「もしも売れない漫画家が殺人犯の顔を見てしまったら?しかも、その顔を“キャラクター”化して漫画を描いて売れてしまったら」。そんなアイデアを基軸に漫画家と殺人鬼の交錯する運命が描かれる映画「キャラクター」。
本作で、山城(菅田将暉)が描く漫画の殺人現場をリアルに再現するなど、常軌を逸した殺人鬼・両角を演じているSEKAI NO OWARIのFukaseにフジテレビュー!!がインタビュー。
前編では、映画出演を決めた経緯や初めての演技に対する思いを、笑いを交えながら語ってくれたFukase。後編の今回は、撮影中の裏話や、作品の内容にちなみ「Fukaseにとっての“幸せの象徴”」を聞いた。
<Fukase インタビュー>
──役を演じるとき、“共感”が役に近づくための大きな要素となりそうですが、両角に対して共感する部分はありましたか?
殺人鬼の役なので、難しいところですよね…。いろんな役者さんや、お芝居の先生に話を聞いたときに、「どんなに共感ができない役でも、演じ切ったあとに、その役を少しでも好きでいられたら、それは一つの正解だよ」と言われました。
それでも…殺人鬼って、僕は最強のエゴイストだと思っているし、自分の目的のために命を奪うし、両角にいたっては何人殺したんだっていうぐらいですし、好きになることはないな、とそのときは思っていて。
さらにお芝居の先生に相談をしたら、「小さい頃に戻って、大切な思い出、幸せだったこと、うれしかったこと、大切な人、物、音楽。いろいろなものを1個ずつ頭の中から消し去ってください」と言われたんです。
これはメンタルに来そうだなと思いながら、3日ぐらいかけて1個1個、頭の中から消していって。その時に、「自分もこういう大切なもの1個1個がなかったら、両角のような人間になっていた可能性があるんだな」ということに気づきました。昔から思っていたことではありますけど、誰しもが加害者になりうるというか。
僕には守るべき大切なものがあって、すごくいい出会いがあって、いい人たちが周りにいたから、法律を犯さない生き方をしているだけで、それが全部なくなってしまったら…。パラレルワールドじゃないですけど、僕が人生をある瞬間で間違えて、大切なものに1個も出会わない人生を生きていたら…そのもう1人の自分が共鳴できたような感じがして、両角を知ることができた気がしています。
──本作の撮影で一番大変だったのは、どんなシーンですか?
アクションシーンというか、人を刺すシーンは大変でした。撮影中、アクションチームの方に「そんな力じゃ、人を刺せないですよ!」と、すごい勢いで言われたことがあって。「なんでこの人は、そんなこと知ってるんだ?」「この人、普段何してる人なんだろう?」と思いながら指導を受けていたんですけど(笑)。チームの皆さんは、とにかくアクションに真摯で、アツい方々でしたね。
そんな皆さんが言うように、殺人のシーンは、本当に思いっきりやらないと、人を刺しているようには見えないので、撮影の次の日は、肩が上がらなくなるし、全身筋肉痛でした。
劇中にも「人を殺すって、2日間寝込むぐらい疲れるんだよ」というセリフがあるのですが、まさにそうなのに、途中で台本が「1日寝込むぐらい」に書き直されていて。すぐに監督のところに行って、「2日です!」「4人殺ったら、2日なんですよ、マジで!」と、抗議しました。「1日寝込むって、ただの風邪じゃないですか」と(笑)。
撮影で演じていてもドッと疲れていたので、「1日」にしたら、セリフに気持ちが入らないなと思っていましたし、直してもらえてよかったです。
──劇中、“幸せの象徴”という言葉が印象的に出てきますが、今のFukaseさんにとって“幸せの象徴”はなんですか?
ミュージシャンって、幸せになることに抵抗ある人多いと思うんです。幸せってクリエイティブと反対側にあるというか…だから難しいですね。
あ、でも、最近見つけた公園があるのですが、立地条件なのか、すごくいい風が通るベンチがあるんですよね。僕は“風の通り道ベンチ”という、語呂が悪い呼び方で呼んでるんですけど(笑)。
コロナ禍で、遠くにでかけることはなかなか難しいですけど、健康のために歩くことは良いだろう、ということで散歩をするようになって。それで見つけた公園だったんです。日常の近くにあったのに、こんなに近くにあったのに、見つけられていなかったんだ…と思う一方で、そういうものを見つけたとき、身近にあるものがまた新しい形で見えたとき、すごく幸せを感じるなと実感しましたね。
──最後に、実際出来上がった映画「キャラクター」を見て、今改めて感じていることを聞かせてください。
僕は自分のことを直視できなくて、薄目で見ていたので…両角はぼんやりしているのですが(笑)、全体的にすごくかっこいい映画だなと思いました。菅田さんや小栗旬さん、獅童さんをはじめ皆さんかっこいいし、美術もすごくかっこいいし、むちゃくちゃスタイリッシュな映画に出させてもらって、単純にうれしかったです。
僕なりに一生懸命頑張りましたし、完全オリジナル作品で、誰も知らない物語なので、そういった面も楽しんでいただけたらなと思います。
──薄目で見たということではありますが、「特にここは見て!」というご自身の出演シーンはありませんか?
僕がアドリブで入れたセリフが、結構生かされていました。殺す前後のセリフはだいたいアドリブで言っていて、「ごめんね」「疲れた」「先生、ちょっと起きて、起きて」とか、かなり勝手に言っています。そのアドリブを見てほしいなと思いますね。
そう言いながら、「やっぱFukaseってヤバいやつじゃん」と思わないでほしいという気持ちが混在しています。たぶん、僕のことヤバいのかヤバくないのか、「どっちかな?」と思っている方、かなりいると思うんですよ。そういう方がこの映画を見ると「本当にヤバいやつだ!」と思われそうで(笑)。
映画の中の両角は、演技なので!と、ここでハッキリ言っておきたい。僕はとっても優しい人間です(笑)。
撮影:河井彩美
映画「キャラクター」は、6月11日(金)よりロードショー。
©2021 映画「キャラクター」製作委員会
配給:東宝
最新情報は、映画「キャラクター」公式サイトまで。