『テイオーの長い休日』より、脚本家・入江信吾さんからコメントが到着しました。
船越英一郎さん主演の土ドラ『テイオーの長い休日』(7月1日/カンテレ・フジテレビ系)第5話が放送されます。
このドラマは、仕事がなくなった“2サスの帝王”熱護大五郎(船越)が、ある事情を抱えた女性マネジャー・吉田ゆかり(戸田菜穂)とともに、人生のリベンジに奔走するヒューマンコメディ。
第5話では、業界のドロドロした部分、俳優の移籍問題にも斬り込みます。熱護(船越)を、なんとかドラマの仕事に復帰させようと奔走する敏腕マネジャー、吉田ゆかり(戸田)。
彼女を、かつて大手芸能事務所トレランスから“追放”の憂き目に合わせた、宿敵の寿彰(前川泰之)が、熱護たちの所属する小さな事務所に、若手俳優・萩原匠(今井悠貴)の引き抜きという形で本気の揺さぶりをかけてきます。
昼ドラを50年以上作り続けてきた東海テレビ。テレビ業界に渦巻く、リアルな裏話をさらけ出すストーリー展開に話題が集まっているこのドラマが、ついに昼ドラばりのドロドロした局面を迎えるのでしょうか。
“業界の生キズ”を赤裸々にさらすようなこの作品は、どんな発想から生み出されたのか。企画の立ち上がりから関わる、脚本家・入江信吾さんに、その裏舞台や、脚本にかける思いを聞きました。
<入江信吾 コメント>
――これまでの放送でも、何かと“黒い影”を感じさせてきたトレランスの寿(前川)が、いよいよ本格的に動き出すようですが…?
第1話から、“伏線”として出してきた 「吉田ゆかり(戸田)が、どうしてトレランスを辞めることになったか」という謎が、ゆかりと寿の確執として明かされる流れになります。
大手芸能事務所が、小さな事務所に揺さぶりをかけてくるというくだりも、リアルな業界のアルアル話から持ってきて、脚本に入れ込みました。
寿の動きだけでなく、そのほかのところにも “業界として痛い話”を盛り込んであります。第5話の中で、役者になりたてのころの匠(今井)=熱護の付き人が撮影でうまく芝居ができず、監督から「代わりなんかいくらでもいるんだぞ!」と怒鳴られる場面があるんですが、僕自身の生々しいキズか?と問われれば、否定はできません。
似たようなシチュエーションは、何度も経験しているので。この場面を書いているときに、「こういうときに、熱護みたいな人がドンと出てきて状況をひっくり返してく
れたらカッコいいよな、うれしいよな」と思いながら、書いていました。
実際に、自分で書きながら「熱護、カッコいい~!」って、心の中で拍手喝采してたりして(笑)。
――どうして、業界モノのドラマにしようと?
このドラマの基軸は、“崖っぷち俳優” 熱護の再生話です。一回、栄華の時代を築いた人が斜陽産業みたいになってきたところで、もう一回返り咲くという話なので、必然的に業界内部の話にはなるなと思ってはいました。
そのうえで、僕自身がドラマの脚本家として今まで見聞きしてきたことや、経験してきたことを“そのまま書ける”というのがリアルな業界モノにした大きな理由です。
間違いなくリアリティが出せますから。取材をまったくしないでリアリティが出せるのは、助かります(笑)。
そういう意味でも、ものすごく真に迫った話ができているなとは思っています。
特に、第2話(工藤遥さんが、新人脚本家・柏木美遊を演じた回。プロデューサーにより不可解な台本の修正を何度もさせられていた)は、自分の体験そのままですね(笑)。
結果的には、熱護が脚本を守ってくれるのですが、それでは終わらせず、プロデューサーが最後に「じゃ、予算はどうするんですか!」とキレる場面も入れました。
プロデューサーも「予算を守る」という視点では正義なんです。悪人は、誰もいないのに、携わる人間全員が不幸になる流れになっちゃうんですよね、この業界は…。
誰かひとりが悪いわけではないんです。だからこそ難しい。第2話もそうですけど、ほかの回でも、かなり赤裸々なことを書かせていただいて「ここまで書いて大丈夫か?」 と心配したんですけど、心やさしいプロデューサーのみなさんがOKを出してくださったので(笑)。書いていて、とっても楽しかったです。
戦場を失ったのは、僕らだけじゃなかった
――そもそも、どのような経緯で、このドラマの企画が立ち上がったんでしょうか?
僕が、脚本のお話をいただいたのは、船越さんと長年、2時間ドラマをたくさん作られてきたホリプロの井上竜太プロデューサーから連絡をいただいたのがきっかけでした。
僕自身が、2時間サスペンスがまだあったころに、井上さんとよくお仕事させていただいていたんですけど、その枠自体がなくなり、しばらく連絡がない状態だったんです。
それが急にどうしたんだろう、と思ったら…「船越さんに、2時間サスペンスの帝王役をやってもらうドラマなんだよね」とご説明いただいて。
大枠は、井上さんと東海テレビの松本圭右プロデューサーがかなり組み立てられていて、そこに僕が参加する形だったんですけど、これは面白そうだな、と思いまして。
絶対やりたいと思って、「ぜひ!」と返事しました。
――入江さんが2時間ドラマを描くようになったきっかけは?
もともと僕は、連ドラとか、トレンディードラマとかを書きたかったんです(笑)。縁があって、研修生として入った東映で鍛えられて…東映は、特撮モノと刑事モノが売り物の会社だったので、猛勉強して、刑事モノの脚本を書けるようにしたんです。
そこで『相棒』(テレビ朝日)というドラマでデビューして、そこからもう、僕の“刑事モノの人”としてのキャリアが決まってしまったような感じでした。その流れで、2時間サスペンスも書くようになりまして。
もうなんだかんだで、20本近く書いています。僕にとっての主戦場でした。
それが、ある年を境にして、急に枠自体がどんどん減っていってしまって。僕が書きだしたころには、もう「火曜サスペンス劇場」(日本テレビ)もなくなりかけていました。
だから、熱護じゃないですけど…僕自身も、自分の主たる戦場を失ってしまったことに対する、いろんな思いはあり、この思いをどこかでぶつけたい!と今作に臨んでいます。
だから、2時間ドラマそのものをパロディにして、安易に笑いをとろうといった気持ちはまったくありませんでした。
2時間サスペンスをモチーフにはするけど、それ自体で笑いをとる、というのではない。セルフパロディというよりは、セルフオマージュ、という感じで書いていますし、そのうえで上質なコメディにしていけるように作っています。
最初のプロットを、ああでもないこうでもないと、みんなで練っていたときに、船越さんご本人からも意見をいただいたんです。「今まで、2時間サスペンスに対する思いとか、今までやってきたことへの誇りとか、そういうものを大事にしたい」と船越さんがおっしゃったので、「ああ、そうだよな!」と思って。企画の軸がその方向に決まって、それで今の形になりました。
――入江さんにとっても、2時間ドラマに対する思いが詰まった作品になっているわけですね。
2時間ドラマがなくなり、忸怩(じくじ)たる思いがありました。完全にオリジナルのシリーズ(『釣り刑事』シリーズ/TBS/主演・中村梅雀さん)も手がけていたのですが、自分でもすごく好きで、ライフワークにしていこうと思っていたくらいなのに、パート7 までやったところで、枠自体がなくなっちゃって…。
終わっちゃったのが悔しかったです。自分でずっとやりたかったものなので。
僕、このドラマの放送と同時進行で、Twitter でつぶやいていたりもするんですけど、ドラマが始まってから、かつて、2サスに脇役で出られていた役者の方とか 、2サスを作っていた制作会社にいた方とかが、コメントをつけてくれたりするんです。
それを見て、ハッと気がついたんです。そうか、この人たちも2サスがなくなったことで影響を受けてしまったんだなって。
『釣り刑事』のときの制作会社も、 2サスがなくなったことで、かなり苦労をしたらしいですし、会社自体がなくなっちゃった制作会社もあったんじゃないかな。
戦場を失ったのは、僕らだけじゃなかったんです。そして、このドラマが、“こういった人たちを応援する作品でもある” と改めて気づかせてもらいました。
業界の内輪の話ではありますけど、でも描いている悩みや抗う気持ちは、どこの業種でも通じるのではないかなと思っています。
――『テイオーの長い休日』の脚本で苦労した点は?
このドラマは、基本的に、船越さんが過去にやった役を生かして、毎回謎を解いていく、事件を解決していくという話になっています。
第1話は、かなり初期からあの形で決まっていたんですが、過去にサスペンスでやった役…調査官とか、医者とか、弁護士だったり、探偵だったり…を毎回、なにかしら出さなくちゃいけない、ということで、そのシバリが非常に大変でした(笑)。
毎回、その役に合った事件やら謎を起こして、毎回、解き明かしていくわけなので、それは大変でしたし、あともうひとつ、ホームドラマの要素もある。吉田家が転がり込んでくる、というところから始まって…。
そういう部分も含めて、入っている要素が、いろいろ多いので、それを整理整頓しながらやっていくってのは、なかなか大変でした。けれども面白かったです。
あと、タイトルが『テイオーの長い休日』なので、熱護の仕事が成立しちゃったら休日が終わっちゃうんですね(笑)。毎回、なんとかして、仕事が成立しなくなるようにしなくちゃいけない。それもまた、大変だったかもしれません(笑)。
――最後に、視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
とにかく、熱護のことを、みなさんに好きになってほしいです! 時代にうまく合わせていくのが美徳みたいに言われがちな昨今ですけど、それができない不器用で愚直なオジサンもいるんだ、と。
そういうオジサンの、やせ我慢の美学みたいなものは、最近なかなか描かれなくなっただけに、そこをみんなで応援してあげてほしいと思います。
見終わったころには、みんな、熱護が大好きになってくれていると信じてますし、そう
なることを願っています。
第5話では、熱護は、船越さんがかつて演じた『家裁の人』(テレビ朝日)を想起させる「魂の裁判官」に変身します。
『テイオーの長い休日』第5話は、7月1日(土)23時40分より、東海テレビ・フジテレビ系で放送されます。
<第5話あらすじ>
ゆかり(戸田菜穂)のマネジメントのおかげで、熱護(船越英一郎)の付き人・萩原匠(今井悠貴)がプチブレイクの状況に!だが、なぜか浮かない表情の匠を、ゆかりは不審に思う。
その陰には大手事務所・トレランスの寿(前川泰之)の存在があった。寿は匠を引き抜こうとしていたのだ。移籍すれば、大ブレイクの道が約束されていた。だが、熱護への恩義もあり、悩む匠。
一方、ゆかりは寿の真意を確かめるべく、7年ぶりに古巣に足を運ぶ。そこで、ゆかりと寿の因縁が明らかになり…。
そんななか、熱護はなぜかトレランスの人気俳優で匠の友人でもある伊集院(白石隼也)に会いに行っていた。そして、なぜか漆黒の法服をまとい、オリプロの面々を呼び出して…。
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