加藤シゲアキさんの書き下ろし長編小説の発売が発表されました。
吉川英治文学新人賞を受賞した前作「オルタネート」(新潮社)の執筆中から構想していたと加藤さんが明かす、「なれのはて」と題された書き下ろし長編小説は、10月25日に発売が決定。
<加藤シゲアキ「自分を褒めてあげたい」受賞の喜びと、作家の葛藤を語る>
1万字のプロットから始まり、構成をじっくり練り上げ、原稿に向きあった期間は約3年。原稿用紙740枚超の大作となります。
舞台は、東京、秋田、新潟。そして時代も令和から、戦前戦後の昭和、そして大正までを描きます。
物語のきっかけになるのは、終戦前夜に起きた日本最後の空襲といわれる、秋田・土崎空襲。これは秋田にルーツのある加藤さんが温め続けてきたテーマ。
いつの時代も悲劇と後悔は背中合わせ。やるせない人間の業(ごう)と向きあいつつ、一方で力強く生き抜こうとする人びとの姿を、一枚の絵のミステリを通じて描きます。
芸術の痛みも、社会の問題も、時代の残酷さも、家族の愛も、あらゆるものが詰め込まれた物語の「なれのはて」。
いまの「加藤シゲアキのすべて」を、エンターテインメント小説として昇華させた書き下ろし巨編は、加藤さんが「三十代半ばとなる(なった)私が何を書くべきか、問い続けた結果がこの作品です」と語る、集大成的な作品となっています。
また、刊行を記念して9月22日発売「小説現代」10月号では「加藤シゲアキの現在地(仮)」を大特集。書籍発売より一足先に「なれのはて」が読める「全文公開」や、本人のロングインタビュー、そして舞台の地・秋田でのグラビアなどの特集を予定されています。
<加藤シゲアキ コメント>
/アートディレクション:高倉健太(GLYPH Inc.)
前作「オルタネート」の執筆時から考えていた本作が、構想からおよそ3 年の歳月を経てついに
完成しました。
「なれのはて」は自著のなかで最も壮大なテーマに挑んだエンタメ作品であり、また問題作でも
あると考えています。
三十代半ばとなる(なった)私が何を書くべきか、問い続けた結果がこの作品です。
舞台を2019年の東京と、私の母の地元である秋田にしたのは、私自身がこの物語に深く没入する
ためでしたが、その過程で日本最後の空襲のひとつといわれる土崎空襲を知り、自分がこの小説
を書く宿命を感じました。
この小説を書いたのは本当に自分なのか、それとも何か見えざるものによって書かされたのか。
今はそういった不思議な気分です。
作家活動が十年を超えた今だからこそ、全身全霊で書き上げることができました。
一枚の絵の謎から広がる世界を、どうぞご堪能いただけると幸いです。
「なれのはて」あらすじ・概要
ある事件をきっかけに報道局からイベント事業部に異動することになったテレビ局員、守谷京斗
(もりや・きょうと)。異動先で出会った吾妻李久美(あづま・りくみ)が祖母から譲り受けた、
作者不明の不思議な古い絵を使って「たった一枚の展覧会」を実施しようと試みる。ところが、
許可を得ようにも作者も権利継承者もわからない。手がかりは絵の裏に書かれた「イサム・イノ
マタ」の署名だけ。守谷は元記者としての知見を活かし、謎の画家の正体を探り始める。だがそ
れは、秋田のある一族が、暗い水の中に沈めた秘密に繫がっていた。
1945 年8 月15 日未明の秋田・土崎空襲。
芸術が招いた、意図しない悲劇。
暴走した正義と、取り返しのつかない後悔。
長年秘められてきた真実は、一枚の「絵」のミステリから始まっていた。
戦争、家族、仕事、芸術……すべてを詰め込んだ作家・加藤シゲアキ「第二章」のスタートを彩る
集大成的作品。
「死んだら、なにかの熱になれる。すべての生き物の成れの果てだ」
【書籍概要】
■タイトル:なれのはて
■著者名:加藤シゲアキ
■発⾏:講談社
■発売⽇:2023年10⽉25⽇(⽔)