『痛快TVスカッとジャパン』『今夜はナゾトレ』『キスマイ超BUSAIKU!?』『ネタパレ』『久保みねヒャダこじらせナイト』など、人気のバラエティ番組で演出・チーフプロデューサーを務める木月洋介。
ゴールデンタイムの王道バラエティ番組から深夜の実験的な番組まで、次々に新しい仕掛けのある番組を手掛け、32年間続いた『森田一義アワー 笑っていいとも!』のグランドフィナーレで総合演出を担当するなど、フジテレビのバラエティ番組には欠かせない存在だ。
これまでにない新しいゲームをルールから作り上げた新番組『人間性暴露ゲーム 輪舞曲~RONDO~』について聞いた前編に続き、奇跡的な復活を遂げた異例の番組『久保みねヒャダこじらせナイト』への想いを中心に聞いた後編をお届けする。
『笑っていいとも!』は新しい才能が世に出る場として最適な“装置”だった
――木月さんの番組では、テレビでは見かけない新鮮な方を起用することが多いと思いますが、人選について心がけていることは?
最近で言うと『今夜はナゾトレ』でテレビ初出演した謎解き東大生・松丸亮吾さんがそうだと思いますが、 基本的にテレビには新しい人が出演したり、活躍した方が良いという考えが 自分の中に沁みついているんです。それはフジテレビが昔から新しい才能を起用してきた歴史があって「そうすべきだ」とずっと教えられてきたことでもあるんです。
そういう意味で言うと、フジテレビのDNAなのかもしれないですね。最初に配属された番組『ココリコミラクルタイプ』(2001年4月から2007年9月まで放送)にも、大ヒット作『東京タワー 〜オカンとボクと、時々、オトン〜』を発表される前のリリー・フランキーさんもレギュラー出演されていましたから。
『笑っていいとも!』という番組は、そういうテレビではまだ見かけない新しい方に出演してもらうという場としてすごく適している“装置”でした。林修先生や、“いいともが生んだ最後のスター”と自ら名乗った久保ミツロウさんもそうで、『笑っていいとも!』からテレビの世界に出てきた人は多いですね。
『笑っていいとも!』に関しては、やっぱりタモリさんという存在が大きかったです。タモリさんがいるから面白い人が集まって来るし、その人の一番面白い部分を面白がって世の中に伝えてくれるのはタモリさんでした。
もはや執念!復活したことで進化した『久保みねヒャダこじらせナイト』
――終了した『久保みねヒャダこじらせナイト』をイベントという新しいかたちで存続させ、地上波放送に復帰させました。そのモチベーションはどこから?
1回番組は終わりましたが、「どうやったら番組を続けられるか」と、もはや執念ですね。番組が終わる理由がおそらくコンテンツ否定ではなく、深夜番組を全部閉じるというその当時の判断だったんです。なので、どうにかして続けるしかないと。
でも、そのおかげで番組が進化して発展した気もしています。これまでの収録ではNGワードが多く、放送できないことがたくさんありましたが、イベントに来てくれたお客さんには聞いてもらえるようになったので、そういう意味ではすごく良かったなと。これまでは全部お蔵入りでしたから。
イベントでは昼夜公演合わせて4時間もあるので、使えないところが多くても1時間の地上波放送分くらいなんとでもなるのも良いですね。放送禁止の内容は最大3時間までは大丈夫。だからちょっと麻痺してきちゃって、放送直前に「あれ?これってダメじゃない?」って気付いて、ギリギリで「バキューン!」という音でNGワードを消すということもあります。
久保さんが息を吸って吐くように下ネタを言うので、気付きにくくて(笑)。この番組を担当するとそのあたりの感覚がおかしくなっちゃって、コンプライアンスについては後から気付くんですよね。
――イベントのゲストも多彩で、他の番組では見れない一面を見せてくれますね。
今後もゲストについては色々な案があります。毎年、年末年始の新春SPで流す「WE ARE THEひとり」(その年にこじらせナイトがお世話になった方々が出演するMV)では、毎回「とびない旅館」の飛内源一郎さん(青森県むつ市にある旅館の主人)が手紙を読むシーンがあって、必ず久保さん、能町みね子さん、ヒャダインさんといった出演者の誰かが泣きますね。
でも、今年は千葉雄大さんが泣いていました。なぜ泣いていたんでしょう?分からないです(笑)。
ゲストでいうと、その年の「WE ARE THEひとり」をどうするかで年間のゲストを決めているところはあります。もう2月(取材時)の今から「今年の『WE ARE THEひとり』はどうしよう?」「サビは誰で、このパートは誰が…?」と。
ある年はまだラストの「咳をしてもひとり」のパートが決まっていなくて、どうしようかなと思っていたらロケ中に偶然とある方に出会って「この方だ!」ってなったり。
そういうコアな番組ファン向けの映像を毎年正月の朝5時頃に放送しています。元旦SPを放送した後はライブのお客さんも増える傾向にありますね。見てくださっている人数が通常の月イチ深夜放送とは全然違うんでしょうね。
――『こじらせナイト』を担当していて楽しいと思うところは?
現場で自分の予想外に転がっていくところじゃないでしょうか。アンガールズの田中卓志さんがゲストの回では (*FODで配信中)久保さんに「田中さんにジャンガジャンガを教えてもらうってどうですか?」と事前に相談したら、「なぜ?」と当然なりましたが、一旦考えて久保さんが「ジャンガジャンガを習う人生と習わない人生なら、習う人生がいい」と(笑)。
で、やってみたらそこから色々と面白く転がっていくんですよね。思ったように転がらない時もあるけれど、想像以上に転がる時もある、そしたらまた別の展開をカンペで提案して…それがやっぱり面白いですね。
――今後の番組の展望を教えてください。
ゲストの方々からいろんなストーリーが発展しそうな気がしています。最近は「あの3人の雰囲気に合うだろう」とは100%確証が持てないような方々にも、声をかけさせていただいています。アンガールズの田中さんや、パンサーの向井慧さんといった方です。蓋を開けてみると、神回とネット上で呼ばれるほど盛り上がりました。
芸人さんが他のバラエティ番組では見せない顔を、あのお3方の前では何故か自然と見せてもらえるというのが新しい発見でした。盛り上がりが「見えすぎてない」ゲストの出会いからも、何か新しいことが生まれていくんじゃないかって期待しています。
トークの中で話題になった方には、すぐオファーをしています。それは『いいとも!』をやっていた時から変わらない感覚です。
既にゲストで来ていただいた方にも、また来ていただいて常連さんになってもらえたらとも思っています。ハライチの岩井勇気さんと千葉さんの2ショットは、この番組ではお見せできていないですからね。(*ヒャダインと岩井で千葉を取り合う寸劇が繰り広げられている)そのピークがいつやってくるのかなとか。今後も番組とゲストには期待していてほしいです。
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