シンガーソングライターの青葉市子さんが、一昨年に続き、宮川大助・花子のドキュメンタリーの“語り”を担当します。
青葉さんが読むのは、『ザ・ノンフィクション「花子と大助~余命宣告とセンターマイク 夫婦の1400日~」』(4月17日14時~/フジテレビ※関東ローカル)。
夫婦漫才コンビ、宮川大助・花子の花子さんのがん闘病と、そこに常に寄り添い、全身全霊で支える夫・大助さんの物語です。「本当に温かい気持ちになりました」と青葉さんも話すほど、過酷な中にも、前向きでポジティブなエネルギーにあふれた日々が描かれます。
また、4月17日(日)12時より、今回の放送の前段となる<サンデードキュメンタリー>『ザ・ノンフィクション特別編「花子と大助 〜余命宣告からの夫婦1400日〜」』がBSフジで放送されます。
「再びセンターマイクの前に立ちたい」花子の願いはかなうのか?
今から4年前、夫婦漫才コンビ、宮川大助・花子の花子さんは、「余命半年」の宣告を受けました。
コンビ結成から43年、結婚生活46年。今ではめずらしい、夫婦でのコンビ芸人。
漫才師としての確固たる地位を築き、2017年には紫綬褒章を受賞、名誉も手にしたおしどり夫婦です。
しかし、その道のりは、順風満帆というわけではありませんでした。花子さんの胃がん、大助さんの脳出血と腰の大手術…何度も生死の境をくぐり抜けてきた2人。そして今、花子さんが闘っているのが「症候性多発性骨髄腫」。血液のがんです。
全身にがんが転移し「あと1週間遅かったら死んでいた」と医師に言われるほどの状態から始まった治療。「余命半年」と宣告を受けた病状は、奇跡的な回復を見せ、花子さんの体からがんが消えていきます。
そんな花子さんが苦しい治療とリハビリに耐えるのには、理由がありました。
「もう一度、なんばグランド花月のセンターマイクの前に立つこと」
かつて大助さんが倒れた際は、夫が戻るべき場所として、花子さんがひとりで守った「センターマイク」。今は初めて自分のために「再びセンターマイクの前に立ちたい」と願っています。
芸人の命でもある「話術」は戻りつつあるものの、自分の足で立ち、漫才をやりきるだけの回復までには、まだまだリハビリを続ける必要があります。
花子さんの願いはかなうのでしょうか。夫婦でがんと闘う4年をカメラが見つめました。
そんな日々にナレーションという形で寄り添ったのが、青葉市子さん。「ナレーションをしている現実を忘れるほど、見入ってしまう瞬間があった」という青葉さんに収録後、話を聞きました。
大助さん、花子さんに人生をわけてもらった感じがする
<青葉市子 インタビュー>
――今回、『ザ・ノンフィクション「花子と大助~余命宣告とセンターマイク 夫婦の1400日~」』のナレーションを担当していかがでしたか?「花子と大助」の回を読むのは、2年ぶりですね。
どんな困難も一緒に乗り越えていくお二人の姿を見ていて、本当に勇気づけられましたし、読んでいてもウルッとする瞬間がありました。本当に温かい気持ちになりました。
番組は、密着という形で取材されていますけれども、カメラが回っていないところでも、ずっと支え合って頑張り続けているお二人でしょうから、そういった時間を想像しながら読みました。
――前回と今回で、何か変化は感じましたか?
前回は、闘病の場面が多く、本当にどうなってしまうのかわからないという中でのストーリーだったので、読んでいる私も、心配しながら、というのがありました。それでも、ありのままの二人の姿を伝えなければ、と思い、読んでいました。
今回は、(病状の回復が見られたので)ちょっとほっとした、少し安心した気持ちで読むことができました。
――収録しながら、思わず吹き出してしまう場面もありましたね。
はい、笑っちゃうところがありましたし、みなさんで「よ~おっ!」と一本締めしたり、拍手をしたりする場面では、私も一緒に手を叩いていました(笑)。
それはあまりに美しい…美しいといったら簡単な言葉になってしまいますが、お二人が紡いだり、支え合ってきたりした時間で、それを見守っている人たちのことを考えながら見ていたら、自分がナレーションをしているという現実を忘れるくらい、じっと見入ってしまう瞬間がありました。
(しゃべり出しの合図の)キューが光っているのを忘れることがあるくらい、素晴らしい時間を見せていただきました。
――改めて大助さん、花子さんの夫婦の絆をどうご覧になりましたか?
夫婦、パートナー、思いやっている人同士…呼び方や形式はなんであっても、誰かを大事に思って一緒に生きていこうとしている間柄の人たちの、境界線があいまいになっている感じ…。
大助さん、花子さんは、肉体的には個々であるのだけれども、支え合っていくうちに、精神的なところで、どちらがどちらか分からなくなるほど混ざり合って、そこで支え合っているということに、とても胸を打たれました。
よく「人はひとりじゃない」と言いますが、今日こうやって初めて会ってお話している間柄でも、空気中を見れば、どちらが吐いた息かもわからなくなりますよね。
それを何日も何十年もともに生きて、支えっている人たちの絆というのは、もうひとつの塊になっているように見えて感動しました。
――そういった思いが、歌への刺激になることはあるでしょうか?
それはもちろん、大きく影響すると思います。ちょうど今、音楽を作っていて、次のアルバムでやりたいと思うことがあるのですが、そことも重なるものがありました。
私は頭の中で物語を書きますが、今回のお仕事を通じて、大助さん、花子さんに人生をわけてもらった感じがありますので、お二人(の影響が)が入ってきて、それが(音楽という形となって)後に世に出ていくんだろうな、と思うと、みんなでエネルギーを共有できるようで幸せだな、と思います。
――花子さんは、強く望んだ舞台復帰を「センターマイクに戻る」と表現していました。青葉さんにとって、センターマイクのようなものはありますか?
やっぱり私にとって音楽は、センターマイクと同じような存在であり、舞台ですね。
どんな精神状態であっても、ステージに上がってマイクを前にすると…私の場合は、ギターを構えますが、そして、「あ」と一音発した瞬間に…何というのでしょうか、絶対的に守られているような感覚を得られるんです。
私はこれまで大きなけがをしたり、大病をしたりしたことはないですが、何かで体が動かなくなったり、すごくつらいことがあったりしても、真っ先に戻りたいと思うのは、音楽があるところであり、歌が歌える場所なんだと思います。
お二人にお会いしたことはないですし、花子さんの車いすを押したことももちろんないですが、一緒にステージに向かうようなつもりで「頑張って!」という気持ちでした。
――最後に視聴者のみなさんにメッセージをお願いします。
人生を長いという人もいますけど、地球の流れとかからしたら人の一生は短いもの、本当にかけがえのない一時だと思います。
命あるうちに、頼れる人に思いっきり頼って、思いっきり愛して、生きていけたらいいですね。私もそうして生きていきたい。そういうことを番組から感じ取ってもらえたら幸せです。
<ナレーションの一部をご紹介>
公式HP:https://www.fujitv.co.jp/thenonfx/index.html