世の中の独特の世界観を持って生きるダメ人間=アウト人を招き、マツコ・デラックス、矢部浩之、山里亮太の3人とアウトなトークを展開する異色のトークバラエティ『アウト×デラックス』。

まさに「アウトとグッドは紙一重」であり、毎回登場するアウトなゲストたちの歯に衣着せぬ発言は、時に共感を呼び多くの視聴者のハートを掴んでいる。

フジテレビュー!!では、「アウト×デラックス・オブ・ザ・イヤー」と題し、番組の演出を手がけるフジテレビ・鈴木善貴(すずき・よしたか)ディレクターに突撃取材!

2019年、特にデラックスに光り輝いたアウト人について聞いた前編に続き、後編では、これまでの『アウト×デラックス』を振り返りながら制作の裏側や、その思いについて迫る。

“アウトな人”をデラックスに…「優しいマツコさん」の存在

――『アウト×デラックス』が始まる経緯について教えてください。

鈴木:もともとマツコさんと矢部さんが出演していた『幸せの素』という番組がありました。いろんなゲストの幸せを感じる瞬間をピックアップして再現VTRでお届けしてましたが、それがきっかけとなりました。

不幸代表女子としてレギュラー出演していたのがオアシズの二人や森三中・黒沢さん、椿鬼奴さんで、その中でのマツコさんのやり取りがすごく優しいんですよ。

当時は、他の番組で毒づくマツコさんばかりが切り取られていたので、“優しいマツコさん”にフィーチャーしようということになりました。なので自分のこともアウトだと自覚しているマツコさんに、もっとアウトな人をぶつけたらどうなるんだろう、という好奇心からこの番組はスタートしています。

『アウト×デラックス』は“アウトな人”がデラックスになったら良いなという思いで命名されました。

8年前に、最初に特番でやった時は、「これはレギュラー番組になるのかな?」と思うほど“キワモノ”ばかり集めていたと思います。でも、マツコさんの存在は大きくて、本人の気持ちになって応えてくれます。

この番組で出演者の新たな一面を発見して、それをきっかけにファンになってもらえると嬉しいです。テロップなど意地悪なことを書くこともありますが、基本的には愛のある番組構成を考えています。

出演陣のアウトさに嫉妬するマツコ

鈴木:この番組は、やるたびに“ザワザワ”を起こさないといけないと思ってます。Yahoo!ニュースも毎回狙いたいですし。

一方で、この番組にはクレームがほとんどないんですよ。マツコさんもですが、視聴者もまた優しい気持ちで見てくれています。自分にもそんな一面があるかもしれないという共感なのか、自分より変わった人がいるという安堵なのか、「自分もそのままでいいんだ」という気持ちにしてくれる番組なのだと思っています。

個人的には、お笑い版『ザ・ノンフィクション』だと思って作ってます。マツコさんもすごく面白い人が来た時は、嫉妬して帰りますから。アウトな出演者同士で刺激を与えあっているのではないでしょうか。

そして何より、矢部さんの「アウト〜」っていうテロップがたくさん出る回っていうのが一番いい回ですね。

矢部浩之の「アウト〜」の数に注目

2019年は、時事ネタに負けない企画を形にできた

――6年目を迎えた『アウト×デラックス』。2019年は、どんな年でしたか?

鈴木:2019年は、特にニュースや時事ネタが面白い年でした。事件だったり結婚だったり、世の中の現象の方が面白い時っていうのは、報道や情報番組の方が強いと思うんですよ。その時に、その当事者を呼べればもちろんいいと思いますけど、なかなかそれは難しいですよね。

そこに対抗するわけではないですけど、女性問題の渦中にあった原田龍二さんに出演してもらえた回は、本当に良かったです。

その他にも、『ルパンの娘』のオーディションに遠野なぎこさんが参加して、実際にドラマ出演につながった展開も新しかったです。局内のドラマではありましたが、今後も番組の枠を超えて世の中の流れを取り込んで行ければといいなと思ってます。

「アウト流謝罪会見」と題して、アウト軍団が常識破りの質問をする企画は、『アウト×デラックス』の真髄のような企画だと思いました。ちょうど山里さんが結婚を発表されたタイミングでもあって、原田さんの義理の妹の松本明子さんが蒼井優さんの格好をしてくださったのも面白かったです。

「アウト流謝罪会見」の1コマ。原田龍二(左)と蒼井優の格好をする義理の妹の松本明子(右)

『アウト×デラックス』こそダイバーシティ!1000人のアウトたちとシナジーを作っていく

鈴木:あと、実は2018年までアウト軍団は固定メンバーでした。でも2019年は、アウト軍団を適材適所で変えるようにしました。そうすることでその日のゲストの裁量に囚われず、アウト軍団とゲストの掛け算でシナジーが生まれて番組が盛り上がるようになったんです。

例えば、筋肉の話なら横川尚隆くん、美容の話ならアレンくんなどゲストに絡める形でアウト軍団を変えています。この新しい掛け算で、まだまだ番組は面白くなると思っています。

番組の鈴木善貴ディレクター が「2019年一番の“アウト”」だという 横川尚隆

今アウトなゲストのリストが600人くらいですけど、1000人くらいまでは作りたいです。これまで見たことないような人も探していますが、著名人の新しい一面を再発見するのも番組の醍醐味だと思います。

整形に9000万円以上かけたというアレン

また、アウト軍団のすごさは、マツコさんや矢部さんや山里さんでは引き出すことができない、突拍子もない“アホ”な質問でゲストをより輝かせてくれることなんです。

例えば、先日ゲストにお迎えした平松愛理さんは、毎日最寄り駅から自宅まで帰れないくらいとんでもない方向音痴なんです。

軍団の一員である加藤一二三さんが、猫好きなこともあって「猫は絶対に家を覚えているから猫に案内してもらったらいい」というアドバイスをしたんですよ。そんなこと絶対思いつかないじゃないですか(笑)?

そうすると平松さんもすかさず「猫に案内してもらったら、塀に飛ばれるとついていけない」って被せてきて、次々と化学反応が起こっていくわけなんですよ。

普通の人ならツッコミを入れて終わってしまうこともアウトな人同士だとアウトな視点から乗っかってくるんですよね。こういった、台本には書けない展開は、制作側としては拍手なんです。

本当に『アウト×デラックス』から学べることは、みんな常識が違うということです。この番組には、真のダイバーシティが詰まっています。これからも多様な時代に寄り添った、さまざまな人生や価値観にフォーカスを当てた番組でありたいと思っています。