“目の保養”となるような麗しい男子を紹介する「眼福♡男子」企画のVol.59に登場するのは、杉野遥亮(すぎの・ようすけ)。『花にけだもの』『教場Ⅱ』(ともにフジテレビ系)、映画「キセキ-あの日のソビト-」など数々の話題作に出演し話題を集めている。

そんな杉野へのインタビューを前後編でお届け。前編は、6月7日(月)より、公演が始まる舞台「夜への長い旅路」について。

初舞台にして、“アメリカ近代劇の父”と称される劇作家ユージン・オニールの遺作で大竹しのぶ、大倉忠義、池田成志らと共演、イギリス人演出家フィリップ・ブリーンの演出を受けることになった杉野の思いに迫る。

初めてのことにチャレンジする“怖さ”と徐々にこみ上げる“うれしさ”

──今回、初舞台となりますが、出演の話を聞いたときの心境は?

お話を聞いたのは、2年前とか1年半前くらい。舞台はいつかやることになるだろうな…という思いがあったので、「来たか」という感じでした。それでも、まだ先のことだと思っていたので、心の準備ができていなかったですし…「『夜への長い旅路』という作品を読んでください」と言われたのですが、読む余裕がないくらい怖かったです。

──ドラマや映画など、さまざまな作品に出演していますが、それでも「怖い」と思うのですね。

初めてのことなので、やっぱり怖いです。それに役者という仕事をしていて、「100%できた」と思うことって、たぶん一生ないと思っていて。

もちろん、振り返ったときに「成長したな」とか、「いい道のりだった」と思うことはあるし、肯定していただいたこととか、その時かけてもらった言葉は大切にしていますが。でも、役者としてまだまだだという思いは常にあるので…。

──初舞台に挑むその“怖さ”を、仲間に打ち明けたり、相談したりはしましたか?

言えないですよ。だって、作品的にも、共演者の皆さんも、みんながうらやましがる舞台だと思いますから。誰にも相談はしませんでした。

でも、そんな舞台だからこそ、自分の名前を入れてもらえることができて、一緒に作品を作らせてもらえて…最近、ひしひしとうれしさがこみあげてきています。それはたぶん、最初に「怖い」と思ったときよりも、仕事を楽しく思えてきていて、「こんな最高の環境ない」と感じられているからだと思うんです。怖さはまだ残っていますが、今はうれしいです。

──現段階で、作品についてはどう捉えていますか?

今、コロナ禍ということもあると思いますが、人の気づかないふりをしてきたものがあぶりだされている気がしていて。この作品も、登場人物一人ひとりに抱えている問題があって、その問題とどう向き合うかということが描かれています。

──その中で、杉野さんは肺を患っている次男・エドマンド役を演じますが、何か役作りをしていることがあればお聞かせください。

エドマンドは、この作品を作ったユージン・オニールさん自身を投影した役でもあるので、先日、演出のフィリップ(・ブリーン)さんから、オニールさんについていろいろなお話を聞きました。オニールさんのことを知ることが役作りにつながるなと思っています。

──フィリップさんとの会話で印象に残っていることはありますか?

「私の時間は、あなたの時間です(My time is your time.)」と言っていただけたのですが、あの言葉はすごくうれしかったです。いろいろとお話を聞ける環境を作っていただき、本当にありがたいです。

──これから稽古が始まると思いますが、楽しみにしてることや公演が全部終わったときに「こんなふうになっていたいな」と思うことはありますか?

本当にわからないことだらけですが、共演させていただく皆さんとの関わりも含めて、楽しみが大きいです。皆さんとの時間を大切にして、公演が終わったときに、今よりももっと自信を持てるようになっていたらいいな。

──いろいろな作品に出演される中で、「演じる仕事が楽しい」と思った瞬間は、今までありましたか?

わかりやすく「あ、楽しいな」って思えたのは『教場Ⅱ』と、そのあとにやった主演ドラマの2本(『直ちゃんは小学三年生』、『東京怪奇酒』)です。『教場Ⅱ』で“プロとして作品を作っていく楽しさ”を学んで、その後の主演ドラマで活かせたとき、すごく楽しかったです。

──そうすると、いいタイミングで舞台出演になりましたね。

本当ですね。

──ユージン・オニールという人が書くものに対しては、どう感じられていますか?

「愛とは」というものを感じました。オニールさんは、「自分は、ここに何をしに来たのか」「なんで、ここで生きているのか」ということを、鏡を見ながら考えていたそうなんです。それが、自尊心が強いと言われてたとか、そういったお話をうかがったときに、「この方が本質的に求めるものって、愛だったんだろうな」と思ったというか。そのお話を聞く前に、「夜への長い旅路」の過去の翻訳本を読んでいたので、「そっか」と腑に落ちました。

エドマンドも純粋な愛そのものを求めていて。これが愛とわかっていながらも、そこに反発する思いとか、愛の形については僕もすごく考えました。愛だと思った“コレ”をどうすればもっと純粋な愛になるのか…ということは、この作品を通して学ばせていただけるような気がしています。

最近、僕、愛はすべてだと思うんです。言葉で簡単に「愛する」「愛してるよ」「愛するよ」とか言うけど、そんなものじゃないんだろうなって。愛にはいろいろな形があると思うし、そのエネルギーって本当はもっと壮大だと思うんです。

どんな作品でも、根本には愛がある気がするし…だから、人はエンタメ作品に胸を打たれるんじゃないかなと思います。

──では、舞台の上演を楽しみにされている方へ、メッセージをお願いします。

いろいろとお話をさせていただきましたが、感じ方や受け取り方は人それぞれだと思うし、僕はただ純粋に物作りをしようと思っています。観に来てくださる方はそれを純粋に楽しんでいただけたらなと思います。

撮影:河井彩美
ヘアメイク:NEMOTO(HITOME)
スタイリング:伊藤省吾(sitor)

<メッセージ&メイキング動画>