマを見る
丘の真骨頂は、歌の世界観を情景たっぷりに芝居とともにみせる演出。
ステージや収録などの合間には日本舞踊の先生から、次に披露する曲の振り付けを教わる。いろいろな女性や男性の気持ちを歌いながら演じるためには、振りも重要と指導を受けた。
演技力に磨きをかけるため、プライベートでは毎日、ドロドロのメロドラマを見ることを欠かさない。演歌によくある「あなたを殺してでも、私はあなたを離さない」という世界観は「どう頑張っても経験できない」といい、「より多くの女優さんの演技を見たいので」と、1日3本のドラマを見るようにしているという。
♪愛してもらえるつもりでいたなんて…
演技や表情で魅了しながら、自ら歌の世界に入り込む。そこが丘の魅力になっているのだ。
ルール③:エゴサーチを欠かさない
順風満帆にみえる彼女は、演歌界に入る足掛かりになればと18歳のときにアイドルとしてデビュー。警察犬に追いかけられたり、冬の寒い海に放り投げられたりと体を張ったロケをこなしていた。
「あれ?私って一体何がしたかったんだっけ?」と思い直し、21歳のときに演歌歌手として再デビュー。しかし、今度は目立つようヘソ出しのミニスカートという衣装を強いられ、観客からは「そんな格好で演歌歌うんじゃないよ!」と怒られたこともあったという。
それでも自分の演歌を聴いてほしいと、営業を続けること10年。地道に全国をまわり、お客さんの心をつかんでいった。
そして今、欠かさないのがエゴサーチ。テレビの生放送終わりに歌唱などの評判がインターネット上にどのように書き込まれているか、自分で調べているのだ。
「聴いている方にどう伝わっているかっていうのは、常に不安」と話すのは、世間に知ってほしくても知ってもらえなかった時期があったから。
だからこそ「悪口でもうれしい。一瞬でも“丘みどり”と名前を覚えてもらえているならうれしい」と語り、悪口をプラスに考えていくと人生が楽しくなったと明かした。
ルール④:移動中の車内は無音
仕事の合間にボイストレーナーのレッスンを受ける彼女。最近では、歌番組などで他の歌手の歌を披露することも多い。
この日は、「お祭りマンボ」(美空ひばり)と「わたしの彼は左きき」(麻丘めぐみ)などの歌唱部分についての指示が届いていた。時にガールズグループ ・NiziUなどの曲も歌いながら、細かい節回しはもちろん、息継ぎをするためにどこで歌詞を区切るべきかも勉強していく。
歌番組が多い時は、初めて聴く歌でもすべてを覚えきり、1週間に20曲披露したこともあった。「絶対に間違えない」と思っていても、ステージで歌詞を間違え悔しい思いをしたことが何度かあるという。
覚えることが多い彼女は、移動中の車内では無音で過ごす。
「何も音がないほうが(歌詞などを)覚えられるので。声に出してみたり、想像したり、繰り返していますね」と、無音の中で“練習”。ステージでの失敗を再び起こさないため車内でも集中して、歌のことだけを考えている。
ルール⑤:地方では1人スナック
丘は1年間のおよそ半分、地方で公演をしている。岡山県での公演の前日夜、彼女は1人、スナックへ向かった。
なぜ、1人でスナックを訪れるのか。地元のことは地元の人に聞かないとわからない。その公演に合わせたネタを集めるためだった。
この日彼女は「岡山の方言を一つ教えてもらいたい」と、お願い。すると、スナックのママは、岡山で「大根炊いといて」という意味の「でーこんてーてーてー」という地元の方言を伝授した。
さらに、「岡山は牡蠣がおいしい」という情報を得た丘は、翌日の公演でスナックのママとのやりとりを披露。「意外と知られてないけど、岡山の牡蠣はおいしいよって言われたんです。いろいろ聞いた結果、結局焼肉を食べに行きました」と話し、観客を笑わせた。
ルール⑥:毎日 父とLINE
多忙な毎日を過ごす丘を応援してくれる一番の味方は、父・重行さんだ。
「母はすごく厳しくて結構怒られたんですけど、父には1回も怒られたことがない」と話す彼女。
実は、母・早苗さんは、彼女が演歌歌手としてデビューしたての21歳の時に大腸ガンで亡くなった。早苗さんからは「あなたは毎日歌ってるかもしれないけど、見に来る人は初めて。今日の丘みどりを見て評価される」と教えられた。
厳しく、高みを目指す母と、優しい父。
母の亡き後、離れて暮らす父とのLINEが日課になっている。「パパはLINEが日本一素晴らしいんです」といい、ある日の重行さんからのLINEには「上手い、流石、平成の美空ひばり」、別の日には「永久保存せな、あかんぐらい完璧」とべた褒めの言葉が並んでいた。
さらに、本番終わりに一番言ってほしいことを3行くらいでまとめて送ってくれるのだという。重行さんは、自分が送ったメッセージをカメラの前で見せられると「そんなん言われたら、今度から返されへん」と照れ笑いを見せた。
毎日、父・重行さんと連絡をとることは、丘にとって前向きに活動するための原動力。「歌手を辞めたい」と言ったとき、父は「ほんなら辞めたらいいやん、帰ってきたらいいやん」と言ったそう。帰る場所があるからこそチャレンジできる、「もうちょっと無理してみようか」という勇気が湧くのだ。
ルール⑦:やらずに後悔より やって後悔
昨年、デビュー15周年を迎えた丘だが、コロナ禍で思うような活動ができなくなった。
年間130本行っていたコンサートは軒並みキャンセル。しかも、3年連続で出場した『NHK紅白歌合戦』に落選。「私がしてきたことは間違えてたんかな、と自分の活動に対する後悔はありました」と焦る気持ちを話す。
そんな中、彼女は、ある挑戦を始める。新しい曲を作るにあたり、演歌ではなくポップスの要素を取り入れるというのだ。
作曲家から届いた候補曲をいくつか聴くが、丘とボイストレーナーで意見が割れてしまう。演歌ひと筋で15年。彼女は、路線を変えることにまだ不安が否めない。結局この日、新曲を決めることはできなかった。
レコード会社からは「ポップス寄りの曲を歌っても、演歌の店では売れないよ」と言われた。でも、母の「大失敗に終わっても、やらないよりはマシだ」という言葉が忘れられない。
「やらずに後悔より、やって後悔というのをいつも大切に生きています」と信条を大切にしているという。
そんな彼女に昨年末、2ヵ月ぶりにステージに立つ機会が訪れた。この日、12月24日は母・早苗さんの命日だ。
丘は、「今日は母の命日でもあります。思い通りにいかないことも多くて、本当に悔しい1年だったんですが、来年こそはうれし涙をみなさんと一緒に流せるような1年にしたいなと思っております」とステージ上から語りかけた。
そして、「今年悔しかった思いは、絶対来年お返しします!」と多くの観客の前で誓った。
※記事内、敬称略。
次回、3月9日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、「御前酒」杜氏・辻麻衣子に密着。女人禁制が当たり前の日本酒造りで、29歳の若さで7代目を継いだ辻。200年変わらぬ銘酒を作り続ける彼女の7つのルールとは。