5月21日(金)、映画「茜色に焼かれる」の公開前夜最速上映会が行われ、尾野真千子、和田庵、片山友希、石井裕也監督が登壇した。

「この人にしかできない役」石井監督が尾野真千子を絶賛

大勢の観客の前に立った尾野は「ようやく公開となりました。本当にこんなに公開がうれしいと思えるのは、何年ぶりだろうと。とても感動しています」と感激の表情。

イベント中、「現代の世の中の生きづらさの中にも、石井監督らしい希望がある映画だった」という指摘を受けた石井監督は、「もちろん今を生きるのが大変、つらい、苦しいというのは誰でも言える」と前置きをしたうえで「その中で希望のようなものを見出すのが表現者としての気持ち。少しでも前向きな映画になっているとしたら、尾野真千子さんの存在が大きかった。この人にしかできない役だったし、この人にしかできない映画だったと思います」とコメント。

尾野も「台本の中に含まれている、すべての物語が今、自分でやらなきゃいけないものが詰まっていて。本当に魅力的な台本だったんです」と振り返った。

そして共演者も、尾野の存在に助けられたという。まず和田が「最初は、正直に言うと怖い方なのかなと思っていたのですが、本当に明るくて優しい方でした。現場でも本当の親子のように接してくれたので、僕も肩の力を抜いて、自然な演技ができたんじゃないかなと思います」と尾野への思いを。

片山も「現場でも『コーヒーを飲む?』『お昼、一緒に食べる?』と話しかけてくれて。尾野さんの明るさに助けられました。私はすごくかっこいい先輩とお芝居しているんだなと思いました」と感激の表情を見せた。

尾野真千子「作品を通し、変わることができた」

石井監督にとって、本作の母親は尾野真千子を想定して描いたとのことで、「この母親を演じられるのは尾野さんしかいない。尾野さんからやらないと言われたら辞めようと思いました」という強い思いを抱いていたのだとか。

その熱い思いが実現し、作品を撮影する中で「同じ方向を見て戦いあった、高次元の関係性を結ぶことができた」と感じたという。

その言葉通り、劇中では主人公の良子が、信じていた“とある男性”にだまされて、女性としての尊厳を著しく傷つけられるというシーンがある。そのシーンを振り返り「久しぶりに撮影中に(役から)抜け出せなくなって。『監督、時間をちょうだい』と言いました。でもそれは、自分が全力でここにいるからだと思って、うれしかったんです。一歩、自分を引いて見た時にこんな自分もいたんだな、これも自分なんだと思って。40(歳)間近にして、自分を見つめ直した時間でした」と語る尾野。

本作を通じて「変わることができた。今の年齢でそう思えたのは幸せですね」と付け加えた。

そして最後のコメントを求められた尾野は、涙を浮かべながら「この映画は私にとって最高の映画です。もうコロナ関係なく言います。劇場で観てほしいんです。怒られるかもしれないですけど、皆さんと手と手をとりあって観に来てほしいんです」と熱弁。

続けて、「命をかけて撮った作品です。こんなやりにくい状況の中で、私たちの仕事はもうできないかもしれないという恐怖が襲ってきて。でも今、みんなとこういう作品を伝えないといけない。それがわたしたちの使命だと思って。スタッフも、出演者も、監督も、お金を集めてくれた人も、場所を貸してくれた人も、みんな命がけでやりました。こんな最高な作品はありません。ぜひ劇場で観ていただきたい。そういう気持ちで作りました」と切々と語る。

最後には、ふりしぼるように「泣いてすみません。でも皆さんが笑って劇場に来てくださるよう。コロナに負けるな。頑張ろうね」とメッセージを送った。

映画「茜色に焼かれる」は、5月21日(金)全国公開。

配給:フィルムランド 朝日新聞社 スターサンズ
©2021『茜色に焼かれる』フィルムパートナーズ

最新情報は、映画「茜色に焼かれる」公式サイトまで。