視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出すドキュメントバラエティ『7RULES(セブンルール)』。
6月1日(火)放送回では、朝めし「あるべ」店主・菊地未来に密着した。
神奈川県・三浦市三崎。全国有数のマグロの水揚げを誇る漁師町で、早朝6時から営業を始める朝めし「あるべ」。そのメニューは、あじの干物に焼鮭、そして、三崎まぐろの頬肉など、魚がメインの家庭的な定食の数々。彼女1人で切り盛りする、朝の定食屋は地元の人や観光客を虜にしている。
人口の減少が進み、神奈川県の市で、唯一の「消滅可能性都市」にも指定されている三浦市で、彼女は地元への移住相談や支援、さらには空き家の利活用を目的とした事業を始めた。
「地元のことは、地元がなんとかしなきゃいけないんじゃないか」という一心で地元の再生に力を注ぐ、朝めし「あるべ」店主・菊地未来の7つのルールとは。
ルール①:付け合わせの野菜は日替わり
「あるべ」の定食は三浦市でとれた魚や干物など、メインのおかずにご飯、味噌汁、野菜の付け合わせ、漬物がつく。1番安い定食で500円とリーズナブルな価格に設定されている。
土日は観光客も多く、午前10時の閉店までほとんど人が途切れない。足を運ぶお客さんは、定食について「お野菜も違うのが毎回出るから、同じのを食べたことがないくらい違うんですよね」、「おかずがね、いつも違うからすごいおいしい」と感想を口にした。「毎日同じものは食べたくない」「見た目より量、味」と、彼女なりのこだわりが評判を得ている。
ルール②:店の時計は5分進めておく
週に1度、朝5時から開かれる三崎朝市を訪れ、買い出しをする。三崎の朝は早く、早朝から働く人たちのため、夜明け前から店を開ける。地元では、少し濃いめの味付けが好まれるため、定食の味は濃いめに作っているという。
また、店内の時計は5分進めてあり、8時や8時半と早めに時報を鳴らすことで「あと5分は大丈夫ですよ」と、お客さんにとってシビアな朝の時間を、気遣っているという。
ルール③:日曜日は空き家を改修する
三崎で生まれ育った彼女は、大学院まで建築を学んでいた。当時、街の課題を探る授業で、三崎を歩いて目にしたのは、人口減少による「空き家」の多さ。それを見た彼女は「めちゃくちゃ面白い建物がいっぱいあるし、路地の町並み、雰囲気とかすごくいい」と、心が動いたという。
その後、市役所に就職するも、今から3年前に退職し、地元の同志らと、三浦への移住支援活動を開始した。そして、空き家を改修し、朝めし「あるべ」をオープンすると、地元で愛される人気店となった。
日曜日の営業終了後、作業着に着替えた彼女が始めたのは、ボロボロになった空き家を低コストで改修する活動。「みんな本業がある中で、都合が付きやすかった」ということで、日曜日に行っている。
「単純なリフォームではなくて、建物の魅力を引き出すといったところを重視してやっている。とてもいい建物が価値を見出せずに壊されるというのが1番良くないと思っています」と、建物に対する敬意を覗かせた。
古い建物を改修していることについて、スタジオの長濱ねるは「私の通っていた学校も廃校になって、維持が大変ということで木造の校舎が取り壊されちゃって。更地になるのは、心がギュッとなる」と、しみじみ振り返った。
長濱の話を受けて、「本当になんでも壊すじゃん」(YOU)、「変わった建物を作ってから『さぁどうぞ』になるんだよね」(青木崇高)、と今の状況を嘆いた。続けて青木は、「『このままじゃ壊すかもしれない』ということを事前にアナウンスしてもらえれば、『待って』の声が上がるかもしれない」と提案した。
ルール④:週に1度はおばあちゃんの顔を見に行く
この日、彼女は三浦市で1人暮らしをする、幼い頃から可愛がってもらったという祖母の元へ。そんな祖母は、市役所を辞めるとき、強く反対したそうだ。
しかし彼女は、市役所勤めという堅い仕事を辞め、自分がやりたい道へと進んだ。そんな自分の意思を突き通す姿に、祖母は「気性が私とそっくりなのよ」と笑った。
1週間に少なくとも1度は顔を出すという彼女は、この日も家の掃除を行った。祖母を訪ねる最大の理由は、生存確認だというが「私にできることがあるなら手伝ってあげなきゃな」と、孫として思いやりの心を見せた。
ルール⑤:移住相談は対面で
「あるべ」の営業終了後、店内には荷物を持ち込む男性の姿が。さらに店先には「きむら」と書かれたのれんがかけられた。このように、「あるべ」の店舗はトライアルキッチンとして、将来、店を出したい人がお試し営業できるよう、時間貸しを行なっている。
また、店の2階と1階奥の部屋は、移住体験したい人に2週間から貸し出しも行っている。三崎への移住支援にも力を注ぐ彼女は、相談窓口も開設し、「あるべ」の営業後に対応している。
コロナ禍で移住希望者が増える中、彼女は対面での相談を条件としている。その理由として「町の雰囲気を肌感で味わってもらわないと、住む・住まないは決められない」と語り、「オンラインで、『三浦を知った』と思って欲しくない」と、地元住民としての誇りを感じさせた。
スタジオでは、1月に友達と三崎に足を運んだという尾崎世界観が、現地で出会った、庶民的ないい料亭の女将さんの話に。「トイレから席に戻ったときに、女将さんが椅子に腰掛けておしぼりを渡してくれたりして。それが、いい空気感でちょうど良かった」と、女将さんの動きを再現しながら伝えた。その様子を見てYOUは「ちょうどいいですね、かしこまった感じもしないし」とつぶやいた。
ルール⑥:三浦に住むデメリットも伝える
昨年、福島から移住してきた渡部さんは、移住前に彼女から伝えられていたことがあるという。それは、三浦市のゴミの分別の細かさについてだった。
「店舗が早く閉まったり、(海が近く湿度が高いため)水跳ねを放置すると翌日カビが生えたりとか、冬でも蚊が出たり、虫が多い」といった住む上でのデメリットについても、彼女は事前に伝える。
三浦市への移住を決める人について「自分で不便さを解消できる人、不便を不便と思わない人の方がいいんだろうなって感じがします」と、相談窓口としての心境を口にした。
ルール⑦:三浦で買える食材を使う
買い出しのために彼女が向かったのは、地元の食材がそろう産直センター。ここで地元の野菜を買い、魚は近所の干物屋さんで、味噌汁に使う豆腐と油揚げは朝市で、と地元を歩いて周り、食材を仕入れていく。
その理由は「あるべ」で食事をした人が、美味しいと感じた食材を買って帰るなど、次の消費行動へとつなげてもらうためだと話す。
また、買い物へ行った先々で、地元の人との会話を楽しむ彼女。「町を作っているのは人なので、私は多分、三浦市にいる人が好きなんだと思っています。その人たちがずっと笑っていられる町でいたいし、成長とか発展という意味合いではなくて、面白さや魅力をそのまま維持できれば」と、町への思いを明かした。
スタジオでは、菊地の活動に「しっかりしてる」(YOU)、「あっぱれですね」(青木)、と感嘆の声があがった。
移住について「すぐには考えられない」という尾崎世界観は、「誰が来ても迎え入れてくれる街に行ったとしても、ひとりだけ“嫌われちゃう顔”じゃないですか」と自虐すると、YOUに「そうですね、顔はね」とフォローすることなく受け止められ、笑いが起こった。
しかし怯むことなく、尾崎は「『あいつむかつくよな』とみんなで言って、そこで結束が高まればいいかな。それでみんなが喜ぶんだったらいいのかな」と、独特な見解を。YOUから「『あいつ誰だ?』顔だよね」と指摘されると、尾崎は「(町をまとめるためにも)ひとつの街に尾崎世界観が必要かもしれませんね」と珍発言をし、場を盛り上げた。
続いてスタジオでは「朝ごはんを食べるか、食べないか」というトークに。「毎日食べる」という青木に対し、「起きたら朝が終わっている」というYOU、尾崎、長濱は「朝食を食べない派」であることが明らかに。寝る時間は、4時から5時だという長濱に、青木が「“ねる”ちゃんなのに?」とツッコミを入れると、YOUが「長濱“ねない”ですよ」と命名し、笑わせた。
※記事内、敬称略。
6月8日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、『鬼滅の刃』など人気アニメの音楽を手掛ける作曲家・梶浦由記。
カメラは、新作アニメ「劇場版 ソードアート・オンライン-プログレッシブ-星なき夜のアリア」の作曲現場に密着。