新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、現在、さまざまなイベントが中止の判断を迫られる中、代替策としてインターネット回線を使った“ライブ配信”が増えている。

TwitterやInstagramなどのSNSの機能を使った方法や、YouTubeなどの動画配信サービスを利用したもの、専用のアプリを使ったものなどが用いられることが多いのだが、ライブ配信システムを提供している企業が、少しでも主催者の負担を減らせないかと、無料でサービスの提供をスタート。取り組みの内容とは一体どんなものなのか?それぞれの特徴と狙いを担当者に聞いてみた。

自社スタジオを持ち、身一つでも配信可能!

<LIVEPARK(ライブパーク)>
https://www.livepark.co.jp/

無料提供内容
配信機材やスタッフ、配信場所などLIVEPARKの配信プラットフォーム一式

今回の無料提供を始めてから、すでに松竹芸能の芸人によるライブ配信交流イベント「虎ノ門角座」を実施。また企業だけでなく、学生向けイベントや大学のOB会などの交流会等の相談も受け付ける 。

東京・虎ノ門に自社スタジオがあり、その場所の提供から、機材、スタッフ一式が無償。また依頼があれば自イベント開催地へ出張の相談も受け付けている。 自社スタジオ利用であれば依頼から数日程度で実施も可能とのことで、スタッフが配信に関する業務を全て対応する 。

IMAGE

担当者に聞くと「イベントが中止になった方々への救済措置ではありますが、この機会に、色々なジャンルの方々にサービスを利用していただくことで、今まで自分たち(LIVEPARK)になかった発想に触れられるのでは」と前向き。無償提供ということで負担もあるが「現在、若年層(10、20代)が多いライブ配信をもっと多くの年齢層の方に身近に感じてもらえる機会」と捉えており、今春から始まる5Gを見据えて「ライブ配信はもっと増える市場になる」と期待しているという。

「日本の音楽シーンを盛り上げたい」音楽に特化したシステム

<MUSER(ミューザー)>
https://info.muser.link/

無料提供内容
MUSERのシステムと配信ノウハウと、必要であれば機材、スタッフも提供

主催側で機材が揃っていれば、配信システムのレクチャーのみも可能でその場合は、相談から1日というスピードで対応も。特徴は、音楽に特化しているために音響機材が充実していることと、視聴者が希望すれば金銭を支払うことができること。ライブ配信自体をチケット制にして、視聴者から代金を徴収でき、いわゆる“投げ銭”と呼ばれる、ユーザーがポイントを買って課金できるシステムも導入(MUSERでは“100YELL”100円から購入可能)している。

IMAGE

常時より「日本の音楽シーンを盛り上げる」というモットーに掲げており、担当者は今回の問い合わせも音楽関係が多いと話す。SNSの機能を使ったライブ配信は比較的頻繁に行われるようになっているが、手軽というメリットに反して、映像・音声などのクオリティが低いというデメリットを抱えるため、MUSERではその点で利用価値が高い。

無償提供のメリットについて「日本でもっと音楽のライブ生配信というものを知ってもらいたいですね。海外では進んでいて、このままだとクラウドのときのように、海外勢に追随されてしまうかもしれません。この機会に使ってもらって、リアルなライブとは違う、ライブ配信のメリットも感じてほしい」と言うだけに、音楽でのライブ配信に興味がある方は、音の“質”をチェックしてみてはいかがだろうか。

全世界で4200万人ユーザー抱え多角的にフォロー

<17 Live (イチナナライブ)
https://17media.jp/

無料提供内容
17 Liveのシステム (サービスの利用は元々無料) と、必要であれば機材とスタッフも提供

今回の無料提供を始めてからDJ KOOが配信を実施。他にも格闘技イベント、音楽ライブなどのサポートをすることを発表済み。

基本的に配信も視聴も無料だが、“ギフティング(投げ銭)”機能があるので、ユーザーがアプリ内課金で有料ギフトを購入し、それをライブ配信者に贈ることで配信者が収入を得ることも可能だ。

IMAGE

担当者は今回の取り組みで「もっと多くの方々にライブ配信を知ってもらいたかったんです」と話し、「知ってもらって、使ってもらうことで、良さがわかる」と自社のサービスに自信を見せる。

特に17 Liveでは“ライバープロデューサー”というスタッフが常駐。会場での回線のつなぎ方などの細かなフォローはもちろんのこと、イベントの作り方、コンテンツの見せ方など、どうやったらよりお客さんに楽しんでもらえる、興味を持ってもられるものになるかをトータルでアドバイスする。そのため、ライブ配信初心者でもクオリティの高い配信ができ、ユーザー側もライブ配信の新たな可能性を感じることができる。

ライブ配信の普及の好機となるか?

今回の取材を通して、各社の担当者が口をそろえて言っていたのは、損害を受けているイベント主催者たちを助けたい、という思いと同時に、この機会にライブ配信のメリットを感じてほしいということ。

現状の日本では、ライブ配信をすることによって、実際に会場に足を運んでくれる人が減るのでは?という懸念もあり、あまり積極的に取り入れられていない部分がある。また広く普及しているSNSなどの配信システムだと映像や音声のクオリティを主催者が求めるものに保つことが厳しいところもあり、その点でも消極的だ。

ただ、今回の取材でもわかったところだが、日々、システムは進化していて、新しいサービスも続々と始まっている。特に、今春から導入となる5Gが普及することで、クオリティの部分ではかなりの進化がありそうなだけに、現状のリアルな現場、TV放送、パッケージ化などの他に、このライブ配信が加わってくる可能性も十分に考えられる。

IMAGE

MUSERではすでに料金を支払ったユーザーだけが見ることができるチケット制を導入しており、他のサービスでも“投げ銭”と呼ばれる、ユーザーがポイントを購入し、それを主催者にプレゼントという形は一般的になりつつある。ライブ配信=無料というイメージが大きかったが、ライブ配信がイベント主催者たちの収入源となることが普及すれば、今回のようなイベント中止における損害も間逃れるかもしれない。

イベントが中止になり、残念な気持ちを抱える人も多いと思うが、こんなときだからこそ、ライブ配信という新たなツールを利用してみて、これからの新しいイベントの楽しみ方と試してみるのはどうだろうか。