編集部おすすめの“麗しい男性”を紹介する「眼福♡男子」Vol.89は世古口凌(せこぐち・りょう)さんが登場。
映画「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005年)を観て俳優を志し、養成所へ。しかし、卒業後に各芸能プロダクションへ履歴書を送るも順調に…とはいかず、99社目で現在の事務所へ所属が決まったという苦労人です。
その後、舞台『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-』Rule the Stageシリーズ(以下、ヒプマイ)の飴村乱数役や、『機界戦隊ゼンカイジャー』(テレビ朝日系)のステイシー役で人気に。そんな世古口さんが1st写真集「戀紫」をリリース。念願だったという写真集に込めた思い、そして、25歳の“今”をインタビューしました。
俳優という職業に“戀”しています
――写真集の制作が決まった時の心境から聞かせてください。
写真集をリリースすることは、芸能生活を始めてから一つの目標であり、ずっと願っていたことだったので、やっとそこにたどり着けたという気持ちです。そして、ある程度認められないと出せないものだと思うので、自分のことを少しは認めていいのかなっていう心境になりました。
――タイトルの「戀紫(こいむらさき)」にはどのような意味があるのでしょうか?
昨年、『機界戦隊ゼンカイジャー』のステイシーという役と出合い、彼が身につけている衣装の紫は1年間背負ってきたカラーでもあるので、とても思い入れがあって。調べてみると、紫には神秘的や高い美意識などの意味があり、僕を表している色だと感じたんです。そして、紫は赤と青を混ぜてできる色で、僕のひねくれた性格もいろんなものが混ざってできたものなので、ピッタリだと思ってタイトルに「紫」を入れることにしました。
――「戀」のほうは?
俳優という仕事に僕が恋心を抱いているという意味もありますし、僕を応援してくださる皆さんの想いを一文字で表すとしたら「恋」がふさわしいのかなと。旧字の「戀」にしたのは、古き良きものが好きなことや、僕が現代社会に対して不満を抱えて生きているので(笑)、そんな“ひねくれ精神”をふまえて、旧字を使いました。僕という存在をよりアピールしていきたい、紫をもっと濃くしたいという意味での“濃い紫=戀紫”という意味も含んでいます。
――今日の取材に使用したスタジオにも昔の黒電話があり、興味津々で手にしていましたが、古いものが好きなんですか?
喫茶店が好きなんです。流行りのオシャレなカフェよりも、昔ながらの純喫茶。心地よさを求めてくる人たちを見るのも好きだし、歴史のある建物などを見るのも好きです。
――世古口さんも写真集へのアイデアを出したのでしょうか?
和の要素をとり入れたいと思ったので、和室で畳の上に横たわっているカットを提案させていただきました。衣装もそれに合わせた和風のテイストにして、日本人としての誇りを表現したつもりです。
――和室でのカットは、肌を露出したセクシーな写真もありますね。
トレーニングはやっておかなきゃと思ったので、去年の夏ぐらいから準備しました。でも、あまりムキムキになっても僕のキャラクターと合いませんし、戦隊ものの撮影中で、衣装のサイズが合わなくなると困るので、ちょっとだけ男らしい体つきになれたらと思って鍛えました。普段、甘いものが好きでよく食べますし、太りやすいタイプなので、食事には気を付けましたね。
「25歳の男性でガーリーなカットを撮れる人はいない」と表紙に自信
――撮影の感想を聞かせてください。
2日で撮ったんですが、2日間とも天候に恵まれてスムーズに行うことができました。特に印象に残っているのは、海で撮ったカットです。想像以上に寒くて、全身が麻痺するような痛みを感じましたが、そのうち痛みを感じなくなった瞬間があったんですよ。それだけ撮影に集中していたんでしょうけど、その時は無敵だなと思いました。
――世古口さん自身のお気に入りのカットは?
表紙の写真は特に気に入っています。カラフルな大判のマフラーを顔から頭にかけてグルっと巻いた僕のアップなのですが、現在の25歳の男性俳優で、こんなガーリーなカットを撮れる人はそうそういないと自負していますし、他の皆さんの写真集とかぶらないと思って、このカットを表紙に決めました。
――どんな人たちに写真集を見てほしいですか?
日本に限らず、世界中の方たちに届くといいなと思います。僕のことを知らなくても、書店でたまたま通りかかって気にしてくださる方がいたらラッキー。そんな方たちのことを意識して表紙もタイトルも決めたで、僕を知ってもらえるきっかけになればうれしいです。
――なんでも海外からも予約が入っているそうですよ。
そうなんですか!?SNSにもいろいろな国の言葉でメッセージがきて、ビックリしました。国境を超えましたね(笑)。
泣き虫で何をやっても続かない自分を変えるため芸能界へ
――俳優を志したきっかけを聞かせてください。
「ALWAYS 三丁目の夕日」という映画を観たことがきっかけで、興味をもちました。実際、そこに向かって動き始めたのは高校生のころです。とにかく泣き虫で、何をやっても続かない自分がすごくイヤで、そんな自分を変えるために芸能界でもがいてみようと思いました。
――どのようなことから始めたのでしょうか?
19歳で俳優の養成所に通い始め、演技を2年間学びました。思い返せば日々戦いの連続で、僕の場合、まず挨拶ができなかった。「おはようございます」が言えなかったといいますか、大人に対して頭を下げたくなかったんです。そんな“ひねくれ精神”からスタートしたので、先生にはたくさん叱られ、叩きのめされ、すべてを否定されました。生徒同士の裏切りもたくさんありましたし、いがみ合いなどずっと何かを抱えていました。
――そこから意識が変わったのは何かきっかけがあって…?
僕がバカだったんですよ。学校の勉強もしていなかったし、まともな社会生活も送っていなかった。このままだと僕は俳優になれないと気づいたんです。それって、もともとの目的に一番反していることだから、一度自分を見直さなければと考えを改めました。
――心が折れそうになることもありましたか?
メンタル的に最もヤバかったのは、芸能事務所へ所属するオーディションを98社連続で受けたです。毎日、履歴書を書いてはその事務所へ行き、面接を受けての繰り返しで、トータル3ヵ月ぐらいかかったのかな。そこで芸能界の厳しさを知りました。演技だって2年間レッスンをうけてきたのに、その時間は何だったんだろうって落ち込んで、自宅のトイレにこもって3時間泣きました。
――そこからどうやって立ち直ったのでしょう?
泣きはらした後、ここで諦めてしまったら僕の人生は終わると思ったんです。即、親友に連絡して、「今から別の事務所を探すから、応募用の写真を撮ってくれ」と頼んで。その時に撮った写真を送って、99社目で現在の事務所に所属することが決まりました。
マイブームは弁当屋通い。目指すは全種類制覇!
――“ひねくれ精神”というワードが何度か登場しましたが、自己分析するとどのような性格ですか?
“ひねくれ素直”です。基本的にはひねくれていて、みんなが「そう思う」ということに対し、「僕はそう思わない」と言ってしまう。だけど、自分が悪いと思ったら素直に「ごめんなさい」と謝ります。そんな性格だけど、“愛”はしっかりもっているという自覚があります。愛をもって仕事をしているし、人にも接している。そこまで闇を抱えた人ではありません(笑)。
――休日の過ごし方を教えてください。
映画を観たり、本を読んだり、行きつけの洋服屋で何時間も語ったり。あまり家にはいませんね。最近観た映画だと「ウエスト・サイド・ストーリー」と「シラノ」が面白かったです。
――マイブームはありますか?
いつも行っているお弁当屋さんで全種類を制覇するべく、毎日通っています。お弁当ブームなので、自炊はほとんどしていません。
――約1年にわたって戦隊ものに出演しましたが、自身の変化・成長をどのように感じていますか?
変なトガりは取れたかな。最初のうちは共演者に対してライバル心みたいなものがありましたが、ずっと一緒にいることで仲間意識が芽生えました。映像作品に1年間出演することも初めてだったので、僕にとって大きな経験になりました。
――そんな世古口さんにとって眼福な存在は何ですか?
緑豊かな自然を見ることです。写真集の中に大自然の中で撮ったカットもあるのでぜひチェックしてください。
――お気に入りの写真について聞かせてください。
みなとみらいの夜景です。僕は横浜出身で、この景色が大好きなんです。これはぴあアリーナMMで行われた「ヒプマイ」のライブ前日、友だちと撮った写真ですね。
ぴあアリーナMMが完成する少し前、僕は何をやってもうまくいかない時期で、死んだ人間のように横浜とみなとみらいをつなぐ通路を歩いていました。そして、それから約2年が経ち、「ヒプマイ」ライブでぴあアリーナMMのステージに立っていた。同じ道を歩いているのに、気持ちがまったく違うんですよ。状況や環境が違うだけで、ここまで意識が違うんだと驚かされました。
――理想とする俳優像はありますか?
「こうなりたい」という明確な目標は決めていないのですが、「なんか面白いね」と言っていただけるような俳優、自由奔放な俳優になれたらいいなと思っています。
<世古口凌 メッセージ&撮影メイキング>
撮影:河井彩美