富田望生さんが、自身3度目となる『ザ・ノンフィクション』の“語り”を担当しました。
今回、富田さんが読んだのは、『ザ・ノンフィクション「生きることって… ~山とマタギと私たち~」 』(3月13日14時~/フジテレビ※関東ローカル)。
獲物の命を奪い食べること…マタギの第一人者のもとで修行を続ける27歳の若者たち。”生きること”とは何なのか…都会を離れ、山中で猟銃を抱えクマを追う彼らの1年の物語です。
<『ザ・ノンフィクション』の関連記事>
<富田望生 認知症の父を気丈に介護する17歳の息子に「言葉を選ばずに言うなら…『なんていいやつ!』」>
「生きることの意味」を求めて集う若者とそれを温かく迎える老マタギの一年
秋田県の山村に、猟銃を持った永沢碧衣さん(27)が向います。永沢さんが訪ねたのは、マタギの里。マタギとは独自のしきたりを守りながら集団で狩猟を行う人々。その頭領である鈴木英雄さん(74)のもとで、修行を続けています。
幼い頃から自然が好きだった永沢さんは、美術大学を卒業後に就職。東京の飲食店で働いたものの、自然と触れながら絵を描きたいと故郷へ戻りました。そこでマタギと出会い、猟をするように。「生き物を殺して食べる」ということがどういうことなのかを知りたかったのです。
大阪大学で「脳細胞の研究」をしていた山田健太郎さん(27)は、周囲が当然のように就職していく中で「マタギになりたい」と単身、マタギの里に移住してきました。
そんなふうに、今、マタギの第一人者である鈴木さんのもとに、若者が続々と修行に集まっているのです。彼らの出現に「マタギは自分の代で終わり」と覚悟していた鈴木さんは驚きました。
代々、マタギを受け継ぎ9代目に当たる鈴木さんの息子は、今は町に出て会社勤め。マタギの里も高齢化と人口減少のために、後継者がいないのです。そこへ都会から集まってくる20代の若者たち。
彼らは、「生きることの意味」を求めて集うのです。そんな若者たちを温かく迎える老マタギと、彼を師と仰ぐ若者たちの1年に密着。
大自然の中で繰り広げられる臨場感あふれるやりとりを、「私も田舎出身」という富田さんは、どう見たのでしょうか。収録後に聞きました。
本気で命をいただきに行こうとする人たちの映像は衝撃的に映った
<富田望生 インタビュー>
――ナレーション収録を終えていかがですか?
力が入りましたし、手に汗握りながら読んでいました。自然の中で動物と向き合って生きている人たちというのは、自分の中で共感しにくいといいますか、パッとすぐに理解できるような題材ではなかったので、そこは初めてマタギという人たちを学ぶ一人の人間として読ませていただいた、という感じでした。
――力が入ったのはどんなところですか?
(動物の)命をいただく瞬間は、事前に原稿を読み、映像も見ていたので、そういった場面がないのはわかっていましたが、それでも、本気で命をいただきに行こうとする人たちの映像は衝撃的に映りました。
私と同じような世代、それよりも下の人たちにとっては、”知らない世界”だと思います。そこを分かりやすく伝えるというのはありながらも、自分が感じたちょっとした恐怖心、猟へ向かうマタギの人たちの動物への感謝、愛情…そういったことを含めた、いろんな感情を合わせながら読まないといけないと思い、命に向き合う場面では、すごくドキドキして手汗をかきながら読みました。
――生きていることの実感を求めてマタギのもとに集う若者の姿は、富田さんにはどう映りましたか?
私も行き詰まることは結構あります。今、やりたいことがやれていますが、今後、お金や生活のことも考え、どうバランスを取っていくか、というのは、自分の中での課題だな、と思っていて。
私は田舎の出身で、その辺に生えている山菜を採って食べていたような子ですが、今、自然の恵みといえば、スーパーでしか手に入れていない状態なので、(命を身近に感じるような)“生きている”という実感は、自然とは離れた場所で感じているのかな、というのがあります。
私も自然が好きですし、自分で作物を育て、それを食べたりすることで得られる“生きている”という実感は、今でもちょっと欲しているものだな、と思いました。
――行き詰まるというのは、お仕事ででしょうか?
お芝居で行き詰まることはあんまりなくて。それより、これほどインターネットやSNSが発達している中でも、コロナ禍ということもあって、面と向かって何かを伝え合うことが減り、自分の気持ちを相手にどう伝えて、どう関係を築いていけばいいのか、いただいた縁をどうつないでいけばいいのか、そんなことで悩むことがあります。
結局、人間が動かしている世界なので、人としっかり向き合っていかないと生き抜くことができない。相手の気持ちを理解できなければ、いい作品もできないんじゃないか、っていうのを、コロナ禍になってさらに考えている気がしています。
家族ともそうですし、友達ともそうですし、お仕事関係の方ともそうなんですけど。人が自分の気持ちを伝え合うっていうことから離れないといいな、というのは思っています。
自身にとっての“師”は、デビュー作で出会った成島出監督
――永沢さんにとっての英雄さんのような、師匠や、尊敬する先輩はいますか?
デビュー作(映画「ソロモンの偽証」)の監督の成島出さんです。それこそ息づかいから、声のトーンまで、一つひとつすべてを教えてもらった方です。それも、「こうしなきゃダメだよ」というのではなく、「こうやって見つけていくんだよ」というふうに導いてくださいました。
あれから7年以上経ちますけど、あの頃教わったこと一つひとつが、今でもお芝居をする瞬間に聞こえてくるというか。師匠といいますか、盗めるものは全部盗みたい、取り入れたいと思ったのは、成島さんかな、と思います。
――最後に視聴者の皆さん、ファンのみなさんにメッセージをお願いします。
生きることの意味を必死にもがきながら探しに行った結果、マタギという世界に出会った若者たちの物語です。
マタギという人々を「遠いな」と感じても、どこか共感できる部分、自分と繋がってる部分、そこから派生して感じとれるものはきっとあると思います。
動物の命をいただくっていうことに対して、ちょっと衝撃的に感じられる方もいらっしゃると思うんですけど、ずっと昔からああやって生きてきたからこそ、今の私たちがあるっていうことを認識するのはとても良い機会だと思います。特に同世代の方に見ていただきたいなと思います。