<試写室>『あたりのキッチン!』最終話
いやー、最後の最後まで、本当に素晴らしいドラマでした!!
おっと、つい、最終回見終わった感想をまず書いてしまいましたが…。
うん、といいますのも、最終回前の前回、約3話にまたがって丹念に描かれてきた、主人公・清美(桜田ひより)の、居心地のいい定食屋さん「阿吽」で働くべきか?一流料理店「おおそね」で修業すべきか?問題に、ようやく決着がつきそう!?うん、やっぱり、外へ出て、学んだほうがいいよね!!ってんで、「おおそね」の採用試験に挑む!!という展開になり、善次郎(渡部篤郎)のレクチャーを受けたり、鈴代さん(工藤美桜)ほっぽらかして試験勉強に熱中したり、それに影響されるように清正くん(窪塚愛流)も大学受験にてんやわんや、そんなこんなのやんややんやで(雑か!)、その、ラスト…。
清美…“手をケガ”して、試験失敗!!意気消沈!!トゥービーコンティニュー!!(次週、最終回!)だったもんだから、「え、なんそれ」ってちょっと思っちゃったんですよね。いや、ちょっとじゃない、だいぶ思っちゃったんですよね…。
早々に「なんそれ」が解決されるもんだから、より心をわしづかみにされ、ラストのラストまで、大・満・足の、最・終・回!!
いやだって、3話もかけて、これまで丁寧に丁寧に、清美の“今後”を描いてきたというのに、ここへきての、その丹念のオチが、“手をケガ”って、「なんそれ」じゃないですか。しかもその試験の様子を一瞬たりとも描かないで、突然に、“手をケガ”=包帯巻いてる(@夜の橋上)、で、トゥービーコンティニュー!!!されてもさ、「なんそれ」、じゃないですか。それを「なんそれ」と言わずに、何を「なんそれ」と言いましょう?(「なんそれ」言いたいだけ)
うん、いや、だけど、そうなの、そうなのです。そうは言ってはみたものの、みなさん、ご安心ください!!(結局)
前回の“手をケガ”に、「なんそれ」って思った人、「なんそれ」って憤った人ほど(たぶん、トップで憤ってたのは僕)、その“真相”が、ズシンと響く!!で、その“真相”の解明によって、最終回の幕が開ける…早々に「なんそれ」が解決されるもんだから、より心をわしづかみにされ、ラストのラストまで、大・満・足の、最・終・回!!に仕上がっているのです!!…ってことで、冒頭から、素晴らしいドラマ!!という旨、お伝えさせていただきました(なげーよ!)。
うん、だけど、その「なんそれ」=“手のケガ”の“真相”なんですが(まだ少し続きます)、これがまた、とらえ方によっては「なんそれ」なんですよ(結局な)。「なんそれ」なんだけど、だけどだけど、むしろ、その“真相”が、「なんそれ」って傍(はた)から見るとそうだけど、清美にとってはとてつもなく深刻で重要な問題…だからこその、「なんそれ」…(もうわけわからん!)。いや、その「なんそれ」こそが、このドラマの本質ともいえる…(もう迷子)からこそ余計に、前回「なんそれ」って思った人ほど、響く!!のです。うん、それは、いったいどんな「なんそれ」なのか!?「なんそれ」に次ぐ「なんそれ」に、乞うご期待!!(何回言うねん!)
わかりやすさ重視のテレビ界、どう考えたって、コミュ力<絶対味覚の比重で、物語を作るでしょう?
っということで、ここまで「なんそれ」問答に終始してしまいましたので、最終回のあらすじはというと…。“手をケガ” (これも何回言うねん!)したことで清美は「阿吽」にも顔を出せないほど意気消沈…。そんななか、清美の、「阿吽」でこのまま働くべきか?はたまた、「おおそね」で修業をすべきか?問題に、いよいよ、ほんとに、マジで、決着がつく!!?というお話。
で、この、最終回。何が素晴らしいかって、“コミュ力ゼロ”だけど“絶対味覚”を持つキャラクターってのを主人公に据えておきながら、最後の最後まで、“コミュ力ゼロ”の方を、丹念に描いていくんですよ。
普通、わかりやすさ重視のテレビ界の昨今で、ドラマ化するんだったら、どう考えたって、コミュ力<<<<絶対味覚の比重で、物語を作るでしょう?
っていうか、これまでの話がそう作ってなかったとしても、むしろ、最終回こそは、その“絶対味覚”によって大団円を迎えるドラマの方がわかりやすいし、劇的だっていうのに、この『あたりのキッチン!』ときたら、最終回、主人公が、“最も解決すべきこと”、として、“コミュ力”の方に焦点を当てちゃうんですよ。そんな、物語が作りにくそうな、些細なことでもって、クライマックスを作ってしまう…しかも、ちゃんと面白くって、感動できてしまう、このドラマの屈強さ、真摯(しんし)さに、最後の最後まで脱帽です。
っていうか、繰り返すけど、もう10話まで描いてきたわけだし、清美の成長も丁寧に描いてきたわけだから、“コミュ力”は改善されました!ってんで、最終回を迎えてもなんら違和感はなかろうに、最後の最後に、その“コミュ力”を描く…ってさ、どこまで、このドラマ、丁寧なんだよ…。
うん、いやだけど、この題材なら、“絶対味覚”を強調させて、ちょっと抜けてるけど、スーパーウーマン的な主人公の、ザ・エンタテインメントドラマ!にしても良かったはずなんだけど、決してそうはせず、“コミュ力”に焦点を絞るという、そんな些細なことで物語を紡いできたからこそ、誰にも共感ができる話になったわけだし、それより何より、その共感と、丁寧さがあったからこそ、これまで登場してきた料理やレシピが、ここまで細かく効いてくるドラマに仕上がったんですよね…。
それはつまり、「あぁ、そうやって作るんだ」「そういうコツがあるのね!」っていう、料理ハウトゥードラマでもありながらしっかりと人間ドラマとして成立したってことで、劇中何度も登場した「大さじ〇杯」とかの“情報”は、本当であれば、ただの“情報”でしかなくって、下手すると、情報とドラマって見てる側が分断されちゃうんだけど、その「大さじ〇杯」が、ちゃーんと、密接に、ドラマとつながっている…だから、情報とドラマが分断されず、お話としても面白く、情報としても参考になる…が両立できたんですよね…。そんな、ドラマ体験は僕にとっては初めてで、新しいドラマの形を、『あたりのキッチン!』は示した、と言っても過言では、ない、はず!!
うん、で、最後の最後、僕、決心しました(急に)。
ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ料理を嗜(たしな)む僕ではありますが、衣をつけるのがめんどくさいという一点で、敬遠していた「メンチカツ」、作ります!!!(もう、そこまで作ったんなら、ハンバーグでいいじゃんってなるし…)こんな丁寧なドラマ&レシピ&おいしそうな映像!見せつけられたんだから、あの「メンチカツ」を作らないわけにはいきません!!そして、僕のこれからのメンチカツレシピには、マヨネーズが必須となることでしょう!(ナツメグが家にあった僕を褒めてほしい!!…誰に?)このドラマの思い出とともに…。
編集部注)筆者・大石庸平さんは、このあとすぐに『あたりのキッチン!』のレシピでメンチカツを作りました!
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