6月5日スタート、羽田美智子主演のフジテレビ系、オトナの土ドラ『#コールドゲーム』は、マイナス45℃の極寒の世界で、どんな手段を使ってでも生き抜くことを決意した前科2犯の天才詐欺師・木村祥子(羽田)らが繰り広げるサバイバルストーリー。
舞台は、20XX年、隕石衝突の影響で地軸がねじ曲がり、氷河期に襲われた地球。避難所に逃げ込んだわずかな生存者たちは、共同生活を送りながらなんとか暮らしている。
祥子がたどり着いた避難所第七支部では、なぜか“家族”優先に運営されており、祥子は寄せ集めの“偽装家族”の母親として過酷な日々に立ち向かう。そこには、生き別れた実の息子にひと目会いたいという切なる願いがあった──。
サスペンスあり、コメディあり、ラブストーリーありの完全オリジナルドラマで、初めての詐欺師役に挑む羽田は、「いつか詐欺師役をやってみたいと思っていたけど、きっと私にはこないとあきらめていたので、(オファーを受け)『キター!』と思った」と笑顔を見せる。そんな羽田に、作品の魅力、役柄への思い、撮影秘話、死生観などを聞いた。
<羽田美智子インタビュー>
──昨年4~5月に同枠で放送され、羽田さんが主演を務めた『隕石家族』は、隕石が地球に衝突するまでの半年間を描きました。そして、1年後の本作では、隕石が地球に衝突した後の物語です。企画を聞いた時はどう思われましたか?
正直、吹き出しましたね(笑)。続きを考えたのね、って。しかも、氷河期か~と。『隕石家族』は、隕石がぶつかって、その後生きているのかどうかわからないという状態で終わりましたが、本作はシリーズものでは決してないのですが、大きな流れとしては時間が進んで氷河期になったという設定で。
地球温暖化といわれながらも、実は氷河期に向かっているという説は数年前から発表されているし、隕石がぶつかるなんてありえないと思っているけど、小さな隕石は実際にぶつかっているわけです。私は火球を見たことがあるのですが、本当に天変地異かと思うくらい明るい火の玉がバーッと飛んでいって驚きました。
地球は宇宙の一部だから、私たちの意識と関係ないところにサイクルがあって、その中で生かされているんだと常々感じていました。だから、宇宙の営みの中では氷河期が来てもおかしくはないと思います。
恐竜が氷河期に絶滅したという状態と、今私たちがパンデミックを経験している状況をなんとなく世紀末かもしれないと感じることをリンクさせて考えると、ちょっとリアルな怖さがありますよね。最初は吹き出したんですけど、本当にそうなったらどうしようと後になって思いました。
──本作の世界観については、どんな印象を受けましたか?
ありえない、でもありえるというところを描いている世界で、「こういう時代が来たらあなたならどうしますか?」というメッセージや、「これは善ですか?悪ですか?」「正義ですか?犯罪ですか?」「愛ですか?憎しみですか?」という問いかけをしているドラマだと思います。
氷河期とか隕石という設定ですが、このドラマで描きたいことは、極限状態で人間はどうなるのかということ。極限状態で秩序がなくなってしまった世界では、オセロがひっくり返るみたいに常識が全部覆されてしまいます。相反する2つの世界のギリギリのところを、どっちだと思いますかと問いかけて、見ている方が考えるきっかけになればうれしいですね。
念願の詐欺師役…だまされた人のためにだまし返す祥子はかっこいい
──念願の詐欺師役を演じられましたが、オファーが来た時の感想を教えてください。
詐欺のニュースを見るたびに、「なんでこの人がこんなにたくさんの人をだませたのだろう」とか、逆に、「どうして引っかかってしまったんだろう」と、双方の気持ちにすごく興味が湧いていました。だから、巧みな技で人の心の隙間を狙う天才詐欺師の役を演じていらっしゃる先輩方の姿を見て、いつか私もそういう役を演じてみたいと思っていました。
でも、きっと私には詐欺師の役は来ないなとあきらめていたので、オファーがあった時には『キター!』と思いましたね(笑)。
ただ、私が演じる木村祥子という人物は、“目には目を”という人。人をだまして自分が得をするというのではなくて、だまされた人たちのために、彼女が身をもってだまし返すという詐欺師なんです。
私は、何かされて傷ついても、自分が幸せになることで仕返えそうと思うタイプですが、祥子は自分の身の危険をおかしてまでも、傷つけられたらどれだけ痛いか教えてあげるという考えの人。すごくかっこいいなと思います。
──マイナス45℃の世界を描く中で、印象に残ったシーンやエピソードを教えてください。
収録が始まったのは3月初めくらいで、本当に寒かったので、衣装合わせであれもこれも着ようと楽しみにしていたのですが、4月後半くらいになると暑くなってしまって。着込むだけ着込んでいるので、セリフを言うだけですごく大変でした。
特に、中村俊介さんは支部長役で、いいコートを着たり、いいブーツをはいたりして、一番暖かい衣装を着ているんです。もともと暑がりなのに、そんな暑い衣装を着ているから、地獄のように暑そうでかわいそうでした(笑)。
私たちがあまりにも着込んでいるので、まだ冬の寒さの中、冷房をつけていて。スタッフの方たちは、とっても寒かったと思います(笑)。
セットは、廃校になった学校をお借りしました。氷河期は、太陽が出なくなる時代。美術さんが、すべての窓ガラスに本当に氷が張り付いているような装飾をしてくださって、さらに、その外側から暗幕で覆っていたので、校舎内は本当に暗くて。そこにこもって撮影をしていたので、まるで隔離された社会の中にいたような感覚でした。だから、初めてロケに出た時は、久しぶりに太陽を見た気持ちになりましたね(笑)。
極寒の避難所で生きていくルールもすごく細かく決められていて、それでケンカが起こったりするんですけど、よく考えられているなと感心しました。そういうところも楽しみにしてください。
偽装家族“木村家”は絶妙な力関係も、現場では大の仲良し
──偽装家族の木村家は、長男・大輝役の結木滉星さん、長女・陽菜役の久間田琳加さん、夫役のやす(ずん)さんというキャスティングですが、どんな家族ですか?
祥子と大輝は、似たもの同士で親子感があるんですけど遠慮もあるんです。陽菜とは女同士の絆があって、夫とはお互いにないものを持っていてリスペクトしあっています。娘と父親は天敵なのですが、実はだれよりも仲がいいとか、絶妙な力関係なんです。ののしり合って赤裸々なんですけど、とてもいい家族です。
『隕石家族』では、すごく仲が良くて、ファミリーでグループLINEを作って今でもやりとりしているんですよ。木村家は偽装家族だから『隕石家族』の時とは違った雰囲気ですが、すごく仲良くなって、現場ではずっと一緒にいました。
『隕石家族』の夫役だった天野ひろゆきさんといい、本作のやすさんといい、どうして私は丸いフォルムの人をいつも夫にするのかなって。そういう人を伴侶に選んだら、私は幸せになるのかしらと思ってしまいました(笑)。
──ところで、もし羽田さんがマイナス45℃の世界に生き残るために、何か一つ持って行かれるとしたら、何を持って行きますか?
究極の質問ですよね。聖書とか火が起こせるものとか、いろいろな候補がある中で、私は実用的なものよりも、精神的に救いになるものを持って行くだろうと思います。精神がポジティブに傾けば、目の前の事象は変化していくと思うんです。気の持ちようがすごく大事で。だから、気持ちさえきちんとすれば、新しい道はできていくと思います。
精神から参ってしまうかと思うので、座右の銘とか大事にしている観音様の像とか、精神的に自分を奮い立たせてくれるものを持って行くんじゃないかなって。
──最後にメッセージをお願いします。
“生きる”がテーマの作品です。扉一枚の向こうは死の世界。死ぬことが前提だから、“生きよう”とするんです。生き延びるためにはどんなことでもして、離ればなれになった息子と再会することだけを目標にしている女性を演じます。
人は、極限状態になるとどうなるのか。最後に残るのは、人が人を思う心や愛、共同意識、助け合い…そういうことがやっぱり大事なんだということが伝えたいドラマだと思います。
とてもおもしろいドラマになっていると思います。ぜひご期待ください。
撮影:今井裕治