3月24日(水)24時55分より放送される、第32回フジテレビヤングシナリオ大賞『サロガシー』(※関東ローカル)。1567編の応募の中から、コピーライターの的場友見さん(38歳)が書いた本作が大賞を受賞し、この度ドラマ放送される。

『サロガシー』は、建築士として働く主人公の江島環が、ゲイの兄のために代理母(=サロガシー)として、妊娠・出産を決意することから始まるヒューマンドラマ。環役を、今回がドラマ初主演となる女優・堀田真由が演じる。

シナリオを書き始めて2年、今まで受賞歴もない中、いきなりの大賞受賞となった的場さんに、『サロガシー』が生まれた背景や、撮影現場でのキャストの印象、自身が好きなドラマ作品などを聞いた。

堀田真由の熱演に驚き「想像を遥かに超えて完全に“環”だった」

第32回フジテレビヤングシナリオ大賞で大賞を受賞した、的場友見さん

――『サロガシー』のアイデアはどのように生まれたのですか?

あるとき、ゲイの友人が「僕には、結婚とか子どもを持つというライフイベントがない。もう楽しいことは何もない」と話していて。海外では代理出産、つまりサロガシーでゲイの方々も子どもをもつことができて、実際、彼の友人にはそういう方がいると知ったのがきっかけです。

ちょうど同じ時期、ほかの友人が「セクシャルマイノリティの人はつらい思いをして、かわいそう」と決めつけるように話していて、「本当にそうかな?」と疑問を抱きました。そんな経緯でサロガシーをテーマに、“幸せ”の固定概念を崩して、違う視点を持ってもらう作品を書きたいと考えました。

――特に書くのが難しかったシーンはありますか?

ゲイカップルの描き方ですね。ゲイカップルが出ているだけで「LGBTもの」とか「BLもの」と見られたくなかったので、会話ひとつとっても、男女のカップルと変わらないよう気を付けました。

左から)江島聡役の細田善彦、聡の彼氏である水野圭人役の猪塚健太

もうひとつ悩んだのは、出産シーンです。私は子どもを産んだ経験がないので、出産経験のある方が「リアリティがない」と感じないように注意しました。かつ、コメディタッチを意識しました。出産シーンが苦しいと、全体的にすごく重いドラマになってしまうと考え、キャラクターの個性を活かしてコミカルに仕上げました。

――主人公・江島環役の堀田真由さんはじめ、キャストの皆さんの印象は?

私の頭の中をそのままトレースしたように、何のギャップもなく再現していただけて、すごく感動しました。特に主人公の環は複雑な事情を抱えた役どころなので、演じるのは難しいのではと思っていたのですが、堀田さんが想像を遥かに超えて完全に“環”で驚きました。ほかの皆さんもベストマッチなキャスティングで、私のイメージ以上でした。

――堀田さんのどんなところが「環だ」と感じましたか?

環は内に深いものを抱えていますが、それが暗さや怒りというネガティブなものではなく、人としての魅力につながればと考えて書きました。言うのは簡単ですが、一体どう演じるのだろうと思っていて。

ところが、堀田さんの演技を見て、母・彰子に言い返したり、少しバカにして笑ったりするシーンなども、すべてが嫌味ではなく魅力的で、環の背景や思いが感じ取れました。

主人公・江島環を演じるのは、ドラマ初主演の堀田真由

――キャストの皆さんとは、どんなお話をしましたか?

兄・聡役の細田善彦さんと、聡の彼氏・圭人役の猪塚健太さん、堀田さんの3人が和気あいあいとお話しされていたのですが、細田さんと猪塚さんはずっとペアリングをつけて、 本当のカップルのようで、すごくいい空気だなと思いました。お三方は「この作品に出られて、うれしいです。いい脚本をありがとうございます」と言ってくださって、とても喜ばしい気持ちでした。

堀田さんには「脚本を読んで、この役は絶対に自分が演じたいと思った」と言っていただけて、本当にうれしかったです。

環の母・彰子(宮田早苗)は、環が兄・聡のために代理出産することを激しく非難

5歳で連ドラを見始め、『最後から二番目の恋』で脚本家の道を決意

――もともとドラマはお好きなんですか?

ドラマ好きの母の影響で、5歳くらいのときに『パパはニュースキャスター』(TBS)を見て連ドラにハマり、それから毎シーズン、ドラマを楽しみに過ごしてきました。

――好きな脚本家は坂元裕二さん、岡田惠和さんだそうですが、特に好きな作品は?

坂元先生の『東京ラブストーリー』(フジテレビ)です。小学校4年生くらいのときに見て、ドラマっておもしろいなと改めて思った作品です。

また、岡田先生の『最後から二番目の恋』(フジテレビ)は、「私も小説か何かを書いてみたいな」とぼんやり考えていたときに、たまたまネット配信で一気見して「やっぱり書きたい!」と背中を押してくれた作品です。それで岡田先生について調べたら、シナリオ・センターに通っていらしたと知り、私もシナリオ・センターで学び始めました。

私はもともと、コピーライターとして書く仕事に10年以上携わっていますが、ヤングシナリオ大賞に応募したきっかけも、歴代受賞者に坂元先生や野島伸司先生、野木亜紀子先生など、大好きな先生方がいらっしゃったからです。

左から)遠藤龍之介フジテレビ社長、的場友見さん

――ほかに、お気に入りの作品があれば教えてください。

アメリカのドラマ『THIS IS US』です。同作で脚本を担当している、ダン・フォーゲルマン監督の作品がすごく好きなんです。主役1人をクローズアップするのではなく、脇役の背景や歴史にも焦点を当てて、毎話、主役を代えて撮る手法がいいなと思います。

マンガだと、いくえみ綾先生の「潔く柔く」。主役2人はしっかり描きつつ、脇役にもちゃんとストーリーがあります。オムニバス形式で、キャラクター1人ひとりを丁寧に描く作品が好きですね。私も今後書いてみたいです。

――ご自身の作品に出演してほしい役者さんはいますか?

今回、環の会社の先輩役で出演いただいた斎藤工さんは私と同い年なのですが、芸能界には同年代で活躍されている方が多い。例えば、柴崎コウさんや高橋一生さんも。イチ視聴者として魅力を感じていた同年代の俳優さんたちと、もしご一緒できる機会をいただけたら、すごく幸せですね。

環の会社の先輩・神谷晃役の斎藤工(右)

――最近、Netflixなど配信ドラマが盛り上がる中で、地上波ドラマにどんな期待を寄せていますか?

以前、マーケティング会社の方から「最近の若者はSNSを通じて、日常の生活圏で出会わない人とも関わるから、理解と共感の幅が広くて優しい人が多い」と聞きました。これはまさに地上波ドラマが担うべき役割だと感じています。SNSだと情報が不確かだったり、本当に困っていて発信できない状況の方もたくさんいると思います。

しかし地上波ドラマなら情報を広く伝えられますし、フィクションだからこそ込められる思いもあるのでは、と信じています。

――今後の目標を教えてください。

マイノリティの方をピックアップしていきたいです。今回はセクシャルをテーマにしましたが、例えば、本当に貧困で困っている方々を書いたりもしたいですね。

私の周りには、セクシャルマイノリティの方や、目に見えない障がいを持っている方が多く、子どもの頃に過ごした街も貧困の方がたくさんいる地域でした。きっと皆さんの周りにも、マイノリティと言われる方が当たり前のようにいるという現実を、より多くの方に知っていただきたいです。

オリジナル企画のアイデアはたくさん持っていますし、原作ものにも挑戦したいです。ドラマも映画も小説もマンガも、いろいろなコンテンツにチャレンジしたいです。

――同じくシナリオライターを目指している方々にメッセージをお願いします。

私は脚本を書くのが本当に楽しくて、一気に書いて手を痛めてしまうこともあるのですが(苦笑)、やはり自分が楽しんで書いたものが、一番いい仕上がりになると思います。変に考えすぎず、書きたいものを自由に書くのが大事ではないでしょうか。

『サロガシー』の最新情報は公式サイトまで