5 月12日(水)より公開中の成田凌主演の映画「くれなずめ」。

高校時代、文化祭でコントをして仲良くなった帰宅部の6人(成田、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹、高良健吾)は、卒業後も毎年集まってはバカ話に興じていたが、ある出来事を境に疎遠になっていた。そんな中、6人は友人の結婚式に参加するため、5年ぶりに集結する。

全編に渡って、男子同士のくだらないやり取りが繰り広げられる本作。成田が演じるのは、優柔不断だが心優しい主人公の吉尾。6人の中では存在感は薄いが、いれば何となくホッとする、マスコット的な存在の愛されキャラだ。

本作に成田がどのような気持ちで挑んだのか。共演者や松居大悟監督とのエピソードなどを交えて語った。

松居大悟監督を含め、7人で作っているような感覚

――出演のオファーを受けたときの印象を教えてください。

脚本を読ませていただき、「これは最高だな!」と思って。すぐにそのとき松居さんがやっていた舞台を観に行って、そこで「初めまして」とご挨拶をさせていただきつつ、「よろしくお願いします」と伝えました。

単純に脚本がすごく面白かったです。男同士で騒いでいる話なんですけど、それが内輪ウケにならずに楽しめて。こういうテイストのものって内輪ウケで寒くなってしまいがちなんですけど、そうなっていないのが松居さんの脚本の力だな、とも思いました。

あとは、最初から最後までずっと緊張感のようなものがあって。その緊張感があるからこそ、はしゃぐシーンなどは、はしゃぐほど、のちに効いてくる。最後にとんでもない展開になりますけど、それも含めて楽しい作品だな、と思いました。

――共演者の方々を知ったときはどう思いましたか?

松居さんにご挨拶をさせていただいた数日後に、2人で食事に行き、そこで何時間も話したんですけど、そのときに、この役はこの人がいいよね、という理想を話していたんです。

そしたら、それがどんどん決まっていって。この人たちがやってくれるなんて最高だな、と。この映画はキャスティングですべてが決まると言っても過言ではないと思っていたのですごくうれしかったです。

――松居さんと食事をしたとき、他にはどんな話をしたのですか?

初対面だったからこそできる、今だったら恥ずかしくて話せないような話をしました。役者としてどうとか、お芝居がどうとか。もちろんこの作品の話もしましたし、他に好きな映画や音楽の話とか。いろんな話をしました。

――松居さんと話したことで、吉尾のキャラクターに反映されたことはありますか?

それは特になかったです。ただ、成田凌として、現場にどういうふうに居たらいいのか、というところでは、変わったかもしれないです。

――成田さんは、以前から松居さんの作品が好きだったそうですね。

デビュー当時から、松居さんとお仕事がしたいな、と思っていました。それで、松居さんがミュージック・ビデオを撮っていた、クリープハイプのボーカルの尾崎世界観さんと2人で食事しているときに、僕が松居さんの作品が好きで、出演したいと思っていることを伝えてください、とお願いをしたんです。そしたら、松居さんからの返事が「知らねえ」だったんです。

それでも松居さんの作る作品は好きだったので、ずっと観ていました。

――当時のことは松居さんに伝えましたか?

言いました。ヘラヘラ笑ってましたけど(笑)。でも今回、松居さんとご一緒できて、改めて良かったな、と思いました。

男6人がメインの話ですけど、そこに松居さんも加わって、7人で作っているような感覚がありました。いつも俳優部の近くにいてくれたので、安心できたし、救われる部分もたくさんありました。

そうやって僕らの近くにいながらも、現場では全体を広く見ていて。だから、全キャスト、全スタッフが松居さんを信頼できるんだと思います。

今回、6人でやっていると楽しくなり過ぎてしまうこともあったんですけど、そういうときは、僕らとはそれなりの距離感を取りつつ、言うことはきちんと伝えてくれて。だからこそ、信頼できる人だな、とも思いました。

――具体的な演出で印象に残っていることはありますか?

演出というか、6人で赤フンをして踊るシーンでは、松居さんも赤フン姿でした。そうやって一緒に戦ってくれるという姿勢がうれしかったです。

――松居さんは役について細かいリクエストをする方ではないとお聞きするので、その分、成田さん自身が、吉尾について考えることも多かったのではないですか?

それが意外とそうでもなくて。というのも、吉尾は考えても仕方のない役というか。ここでこういう動きをする、というのは事前に考えずに、そのときに感じた反応をしていました。だから、吉尾の反応が全シーンを通して一貫しているのかどうか、僕にはわからないです。ただ、対する人によって反応が変わるのが人間だとは思うので。

役のキャラを大切にし過ぎて、本来そのシーンで伝えたいことが、観てくれる方に伝わらなかったら、意味がないと思うので。僕は、ただそのシーンの目的を達成するために演じています。やりすぎてもダメだし、やらなさすぎてもダメだし、そのちょうどいい具合を探しながらやっています。

――その具合が難しそうですね。

難しくはありますけど、こういうお話しなので、ある程度、やり過ぎてしまっても大丈夫なところはありました。それぞれのキャラクターみんなが抱えているものがあって、その緊張感があったからこそ、できた部分もあります。

――演じていて特に難しかったところは?

全部が難しかったです。役作り云々ではなくて、このお話はみんなの記憶の物語なので、思い出されるそのときごとに違う対応が必要なんです。それから、みんな一緒にいるときと、各々一人に対しているときとで、態度や話し方も全然違う。その具合は難しかったですけど、やっていて楽しかったです。

――吉尾のキャラクターが、演じながら変わっていくところもありましたか?

ずっと変わり続けていたと思います。クランクインのときと、クランクアップのときでは、全然違う人間くらいになっていたかと。そこは、考えてやっていた部分でもありますけど、無意識にお芝居をするなかでなっていたところだと思います。

ネジ(目次立樹)と、大成(藤原季節)と3人で家にいるシーンは、クランクインの日だったらできなかった空気感がありました。撮影をしながら同じ時間を過ごして、少しずつ遠慮がなくなっていったことが、いいふうに転んだな、という感覚があるシーンでした。

――印象に残ったシーンは?

他愛のないシーンにこそ、この映画の良さが詰まっていると思うので、すべてのシーンが印象には残ってますが、強いて言うなら、同じシチュエーションで、設定を変えて2回やった劇場前のシーンですかね。

適当なやり取りの方のパターンはすごく作り込んでいて、逆に熱量が籠る方のパターンは、全く決め込まずに、とりあえずやってみよう、という形のやり方をして。それがやっていて面白かったです。吉尾は同じことを2回するだけだったので、みんなのことを頑張れ~と応援しながら見てました。

作品を「観たよ!」って言われると、うれしい

――自分で観ていてニヤニヤしてしまった、とコメントをしていましたが、どの辺りでそう感じましたか?

やっぱり6人みんなでいるシーンですね。男の子あるあるみたいなのがたくさん詰まっていて、気付いたら口角が上がっている感じ。誰かのやったちょっとしたことに、いちいちツッコミを入れるところが楽しそうだな、って。

――この人のこの芝居は良かったな、と思ったところは?

前田敦子さんの芝居は迫力があって面白かったです。現場で前田さんは僕らのことを少し離れたところから見ていらっしゃいました。(劇中の)関係性的に、僕らから一緒に話しませんか?というのは違うな、とも思ったし、そのおかげで、6人がちょっと女子にビビっていい感じが、そのまま映像にも出せていたと思います。

――長めのリハーサル期間があったそうですが、その際に意識していたことは?

とりあえず全員をご飯に誘う、ということですかね。今回はとにかく一緒にいる時間が大事だと思ったので。声かける担当でした。ただそのときに、意識して距離を縮めましょうね、みたいな空気が出なかったことが良かったな、と。芝居の話も、役の話もせず、お互いのあだ名を決めるとか、そういう他愛のない話をしていました。

――成田さんにとって、共演者の方と食事に行くことは、コミュニケーションの一つの方法なのでしょうか?

それが嫌な人もいると思うので、強要はしないし、このやり方が正しいのかもわからないですけど、僕はそういう時間がとても大切だと思っています。もちろん作品によりけりですけど、今回のような作品のときは、共演者、スタッフ含めて、行けるときは行くようにしています。僕はそうやって一緒にいる時間って、大切だと思うんですよね。

――6人の中で、吉尾以外にやってみたいキャラクターはいますか?

季節くんがやってた大成は面白そうだな、って思います。季節がやっているのを楽しそうだな、と思って見ていました。

季節は現場をかなり盛り上げてくれました。みんなが疲れすぎていたときに、腰にスピーカーをつけて踊り狂ってくれたり(笑)。全体的には年下の方なので、そういう役目をしてくれていました。

――成田さんが今、この仕事をする上でモチベーションとしていることは?

あまり考えたことがないですね。普通に毎日が楽しいので。強いて言うなら、やっぱり作品を観てもらうことですかね。「観たよ!」って言われると、うれしいです。単純にそこだと思います。それで褒められたらうれしいです(笑)。

映画は観る人によって感じ方も違えば、共感のしかたも違うと思うんです。この「くれなずめ」は、観る人によって思い出の保管場所が変わるような作品だと思っていて。だから観た人の間で、ちょっとした盛り上がりの要素の一つになれればいいな、と思っています。

撮影:山口真由子

<「くれなずめ」ストーリー>

高校の帰宅部仲間6人が、友人の結婚式に参加するため、5年ぶりに集まった。

優柔不断だが心優しい吉尾(成田凌)、劇団を主宰する欽一(高良健吾)と役者の明石(若葉竜也)、既婚者となったソース(浜野謙太)、東京の会社に勤める大成(藤原季節)、地元の工場で働くネジ(目次立樹)。

高校時代、文化祭でコントをした結果仲良くなった6人は、卒業後も毎年集まってはバカ話に興じていた。だが、ある出来事を境に疎遠になっていたのだ。

欽一の呼びかけで久々に再会した仲間たちは、結婚式で披露する余興の打ち合わせを行ったり、カラオケでだべったり、これまでも変わらない時間を過ごす。

そして、結婚式当日。渾身の赤フンダンスを披露するはずが昔のようにはバカをやれず、盛大にスベってしまった6人は、すっかり意気消沈。さらには、2次会までの3時間余りをどう過ごそうか悩んでいた。会場近くの店はどこも混んでおり、6人は仕方なく道をほっつき歩きながら、他愛無いやり取りで場をつなぐ。

ふとした会話で脳裏にフラッシュバックするのは、過去の思い出。明石は、吉尾と出会った12年前の高校時代を回想し、ネジは大成と吉尾とお泊り会をした9年前を懐かしむ。欽一は仙台で働く吉尾を訪ね、おでん屋で飲んだ6年前に立ち返り…。やがて明かされていく、それぞれの胸にしこりを残した、5年前の“あの日”。

「それにしても吉尾、お前ほんとに変わってねーよな。なんでそんなに変わらねーんだ?まいっか、どうでも」

そう、彼らは認めたくなかった。ある日突然、友人が死んだことを――。後悔し続けた明石と「はっきりさせようとすんなよ!」という欽一の取っ組み合いを発端に、それぞれは胸にくすぶる想いをぶつけ合い、わだかまりを解消させていく。

5年分のすべてをさらけ出し、再び団結した仲間たちは、「過去を書き換える」一世一代の大芝居に挑むのだった。

©2020「くれなずめ」製作委員会
2021年5月12日(水)より全国ロードショー

最新情報は映画「くれなずめ」公式サイトまで。