“深呼吸”出来る場所が、“息苦しい”場所に変わった…

これまで『アライブ』というタイトルをそのまま表す、「生きている」ことの象徴的場所だった病院の“屋上”が、まさか息が出来なくなるくらいの辛い場所に変わるなんて…。

第1話レビューでも書きましたが、印象的な美しいファーストカットだった屋上での“深呼吸”が、第5話のラストで“息苦しさ”につながってくるなんて、誰が想像できました?すごくないですか?この対比。ドラマのファーストカットとか、セリフのないシーンの映像の意味とか、そういう細々した部分を気にしがちなドラマオタクの僕は特に、この繋がりと変化にゾワっとして鳥肌が立ちましたよ。なんて美しいドラマ演出!

っと、ちょっと冷静ぶって“僕ちゃんとドラマ観てるでしょ?”アピールをしてみましたが、嘘です。そんなことは後で思い出したんです。だってそんなことよりも、今回のラストがあまりにもショッキングすぎてドラマの体裁なんて考える余裕なかったもん。前回、前々回とあまりにも泣き過ぎたんでね、さすがに今回は泣かないだろうと思ってたんですよ。毎回毎回“泣いた!”という感想じゃ、ちょっと芸がないですしね。

だから今回は余計に涙腺を引き締めて臨んだんですよ。それで、今回の離婚調停中の母(遊井亮子)のエピソードがやっぱり感動的で、お母さんのために息子が「いいから手術受けろよ!」って強く言うシーンなんか、やばい、僕を泣かせにきてる、案の定ウルっときちゃってる、いやでも、まだまだこんなんじゃ泣かんよ、子供のエピソードで泣かせようったって、僕はそう簡単じゃない!なんつって、勝手に自分の涙腺と攻防戦を繰り広げてたんですよ。そしたらまさか、ラストの薫先生(木村佳乃)の告白があまりにも辛いから、結局、泣いちゃうっていうね。

これまで悲しすぎて泣いたり、生きててありがとう!なんつって泣いてたのに、その次週“辛さ”で泣くって、とんでもないドラマだな。「ところで京ちゃん(北大路欣也)今週どこいった!!」と、その辺無駄にケチ付けて怒っちゃうくらいあのシーンは辛すぎ。

心先生(松下奈緒)が薫先生に「なんでもするって言ったよね?」と言った後のセリフ。次のセリフまで結構な間があって、その間僕は「夫を返して!!」的な“慟哭”になったら結構醒めるなー、でもきっとそれだろうなー、だって普通、ドラマにおけるこの問答の返しは「(亡くなった人を)返して!」がお決まりじゃないですか。それにそういうセリフ予想ってだいたい当たるし(自慢気)。だから、いよいよそのセリフによって僕も『アライブ』の興奮から醒めちゃうんだ、この感想レビューにどう書こう、醒めたなんて書けないよなー、どうしよう、そんな陳腐で安っぽいセリフはやめてよねー、っていう邪念がすごかったその直後、

「消えて…」

膝から崩れ落ちたよね。いや実際はソファに座ってるから、膝からは崩れないんだけども、心の安定が保っていられない。

あの心先生が、

「消えて…」ですよ?

辛い。辛すぎる。だからもう泣くしかないよね。

そもそも、その前段階で、心先生が薫先生に不信感を抱くようになり、治療方針について対立したりの“不穏”を描き、だけどもお互いに患者さんのために懸命な姿を見せて、“私情”を仕事に絶対持ち込まない、プロフェッショナルな姿をまざまざと見せつけた上で、改めて二人の絆を強調し、さらに薫先生が「失敗したの…」という最初の告白の段階では心先生自身と関係ないことだと思い、「薫先生…(大丈夫だよ)」って肩を抱いてかばってさえいたのに、夫の手術に関することだと知った瞬間「消えて…」だもんね。

この感情のグラデーションの見せ方が周到すぎるし、怖すぎる。やっぱり他人の医療過誤については、同じ医者だし、人間誰しも失敗はあるよなんて励ますことはできるけど、自分の夫の医療過誤ともなれば、私情しかなくなるよね。最も信頼していて、ついさっきその信頼が強固になったばかりの相手に「消えて…」だもん。辛い。僕が薫先生だったら、もう辛すぎてあの“屋上”からサヨナラしたくなるわ…。で、もうちょっと振り返ると、高畑淳子さん演じる高坂さんが薫先生に「言った方は楽になるかもしれないけど、言われた方は、わからない…」ってさりげなく薫先生に突き刺さりまくるセリフ言ってるからね。それも合わせてラストに全部突き刺さってくる…。

ああもう辛すぎるから、今回より色濃く描かれた乳がん患者の佐倉(小川紗良)さんと研修医の結城先生(清原翔)の甘酸っぱいラブストーリーを全力で妄想したくなる…。でも次週予告で抗がん剤治療の後遺症で…。ちょっと『アライブ』スタッフさん、そこも辛くするのはやめてよね!?絶対だよ!!??約束してーーー!!!

text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)

第5話のあらすじ完全版はこちらから。