今年3月、第45回アカデミー賞の新人俳優賞と優秀助演女優賞をダブル受賞した西野七瀬さん。

これまで、ドラマ『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ)や『あなたの番です』(日本テレビ)、映画「孤狼の血 LEVEL2」などに出演。2021年には、劇団☆新感線による「月影花之丞大逆転」で舞台に初挑戦しました。

そして、5月10日より上演される舞台「『みんな我が子』-All My Sons-」への参加が決定。第1回トニー賞を受賞、その後、世界各国で上演されているアーサー・ミラーの名作に挑みます。

<堤真一、森田剛、西野七瀬らが傑作戯曲に挑む「自身の生き方と照らし合わせてドキッとする人もいるかも」>

フジテレビュー!!は、西野さんにインタビュー。舞台「月影花之丞大逆転」への出演で得たものや舞台そのものへの印象、芝居に対する思いなどを聞きました。

<西野七瀬 インタビュー>

映像作品にはない「全部出す!」という感覚

──まずは、舞台「みんな我が子」への出演が決まったときの心境をお聞かせください。

私はまだ、1度しか舞台への出演を経験したことがなかったので、声をかけていただけて驚きました。こんなに早く舞台の話をいただけるとは思ってもいませんでした…。

──前回出演した劇団☆新感線の「月影花之丞大逆転」で、映像と舞台でのお芝居の違いは何か感じましたか?

新感線の作品では「引く」感じがなく、「全部出す!」という印象で、それは映像にはない感覚でした。

例えば、自分に対して言い聞かせるようなセリフでも、全部前に出さなきゃいけないという。そこは映像と違うなと思いましたね。

──違いを感じながらも、前回は公演初日を迎えてから、楽しむ余裕が出てきたとか。

そうですね。初日の1回目の公演をやっている最中からもう楽しくて。終わった直後に共演者の方と「めっちゃ楽しいですね」って話していたくらい(笑)。「お客さんがいて、完成する」ってこういうことかと、そこで初めて実感しました。

人に恵まれているので「今回も大丈夫!」

──公演を終えて、西野さんの中で舞台の存在はどのようなものになりましたか?

映像の時とは全然違うことをたくさん知れたので、すごく刺激になりました。舞台は毎日同じ物語を演じますよね。映像では1回言ったセリフは基本的にしゃべることがないので、そこはすごく大きかったです。

「今日はちょっとダメだったな。次の公演ではこうしよう」と思ってやると、今までノーミスだったところを急に間違えたりすることもあって(笑)。そういう繰り返しが、前回の舞台ではすごく楽しかったです。

それに、共演した皆さんが話していらしたのですが、「誰かミスれ!」とハプニングを待っているそうなんです。何事もなく始まって、終わることももちろんいいけど、誰かが間違えると、長年舞台をやられてきた方々は楽しくなるそうで。それはナマモノだからこそのハプニングですから、間違えたところを見られたら、お客さんもレアで楽しいという。

映像では、そういう感覚を味わうことがなかったので、本当に新鮮でした。

──「誰かミスれ!」と思っていたというのは、出演されたのが新感線のコメディ作品だったから、ということもありそうですね。

確かにそれはそうですね。いのうえ歌舞伎(※)だと話は別ですが、私が出演した「月影花之丞大逆転」は、本番中も結構皆さん笑っちゃっていたんですよ。

※劇団☆新感線による、神話や史実などをモチーフとし、ケレン味を効かせた時代活劇のシリーズ

──初めてがそういった楽しい経験だと、やはり舞台にも飛び込みやすいですか?

そうですね。演出家さんに怒られる、怖いものというイメージがずっとあったので、初めての舞台が新感線でよかったと思っています。

「みんな我が子」は、「月影花之丞大逆転」とは物語のジャンルが違って、また初めてのことがたくさん詰まっていると思いますし、不安は大きいです。でも、私自身の人生、人に恵まれていると感じているので、今回も大丈夫だと思います!

芝居を続ける原動力は身近な人の何気ない言葉

──「みんな我が子」の台本を読まれた感想をお聞かせください。

もともと本を読むのが得意ではないので、より難しく感じました。80年前のアメリカが舞台ということもあって、感情の起伏もなかなか理解できなくて。さっきまで怒っていたのに、急に優しくなるとか…すごく目まぐるしいですね。

──共演されるキャストの皆さんの印象はいかがでしょうか?

舞台経験の多い皆さんの中に、私がいることが変な感じです。本当に大丈夫かな、と。

そんな皆さんの中でも、堤(真一)さんは関西出身という共通点があるので、そこからお話を広げていけたらと思っています。他の役者さんから聞いたお話でも、気さくな方みたいで、安心しています。

森田(剛)さんとは2人のシーンが多いので、本番までにいい関係を築けたらと思っています。

──近年、出演作が多く、さまざまな役柄を演じられている西野さん。今、お芝居は「楽しい」ですか?「大変」ですか?

どっちもあります。どちらかと言うと、うまくできることのほうが少ないかなという感じでしょうか。でも、その比率でいいのかな。作品ごとにいろいろな出会いもあって、楽しめているので。

──その中で、役者を続けるモチベーションになった出会いや、原動力になっている言葉はありますか?

私、基本的に楽観的ではあるんですけど、「このままでいいのかなぁ…」と思っちゃうこともあって。そういうときに思い出すのは、一緒に仕事をした監督さんや、身近なスタッフさんから言われた「向いてると思うよ」「これからだと思うよ」という言葉ですね。

何気ない言葉だとは思うのですが、「もう少し頑張ろう」と思えるというか。そういってくださる皆さんにお返ししたい思いもありますし、「そうやって期待してくださるなら」と頑張る力が湧きます。

念願の初スノボでコケすぎて「筋肉痛に(笑)」

──プライベートの話もうかがいたいのですが、最近始めたことはありますか?

少し前の話になりますが、初めてスノーボードをやりました。ずっとやりたいとは思っていたのですが、スノボをやっていて車の免許を持っている友だちがいなくて。

そこで兄の存在を思い出したんです。兄はスノボが滑れるし、教えるのも上手だし、何よりも身内だったら気を使わなくていいなと思って(笑)。お願いしたら、連れて行ってくれました。

──初スノボ、いかがでしたか?

汗だくになって、すごく疲れましたけど、めちゃめちゃ楽しかったです。1回目はもう…ありえないほどコケました(笑)。起き上がるときに雪をグッと押す筋肉を使いすぎて、左腕が上がらなくなるほどの筋肉痛です。でも、2回目以降はあまりコケずに滑れました!

──習得が速いですね。

最初はできないと思っていたのですが、兄から「自転車に近いよ」と言われていて。1回乗れちゃうと、もう乗れるという。その感覚は実感しました。

──妹のスノボに付き合ってくれるお兄さん、ステキですね。

本当にいい兄です。気を使うことなく存分に教えてもらいつつ、楽しめたのは兄のおかげですね。もうシーズンが終わってしまったので、また来シーズン滑りに行きたいです!

──西野さんは以前の取材で「2022年は自分の時間を充実させたい」と話されていました。もうすぐ5月ですが、いかがですか?

スノボに行けたこともそうですし、割と充実させることができている気がします。その取材の際に、「謎解きに割く時間を増やそうと思う」とお話しましたが、謎解きのイベントもかなり行っています。

あと、最近、時間があるときは歩くようにしていて。のんびり歩いて遠くの神社やお寺に行くこともあります。

撮影:今井裕治

<舞台「『みんな我が子』-All My Sons-」作品概要>

出演:堤真一、森田剛、西野七瀬、大東駿介、栗田桃子、金子岳憲、穴田有里、山崎一、伊藤蘭

東京公演:5月10日(火)~30日(月)/Bunkamura シアターコクーン
大阪公演:6月3日(金)~8日(水)/森ノ宮ピロティホール

最新情報は、COCOON PRODUCTION 2022 DISCOVER WORLD THEATRE vol.12「『みんな我が子』-All My Sons-」公式サイトまで。

<あらすじ>

第二次世界大戦後の特需景気に沸くアメリカ合衆国の地方都市の夏のある日。

ジョー・ケラー(堤真一)は、飛行機の部品工場を経営し、戦争特需によって財を成し、家族で幸せそうに暮らしていた。しかし、戦争で行方不明となり、いまだ帰還しない次男ラリーの残像が、妻ケイト(伊藤蘭)をはじめ家族に暗い影を落としていた。

嵐の次のある晴れた朝。ジョーと隣人のフランクとドクター・ジム(山崎一)が談笑している。

しかし、前夜の強風により、ラリーの記念樹が倒れてしまい、ケイトは不吉な予感に錯乱気味であった。そこに一家の幼馴染のアン・ディーヴァー(西野七瀬)が数年ぶりにケラー家を訪ねてくる。

長男クリス(森田剛)は、還らぬラリーの婚約者であるアンに密かに恋焦がれ、互いに弟と婚約者を失ったもの同士、躊躇いながらも次第に心を通わせていく。

そこへアンの兄ジョージ(大東駿介)の突然の来訪──。
実のところケラー家とディーヴァー家には深い確執があり、ケイトがラリーの死を信じない本当の理由の根本もそこにあったのだ。

家族の知らない、知られたくない真実が語られ始める──。