松たか子主演、坂元裕二脚本のフジテレビ系『大豆田とわ子と三人の元夫』は、バツ3の大豆田とわ子(松)が、3人の元夫に振り回されながらも奮闘する大人のロマンティックコメディ。
本作で、最初の元夫・田中八作(たなか・はっさく)を演じているのが松田龍平。とわ子との間に生まれた中学3年生の娘・唄(豊嶋花)の父親で、奥渋谷にあるイタリアンレストラン「オペレッタ」のオーナー兼ギャルソン。
だれにでもやさしく、自然と女性からモテてしまう“オーガニックなホスト”と揶揄される一方、とわ子の親友・綿来かごめ(市川実日子)から本の間にいる虫「コナチャタテ」に例えられてしまう、つかみようのない男性。
いつも小競り合いが絶えない2番目の元夫・佐藤鹿太郎(さとう・かたろう/角田晃広)と3番目の元夫・中村慎森(なかむら・しんしん/岡田将生)の調整役でもある八作。そんな八作を、「なかなか本質が見えない」と言いながらも、「わちゃわちゃしている鹿太郎と慎森の真ん中にいる人」と分析する松田に、作品の魅力、八作の人物像、エンディング曲への参加秘話などを聞いた。
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<松田龍平 インタビュー>
ムードがあって“ロマンティック”という言葉が似合う作品
──“大人のロマンティックコメディ”らしく、内容だけでなく、映像の質感などフランス映画を見ているようです。
確かに、照明の具合とか、映像がすてきで、雰囲気がありますよね。すごくムードがあって、ロマンティックという言葉が似合う作品だと思います。とわ子は本当にキラキラしていて、明るくておもしろい。とわ子を中心に、それぞれ個性的な登場人物がいることによって、よりきらめくような作品だと思います。
──松田さんが演じる田中八作は、つかみどころがない人物という設定ですが、印象はいかがですか?
八作が何を思っているのか、自分がどうしたい人なのか見えないところはあって。とわ子に特別な気持ちはあっても、また元に戻りたいと思っているわけでもないし。かといって、新しい恋が始まるわけでもないですし…。鹿太郎と慎森の間に挟まれながら、なんとなく探りながら演じていました。
4話、5話で八作の過去が解き明かされて、とわ子への気持ちも見えてきた感じです。
よかれと思ってしてあげることが、逆に人との距離を作る
──八作はやさしすぎるように感じます。
だから、女性から誤解されてしまうのでしょうね。でも、だからといって相手に何かしてあげても、ありがとうと言ってほしいわけじゃなかったりして。そうすると、何がほしいのかなって。
とわ子に対しても、彼女を支えたいという気持ちだけで、自分がどうしたいとかはなくて。そんな八作だから、親友の恋人(石橋静河)に猛アタックされても、うまく避けることも、受け入れることもできないんですよね。そういうところから、ちょっとずつ八作の問題が見えきました。
──そういう八作に、松田さんが共感するところはありますか?
僕自身は、相手に何かしてあげることがかえって迷惑なんじゃないかと考えてしまうタイプだったから。だから、八作を演じながらいろいろ思うところはあって…。
劇中で、相手に何かしてあげる、サービスするということをすごく責め立てられるシーンがあるのですが、自分はよかれと思ってしてあげる行為が、逆に言えば、人との距離を作ると言われて、「ああ、そういう考え方もあるんだ」と思いました。
それぞれの感情が混ざり合って、おもしろいことに。そこが、坂元脚本の魅力だと思う
──八作、鹿太郎(角田)、慎森(岡田)の元夫3人が一緒にいる様がおもしろいのですが、この状況についてはどう感じますか?
元夫たちがここまで仲良くなるというのは、最初は違和感がありましたね。ただ、回を追うごとに、その違和感はなくなってきて、妙な居心地の良さを感じるようになりました。
もちろん、男女の生々しさがほどよく描かれているからなのかもしれないですけど。元夫たちが、なんだかんだ一緒にいられてしまうのはポジティブなことだと思うし、こういう形があってもいいなと思います。
──八作は、いつもモメている鹿太郎と慎森の取り持ち役みたいなところもありますね。
そうですね、八作は鹿太郎と慎森の間にいることが多いですね。そういう意味では、僕自身も間にいられたらいいなと思うところがあって。その間にいることの意味だったり、何ができるのかをもっと考えないといけないと思うし…。
でも、やっぱり間にいられたら楽しいなと思うんです。実際に、そこにちゃんといられているかはわからないですけど。でも、そうありたいと思いますね。
──とわ子さんも、そんな三者三様の元夫を受け入れていますね。
とわ子って、すごく嫌がりながらも、結局受け入れてしまっているところが絶妙なバランスですよね。たとえば、3人の元夫と一緒にご飯を食べるという話を聞くと、「それ大丈夫!?」ってなるじゃないですか。で、とわ子を見ると、やっぱりちゃんと全然大丈夫じゃなかったり。
それぞれの感情が混ざり合って、すごくおもしろいことになっていますね。そういうところが、坂元さんの脚本の魅力なんだと思います。
「とわ子と八作が離婚した理由には驚きました」
──そんな中、八作には片思いの相手がいたのにとわ子と結婚し、それに気づいたとわ子に追い出されたのが離婚の理由だと明かされました。しかも、その相手は、とわ子の親友・かごめ(市川)で、今でも思いを寄せているという衝撃の事実が発覚して…。
八作ととわ子の関係性は、間に唄がいることで、鹿太郎や慎森とのあり方と違いがあるのかなと思いました。とわ子を支えたいと思う気持ちは唄がいるからなのかもしれないし。そういう意味でも、ちょっと違うのかな。
2人が離婚した理由には、結構、驚きましたね。八作のかごめへの思いは、相当なものだったんだなって。
──それでも、八作は「かごめのことは好きじゃなかった」ととわ子に言い張ります。その気持ちは理解できますか?
できますよ。とわ子と結婚したのに、かごめを諦めきれなかったのは、八作の罪ですよね。だから、最後まで「違う」と言います(笑)。
エンディングで流れる主題歌のラップパートでは、「急に恥ずかしくなっちゃって(笑)」
──ところで、エンディングで流れるSTUTS&松たか子 with 3exes による主題歌「Presence IV (feat. Daichi Yamamoto, 松田龍平) 」に、岡田さん、角田さんに続き、松田さんも登場してラップパートを歌ったのは感激しました。いかがでしたか?
角田さんがカメラ目線でかっこよかったです。僕もそういう感じでやろうと思っていたんですけど、急に恥ずかしくなっちゃって無理でした(笑)。リップシンク(口パク)も恥ずかしかったですね。でも、ラップを歌うことなんてなかなかないですから。ほんと楽しかったです。
──最後に、メッセージをお願いします。
八作がどこに落ち着くのか、僕もこれから楽しみです。最後まで見てね!ありがとう。
撮影:YURIE PEPE