6月26日(土)21時より、フジテレビでは、土曜プレミアム『世にも奇妙な物語‘21夏の特別編』が放送される。
1990年4月にレギュラードラマとして放送を開始し、その後は特別編という形で年に二度の放送を続けるスタイルで、これまで各時代を代表するような作家や脚本家と豪華俳優を掛け合わせることにより、“奇妙な物語”の世界観を作り出してきた本シリーズ。
今回の『世にも奇妙な物語‘21夏の特別編』は、4つの“奇妙な”エピソードが登場する。そのひとつ「成る」で、又吉直樹が本シリーズ初出演で初主演する。
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又吉が演じる岩屋賢太郎(いわや・けんたろう)は、有名なプロの棋士。AI棋士を相手としたある日の対局。岩屋がいつものように駒を返すと、見たことのない文字が駒に書かれていた。そして、AI棋士が駒を返すと、ある女性の名前が現れる。動揺を隠しきれない岩屋。実は昨年、岩屋はその名前の女性と週刊誌に写真を撮られ、妻とは離婚協議中だった。
今作は、将棋の対局をモチーフとし、一人の人物の人生を振り返った作品。自分が人生をかけてきた将棋。その“駒”に今までの人生が言葉として投影されたら、人はどう思うのだろうか。
有名棋士になるまでに登り詰めた主人公だが、そこにたどり着くのは決して楽ではなかったはず。それなのに、手をさしのべてくれた人や真摯(しんし)に将棋と向き合っていたころのことすらも忘れてしまった。そんな主人公が、対局を通じて人生を振り返り、最後に何を思うのか――。
<「成る」あらすじ>
有名棋士・岩屋賢太郎(いわや・けんたろう/又吉直樹)が対局に臨んでいる。この日の相手はAI棋士。“不惑”という妙な名前だが、岩屋はそんなことは気にしていない。
岩屋が駒を返すと、“朮”という見たことのない文字が。岩屋には読めない漢字な上に、さっぱりわけがわからない。そしてAI棋士が駒を返すと“明美”という文字が現れる。
平静を装うも内心、動揺を隠しきれない岩屋。実は昨年、岩屋はその名前の女性と週刊誌に写真を撮られ、そのことが原因で妻とは離婚協議中だった。
「どういうことだ?」。さらに対局を進めると、中学校時代にトラウマになったある言葉が現れる。さすがに耐えきれず部屋を出ようとするが、戸が開かない。あきらめて対局に戻る岩屋の駒に、“5月3日”という文字が…。
それは、岩屋にとって忘れることのできない日だった。家が貧しかった岩屋に、母は立派な将棋の駒を買ってくれた…。岩屋は、ふとそのころのことを思い出し、攻めに転じる――。
<又吉直樹 コメント>
――今回の話が来たときは、どう思いましたか?
台本を読ませていただいて、「すごく面白そうな話だなぁ」と思いました。
――棋士という役どころについては、いかがですか?
将棋に詳しいわけではないのですが、いわゆる棋士の姿勢や、厳しい世界だという話は聞いていましたし、長時間集中して闘うということに尊敬の念を抱いているので、そういう役をやらせてもらえるんだとうれしく思いました。
どの職業でも、集中力というのは求められると思いますし、小説ももちろん集中力は必要なのですが、一人で書く作業なので、孤独ですね。将棋は孤独ではないかもしれないけれど、より長時間の集中力が必要だと思います。
父が将棋が好きで、子どものころよく対局は見ていました。今でも覚えている対局があるのですが、対局中に時間を計っている人が寝てしまって。対局している二人が、目を合わせて笑う瞬間を映像で見たことがあるんです。
そのとき僕は、この人たちしか立ち入ることのできない世界が将棋にはあるんだなってすごく感動したんですよ。二人が目で合図を送り合って笑う瞬間っていうのが、個人戦なのに、対局を一緒に作りあげているという関係性がそこにはあって。「将棋は、関係性の競技なのかな」とそのときに感じました。
――実際に演じてみての感想は?
一人のシーンが多く、また、正座に慣れていないこともあって。ドラマの内容も過酷な闘いでしたけれど、いつ正座の体勢から足を崩そうかという闘いを一人でしていました(笑)。
――ふとした瞬間にトラウマがよみがえってくるというシーンがありますが、ご自身がトラウマになった経験はありますか?
子どものころ、逃げ場がないときとか、トイレに長時間行けないことがわかった瞬間に、急に怖くなっておなかが痛くなったりしました。ほかには、ヤンキーに喝上げされた経験のある場所には、大人になっても行くのがイヤでした(笑)。
――ご自身は、現代では説明できないような体験をしたことはありますか?
誰も信じてくれないんですけれど、5、6歳のころに大阪の祖母の家に行ったときに、宣教師というか老人の家をまわって話をしている外国人の方がいて。そのころは、外国人の方とふれあう機会があまりなかったですし、やさしい方で、話しかけてくれたりしたので、すごく感動していたんです。特に僕は、小さいころ初対面の人と話すのが得意ではなかったので。
1ヵ月くらい後、夏休みの後半で、今度は沖縄の祖母の家に行ったときに、その祖母の家に同じ人が来たんです。その人も「この前まで大阪行っていたんですよ」と言っていて。
僕が「お婆ちゃんの家で会った!」って言ったら、その人は僕のこと覚えていなかったので、「子どもだから外国人の顔はよく覚えていないでしょ」と笑われてしまったんですけれど、絶対同じ人だったんですよ。
大阪と沖縄で同じ人が祖母の家に訪ねてきたという奇妙な体験をしました。こういう不思議な体験は、起こりうることだと思います。
――小説家として、このような怪奇現象やホラーに興味はありますか?
エッセーや短編で書いたこともありますし、不思議な話を書くのはわりと好きですね。コントも含めてですが、ちょっと奇妙な話を考えるのは好きです。
――視聴者のみなさんへメッセージをお願いします。
どんどん追い込まれていく棋士と、どんどん棋士を追い込んでいく“不惑”という名のAI棋士。えたいの知れない怖さみたいなものに、ぜひ注目して見ていただきたいです。