『競争の番人』第8話完全版
小勝負勉(坂口健太郎)は、検察官の緑川瑛子(大西礼芳)に呼び出された。
緑川は小勝負に、検察の保管庫で見つけた15年ほど前の死体検案書を見せる。公正取引委員会に入ったのは、このためではないかと疑う緑川。
その死体検案書には「ラクター建設」や本庄聡子審査長(寺島しのぶ)の名があり、本庄の名を見た小勝負は表情を曇らせた。
<ドラマ『競争の番人』これまでのあらすじ完全版>
15年前、本庄は公取の四国支所にいた。仕事ができる本庄は、審査課長の上沼慎太郎(おかやまはじめ)からの信頼も厚い。
四国支所で新たに取り組むのは、建設工事の談合疑惑。ゼネコン大手の一角、ラクター建設・愛媛支店の関与が疑われるが、有力な情報は得られずにいた。
本庄は同僚の三島徹(今井悠貴)とともに、ラクター建設の木下健一(石井正則)から話を聞く。談合を問う本庄に、木下は否定して社員への聞き込みも迷惑だと断った。
木下が目を離した隙に周囲を見回す本庄。すると、ラクター建設のような大手が相手にしそうにない、小さな建設会社「小勝負建設」の調査資料を発見する。
本庄と三島は、小勝負建設へ。社長の小勝負誠(高橋努)は、談合の件など知る由もない様子。
そこに誠が参加していた工事が入札から漏れたと連絡が入った。仕事が上手くいっていない誠は落胆し、妻の朋子(遠藤久美子)も途方に暮れてしまう。
それでも誠は、心配する息子の勉(市原匠悟)を「なんとかなる」と安心させた。「弱くたって戦わなきゃ」と。
この勉こそ、後のダイロクの小勝負だ。
家族に「なんとかする」とは言ったが仕事が回らない誠。そんな時、木下が誠にある話を持ちかける。それは、仕事に困っている誠への入札談合の誘いだった。
卑怯なやり方と迷う誠だが、家族や社員たちを守るためにと談合への参加を決断。誠は木下に参加を表明した。
すると、すぐさま先日の入札で漏れた仕事を回される。木下たちは、これから行われる入札で受注する会社も、かなり先まで決めていた。
木下は、戸惑う誠を藤堂清正(小日向文世)に紹介。この辺りの談合を仕切っているのは、国土交通省から四国地方整備局に来ている藤堂だった。
誠が会社に戻ると、朋子や勉、社員たちが仕事が来たと喜んでいる。しかし、誠は胸中複雑で…。
数週間後、本庄は小勝負建設が順調に仕事を受注し始めたことに疑問を持つ。
その一方、誠の知り合いの小さな建設会社は次々に倒産していた。誠は、木下に他の会社にも仕事を回すよう頼むが断られてしまう。
談合を疑って再び訪ねて来た本庄にも、誠は事実を語ることができずにいた。
しかし、将来は父と一緒に日本一のビルを建てるという勉の夢を聞いた誠は良心に抗いきれず、本庄に談合に加担していることを打ち明ける。
誠の証言をもとに、四国支所はラクター建設への立入検査を実施。そのため、誠はラクター建設の関連会社から裏切り者扱いされ、地元の建設業界からも総スカンを食らうようになってしまった。
仕事が滞った誠は、家族を守るために最後の決断をする。本庄に電話して、「談合を裏で取りまとめているのは藤堂だ」と教え、自ら命を絶った。
本庄が15年前のことを思い起こしているところに、小勝負が来た。緑川から受け取った資料を本庄に見せ、藤堂を捕まえるために公取に入ったと言う小勝負は、力を貸してほしいと頼む。
だが、本庄は「何も知らない」と答えるだけだった。
一方、藤堂は、新たに「東京湾岸地区再開発プロジェクト」という歴史的な巨大プロジェクトの談合を仕切り始めていた。
そんな巨大プロジェクトを横目に、第六審査(通称ダイロク)が受けた新しい案件は、中堅ゼネコン会社による下請けいじめ。だが、小勝負はまだ第一審査から戻ってこない。
桃園千代子(小池栄子)が「第一が調べている談合には、ラクター建設が関係している疑いもある」と言うと、白熊楓(杏)は眉をひそめる。
1年前、白熊が公取に飛ばされるきっかけになった事件の被害者はラクター建設の役員だったからだ。
第一審査は、いよいよ河川工事の談合疑惑でラクター建設への立入調査を行うことになった。だが、その情報は何者かによって藤堂へ知らされてしまう。
知らせたのは本庄だった。また、本庄は木下から怪しげな資料も受け取っていた。
その頃、白熊は下請けいじめの件で「小津建設」へ。資金繰りに窮している小津耕介(竹財輝之助)、環(前田亜季)夫婦から話を聞いていると、テレビから「東京湾岸地区再開発プロジェクト」のニュースが流れてきた。
環は、「どうせまた談合が行われ、その陰で自分たちのような小さな会社が潰れていく」と愚痴る。談合のせいで年間1000社ほどが倒産すると環から聞いた白熊は驚いた。
第一審査は、予定通りラクター建設への立入調査を実施。
しかし、応対する樋山雄也(平原テツ)は余裕の表情。そんな樋山に、小勝負は談合は裏で官僚と繋がっていると突きつける。樋山は多少動揺したかに思えたが…。
立入調査を仕切る第一審査のキャップ、菅原良人(坪内守)に電話連絡が入った。
すると、菅原は上からの命令だと立入調査の中止を告げる。嫌味を言う樋山に、小勝負は藤堂の仕業だろうと問う。だが、樋山はなんのことだと知らぬ顔をしていた。
第一審査の調査中止は、すぐにダイロクに伝わった。今までにこんなとこがあったのかと聞く白熊に、風見や桃園はなかったと訝しむ。
そこに小勝負を探して緑川が来た。調査中止の理由を尋ねる白熊たちに、緑川は噂では官僚からの圧力があったらしいと教える。
白熊がダイロクの部屋から出ると、ちょうど小勝負が来た。本庄を探しているという小勝負に、白熊が見ていないと答えると、小勝負は「調べることがある」と踵を返す。
小勝負の背中に、白熊は第一審査の談合案件は終わったのではないかと声をかける。小勝負は「そう簡単には終わらせない」と言い捨てて去ってしまった。
その夜、小勝負は料亭で本庄が藤堂と会っている姿を目撃する。
翌日、小勝負は本庄を訪ね、第一審査の立入調査が中止になったことを報告。
情報漏れがあったらしいと続けると、「知らない」と言う本庄。すると、小勝負は情報を漏らしたのは本庄だと言い放つ。本庄と藤堂の密会を見たからだ。
裏切りだと責める小勝負。それを否定した本庄は「これ以上、藤堂さんに近づかないで」と警告。小勝負も「俺の邪魔をするな」と譲らなかった。
小勝負は「東京湾岸地区再開発プロジェクト」のイベント会場へ向かい、終了後に藤堂のもとへ行く。そして、小勝負は藤堂に「談合の日時と場所は決まったのか」と問いかけた。
樋山が慌てて警備員を呼びに行くと、小勝負は藤堂と対峙。藤堂は小勝負という名前をやっと思い出したと話しだす。
誠の死は残念だったが、そのせいで自分たちも大変な目に遭ったと藤堂は小勝負を揶揄する。さらに、藤堂は「談合よりも競争のほうが悪に思える」と続けた。
小勝負は、談合を絶対に止めてみせると言うが…。
会場を後にした小勝負に、国土交通省の者という声で談合のタレコミ電話が入る。
詳しいことは、場所を変えて話したいというタレコミ相手の指示に従って、小勝負はとあるビルへと向かった。
しかし、ひと気のないビルでタレコミ相手を探していた小勝負は何者かに襲われてしまう。
小勝負は必死に抵抗するが、刃物を持った相手は容赦ない。いよいよ、小勝負の抵抗も虚しくなった時、相手は刃物を突き刺す。
その刹那、小勝負を庇うために飛び出した人物が凶刃の犠牲に。目標を誤った何者かは去った。
小勝負が自分を庇い、傷ついた人物の顔を確認すると、それは本庄だった。