3月22日(月)から、フジテレビとFODにて放送・配信されるドラマ『スイートリベンジ』。オトコに酷いフラれ方をして、身も心もボロボロになったオンナから依頼を受けた“落とし屋”のマリコ(夏菜)が、同じ痛みをオトコに与えて復讐する様子を痛快に描く。
本作は、FOD発のコミックを実写ドラマ化したという初の試みでも話題となっている。
放送局がオリジナルコミックのヒット作をゼロから作り上げ、それをドラマ化するという新たなスタイルとなる企画はどのように進んだのか。「自分の手痛い恋愛経験が、まさかこんなことになるとは」と、澤田賢一プロデューサー自身も驚きを隠せない“シンデレラストーリー”はいかに誕生したのか。
企画・プロデュースを手掛けた、FODの野村和生プロデューサーとともに、裏側を聞いた。
史上初!テレビ局が制作したマンガ原作がドラマ化へ
――「FOD発のオリジナルコミックが初の実写化」という経緯について教えてください。
野村:澤田さんとご一緒したFODドラマ『ラブホの上野さん』(※)の直後に、「いいドラマの企画があるんだ、自分の実体験だけど…」と提案をいただいたんですが、面白そうだなとは思いつつ、今から2年半前のFODの規模感では原作物ではない、完全なオリジナルドラマを作るのはリスキーだなと思ったんです。
(※)『ラブホの上野さん』は2016年に配信・放送、続編『ラブホの上野さんSeason2』が2017に配信・放送された。原案:上野/作画:博士によるコミックをドラマ化。
ちょうど、FODでは電子書籍の配信を始めた頃で、オリジナルの書籍を手掛けていこうというタイミングでもありました。なので、澤田さんに「これをコミック化してみませんか?」と逆提案をしました。配信から2年半ほど経ち、今回実写ドラマ化ということになりました。
テレビ局が制作したマンガ原作をドラマ化というのは史上初ですね。そもそもテレビ局はマンガを作らないので(笑)。
澤田:僕はコミックとはまったく無縁の人間で、コミック化するという発想すらなかったから「その手があるのか」という感じでした。内容自体は僕の実体験をベースにしていますが、知り合いや脚本家、演出家も巻き込んでアイディアをもらいながら書き上げました。
「これ絶対俺に気があるな」って確信してから告白をしたら、コテンパンに
――本作は恋愛復讐劇で、これは澤田さんの実体験ということですが、元になったエピソードは?
澤田:20年前に自分が経験したある出来事があって、それをヒントに企画しました。もう昔のことで、みんなに笑って言えるくらいの話ですし、自分自身に残った傷もなにもないです。逆にいい経験があって良かったなくらいですよ。それが原因で今も独身なのかはわかりませんが(笑)。
――第1話では、ユミをもてあそんで振ったコウイチが、マリコによってコテンパンに復讐されます。
澤田:実際はコウイチよりもコテンパンでしたけれどね。とんでもなく好みのタイプの女性が、僕に気のある素振りをして近づいてきたことがあって。100%僕なんかに来るはずもないような素敵な女性だったので、当然好きになって舞い上がっちゃって。
慎重に慎重にデートを重ねて、フレンチ、イタメシ、タイ料理…いろいろな店でご飯を食べて、楽しく会話をして「これ絶対俺に気があるな」って確信してから告白をしたら、コテンパンにされたんです。
バラの花束を予約したレストランに置いて準備して良きタイミングで渡して、「真剣にお付き合いをしたい」と告白したんですよ、30代前半の僕がね。そうしたら第一声が、忘れもしない「はあ?」でした。
「なに勘違いしてるの?私があなたと付き合うわけないでしょう?鏡見たことあるの?」って、コウイチよりもひどい言われようですよ。何が起こったのか分からなくて真っ白になっていたら、もう1回同じことを今度はゆっくりと、「私が!あなたと!付き合うわけないでしょ!」と言われたんですよ。
今でも覚えているのが、彼女が店を出るときにパッと振り返って、「今までありがとう!ごちそうさま~!」って言いながら出て行ったんです。で、それっきりですよね。バラの花束はどうしたか覚えていません。
――その件が“リベンジ”だったとなぜ気づいたのでしょうか?
澤田:それ以前に、ある企業に務める女性と合コンをして、付き合った方がいたんですが、お別れをしたんです。別れた数週間後にまたその企業の女性たちとの合コンがありまして、その素敵な女性と出会いました。念のため調べましたが、別れた女性とは働いている部署も違う。まったく接点がないというのをちゃんと確認したうえで、その人とご飯を食べに行ったりしていたんです。
でも、実は後からこの2人は同期入社の大親友同士で、同じ寮に住んでいると判明したんです。それで、これは失恋した親友の敵を取ったのかなって。証拠はないですが、あんなに思わせぶりだったのに告白した途端に態度が急変して、捨てゼリフを吐いて笑顔で去っていった。これは復讐されたんだなと思ったんです。
鳴かず飛ばずのマンガがある日、「鬼滅の刃」と並んで大ヒット!
――そんな手痛い実話を基にしたマンガですが、出版してからすぐにヒットしたわけではないんですよね?
野村:作画は柏屋コッコ先生に描いていただけて、読後感もすごくいいし、面白かったんですが、いかんせんFODのオリジナルコンテンツはプレミアム会員でないと読めないという、ハードルの高いところからのスタートでした。遅らせて他の電子書店にも展開していったんですが、特にガツンと火が点いたわけでもなかった。
そうしたら昨年8月に、大手電子書店のBookLiveさんが「スイートリベンジ」のWEB広告を出したいと言ってくれたので、「珍しいこともあるもんだ」と快諾したんです。続けて10月にまた広告を出したいというので、なんでこんなに力を入れてくれてるのか不思議に思い、ランキングを調べてみたら、当時のBookLiveさんの総合ランキングの4位になっていたんです。
「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴/集英社)「呪術回戦」(芥見下々/集英社)「キングダム」(原泰久/集英社)といった作品と並んで「スイートリベンジ」が並んでいた。実は、その1週間くらい前に澤田さんに、「一旦休止して様子見ましょうか」とお話をしたところだった。正直なところ、「いつ終わるの?」とあちこちから突かれながら続けていたので…その1週間後に一転、「澤田さん、すごいことになっています!」って連絡をしました(笑)。
――なぜ人気に火が点いていることに気づかなかったのでしょう?
野村:ネット広告はターゲティングをして広告を打つので、たぶん私や澤田さんにはエロい広告しか入ってこないから、広告を目にしなかったのではないかと(笑)。実は、周囲の女性たちは広告を目にしていて、読んでくれていた人が多かったようです。
澤田:この作品は作画を担当された柏屋コッコ先生の力が大きいんです。コッコ先生の絵がなければこんな風にはなっていなかった。僕はただ「こんな設定でこんな流れで」という部分を作っただけで、それを見事に絵に起こしてちゃんとストーリーにしてくださった。みなさん「この絵が好き」っておっしゃいます。
野村:『スイートリベンジ』はFOD発のオリジナルコミックとしては5作目(※)になります。いつかはFODのオリジナルコミックから実写映像化を、と思っていましたが、まさかこんなに早く実現するとは。これをきっかけにもっと積極的に原作開発をやっていきたいです。
(※)『オシリスの天秤』(FODにてアニメ化)、『胸キュンスカッと』(コミカライズ)、『恋仲』(コミカライズ)、『会社をやめて馬主やります』(オリジナルコミック)
自社で書店をやれば、ドラマ化されて原作の売れ行きが伸びたときに、少しはそのメリットを受けられるかもしれないという理由で、FODの電子書店を立ち上げたという経緯があります。オリジナルの制作にはコストがかかりますが、原作開発からするという取り組みは、今後どんどんやっていきたいなと思っています。
――『スイートリベンジ』を見る人にメッセージを!
野村:「人のフリ見て我がフリ直せ」ではないですが、男性でも女性でも、自分の行動を振り返ってもらうヒントになったらいいなと思います。ただ、「復讐して不幸にしてお終い」で嫌な気分にはしないように、コミカルさは大切にしています。
澤田:制作していくうえで、「もっとコテンパンにやったほうがいい」という意見もありました。でも僕は、悪い男をコテンパンにはするんだけれど、どこかで救いが欲しかった。僕が気に入っているマリコのキメゼリフに、「この痛み忘れないで」というのがあります。女性が受けた痛みを与えた男性にも同じように知ってほしい、「こんなことをしてしまったんだな」と改心してほしいですから。
僕は、改心したからいまだに独身なのかもしれないですね。そして次の作品はもっとコテンパンにされるようなものを考えています。
野村:澤田さんにはいっぱい失恋していっぱい作品を作ってもらわないとですね(笑)。このドラマ化をきっかけに、まだ原作マンガを読んでいない人にもぜひ読んでもらえたらなと思います。
「スイートリベンジ」コミックはこちらから!
ドラマの最新情報は公式サイトにて。