2月8日(土)放送の『週刊フジテレビ批評』は、「“命をめぐる作品”が集結!冬ドラマ辛口放談」の前編。

ドラマ解説者・木村隆志氏、日刊スポーツ芸能担当記者・梅田恵子氏、ライター・吉田潮氏、久代萌美フジテレビアナウンサーが、ドラマ通としての覚悟を持って現在放送中の冬ドラマを徹底的に斬った。

まずは木村氏の「(放談のタイトルに)“命をめぐる”とありますけども、刑事事件、あるいは医療がモチーフのドラマが、プライム帯(19時~23時)の75%。もうひとつは、主演俳優が、かたや沢村一樹さん、天海祐希さん、かたや横浜流星さんとか、上白石萌音さんとか、若い方とベテランの方が激突するような形になっている」という傾向分析からスタート。

医療もの、刑事ものが乱立する中『10の秘密』は、カンテレが攻めてる!

各人がオススメドラマを2つずつあげる中、フジテレビのドラマとして名前が挙がったのが、向井理主演の『10の秘密』。

木村:他のドラマが、医療、刑事、1話完結にこだわる中、これは完全なるオリジナルの長編ミステリー。やっぱり、カンテレ攻めてくるなと(笑)。フジテレビだけれども、カンテレ(関西テレビ制作)。これ、3話で主人公がヒールターン、悪いやつになり、4話では元奥さんとの対決が始まったりと、今後に楽しみがどんどん増していくような感じですね。

吉田:私は、嘘とか秘密とかいうワードにはものすごく惹かれるんですけど、ちょっとその、嘘や秘密にさいなまれる心の葛藤みたいなのが見られるのかと思ったら、案外、事件、事故、警察レベルの話がギュッと詰まっているんですよね。もうちょっと人間の感情みたいな部分に訴えてほしかったなと思ってます。

梅田:面白く見ています。ただ、娘の命があと3日っていってるのに、しっかりランチして、家に帰ってちゃんと寝てっていう(笑)。なんか、悠長だなって。時限サスペンス感が薄いんですけど、ただ、向井さんが振り回される普通の人をすごくいいテンションで演じていらっしゃるので。ゲスい反撃に出た3話あたりから、いい泥仕合になっていて、テンポが上がって来て楽しめています。

最も多く票を集めた『テセウスの船』

最も多くの票を集めたのが、警察官の父親が起こした殺人事件の謎を追ううちに、令和から平成へとタイムスリップする主人公を竹内涼真が演じる『テセウスの船』(TBS)。

梅田:スケール大きいですよね。今期、病院の中だけでチマチマと話が進んでいくドラマが多めなので(笑)、竹内涼真さんが雪山の中を涙目で走りまわっているだけで、ものすごいスケール感。タイムスリップして、自分の家族を守りたいっていう、そこの衝動にも共感できますし、丁寧に作っているのがわかる。これは最後まで見ます。

木村:壮大な雪国ロケをやっていて、寒いんですけれども、鈴木亮平さんと竹内涼真さんが熱いぶつかり合いをする。もうひとつ、往年の日曜劇場らしい、家族の温かさとか、そういうシーンもしっかり入れているので、大量殺人の暗い話ではあるんだけれども、温かさもある。

久代:展開がとっても速くて、常にハラハラドキドキさせられて。怪しいと思っていた人がすぐに死んでしまったりとか。すぐに展開が変わっていくので、あっという間に過ぎてしまう1時間ですね。

吉田:『 JIN-仁- 』(TBS)って昔ありましたね。あの感じを思い出して、「懐かしいな」とも思うし、「わぁ、竹内涼真寒そうやね」っていうのも思うし。ただ、今期は全体(のレベル)が本当に低いので、その中でこの絶賛っていうのは、どういう意味かっていうのを、よく考えたほうがいいと思います。

被害者ヅラしないシシド・カフカのヒロイン像がかっこいい!

そんな中、シシド・カフカ主演の『ハムラアキラ~世界で最も不運な探偵~』(NHK)にも評価の声が。

吉田:主演のシシド・カフカがまずかっこいい。“不運な探偵”という売り文句なんですけど、シシド・カフカがまったく被害者ヅラしないわけですよ。お涙頂戴、同情も誘わないし、もう孤高の人っていうのがものすごくかっこいいヒロインだなと思って。ナンバー1です。

梅田:これも楽しいです。“とにかくついてない”っていうのがひとつのキーワードなんですけど、ついてないっていう描写がいろいろ積み重なったときに、最後に驚きの結末になるんですけど、そこの話を追っているのも楽しいですし。

NHKは『ロング・グッドバイ』なんかもやってましたけど、このハードボイルドなテイストって、やっぱり民放ではなかなか作るチャンスがないジャンルであったりするので、NHKが作るとやっぱりちゃんと見れるなっていう。(シシドと)間宮(祥太朗)さんとの大人の会話もかっこいいですし、BGMもジャズだったり。

木村:確かにシシドさんはかっこいいですし、映像はハードボイルドで色気がある。ただ、前回視聴率が3%なんですよ。 NHKにしても、金曜22時の枠でこれだけお金をかけて、視聴率3%っていうのは、やっぱり問題だと思うんです。作品としていいか悪いかじゃなくて、この時間帯で嗜好性の高いものを作っているっていうことはいいのかっていう。

そういうところがNHKであっても問われる時代になってきているので、これは非常に評価しにくいところかなと。これ、フジテレビだったら、深夜かFODでやってますよ。見る人を選ぶけど、見る人はたまらないという作品。

意見が別れた『伝説のお母さん』

前田敦子が子育てする魔法使いを演じる『伝説のお母さん』(NHK)については、

吉田:見た時に、ちょっと新しいなと思ってしまった。「ガールズちゃんねる 」ってわかります?「2ちゃんねる」とか「5チャンネル」の女性版みたいな。夫とか男への罵詈雑言っていうのがすごく詰まっていて。そこに『勇者ヨシヒコ』のシリーズ(テレビ東京)全面で悪ふざけするっていう。あれの要素を入れて、さらにNHK版にしました、っていうような。なんかその、やりすぎなんですけど、その新しさみたいなものに私はとても惹かれて。

梅田:これも面白いです。変わっているドラマですよね。ヒロインの前田さんは、魔王に襲われそうな国家をたった一人救うことができるかもしれない魔法使いなんですよ。でも、そんなスペシャルな人でもワンオペ育児っていうところから解放されないんだっていう、そこの逆説がすごくきいていて。

ただ、女性をめぐる社会環境がきびしいなっていうのは、デフォルメして面白おかしく見せてくれるんですけど、なんだか見ているうちにしんどくなってきちゃうんですよね。そこのところをもうちょっとコメディ度を上げてやってもらえると助かるなと。

木村:これは原作漫画が、Twitterとかブログで連載してたものなんですね。本当に子育てが大変な人のガス抜きになるような作品だったんですけれども…今、僕赤ちゃんの子育てを主婦並みにしているんですよ。そういう立場で見ると、ちょっとこのお話、少し前じゃないかな、5年くらい前じゃないかなっていう部分があって。

もう少し、現実は好転してきているというか。そういう感じがあるので、僕は置いていかれています。なんでロールプレイングなのかっていうのも、よくわからないし。『勇者ヨシヒコ』をなぞっているだけかなっていうところで、僕はハマってないです。

そんな中、亡き妻(本上まなみ)が、おっさん(塚地武雅)の姿になって生まれ変わる、小澤征悦主演の『パパがも一度恋をした』をオススメしたのは、久代アナ。

久代:面白いです。『おっさんずラブ』のような、おじさんとおじさんのコメディラブストーリーのようにも見えるんですけど、ふたを開けてみると、小澤さんが、すごく深く奥さんを愛しているという、深い深いラブストーリーになっていて、笑えるんですけど、泣ける。涙する、ほっこりする。このあと、どんどん泣ける展開になってくるような気がして。とても楽しみにしています。

梅田:いやぁ、これ本当に面白いですよね。大好きです。塚地さんが、ちゃんと本上まなみさんに見えるんですよね。これ、最後はお別れも来ちゃう…ことになるんだろうと思うんですけど、今から泣けちゃうっていう。

今期の冬ドラマは、全体に低めの評価が多く、識者の意見もかなりの辛口となった。討論後半は、忖度なしのさらなる批評が飛び出すか!?

後編は、2月15日(土)に放送。