近田春夫さんの生誕70年、音楽生活50年を記念して昨年11月に放送され、大きな話題を呼んだ『近田春夫論2021-近田春夫とは何なのか?-』が、BSフジで再放送されます。
<近田春夫は日本音楽史上もっともポップで難解な存在!?自他ともに認める天才に小泉今日子が迫る>
<近田春夫とは何なのか?日本のカルチャーを代表する面々が語り定義する番組が登場!小泉今日子が本人を直撃>
小泉今日子さんが近田さん本人に話を聞き、秋元康さん、川崎徹さんらが語り、藤原ヒロシさん、石野卓球さん、高木完さんらが定義する――日本の音楽カルチャー史上、一番POPで難解で、そして一番「いけない男」の全貌。
再放送にあたり、安田謙一(ロック漫筆)さんより、番組評が到着しました。
『近田春夫論2021-近田春夫とは何なのか?-』は、3月26日(土)25時より、BSフジで放送されます。
面白くってあたりまえ。近田春夫論の論。
安田謙一(ロック漫筆)
近田春夫の生誕70年、音楽生活50年を記念して制作された特別番組『近田春夫論』は、昨年11月にBSフジでオンエアされ大きな話題を呼んだ。
1989年、珠玉のハウス歌謡「Fade Out」で歌手として、作詞・作曲・編曲家/プロデューサーである近田とタッグを組んだ小泉今日子がインタビュアーをつとめ、さまざまな質問をぶつける。
さらに、テレビ番組で「星くず兄弟の伝説」の熱唱シーンなど貴重なフッテージも多数使用されている。
加えて、番組全般を通して、さまざまな人物たちが「近田春夫とは〇〇である」と、それぞれの私論を語る、という1時間番組だ。
私ならなんと答えるだろう……と考えたのは、当然のはなしである。
79年にCBS・ソニー出版から刊行された「ビートルズ・サウンド」という本がある。東京ロッカー/プロデューサーのS-KENこと田中唯士が編集に携わった音楽書で、名著の誉れ高き一冊。名著の根拠は数あるけれど、
そのひとつがディスコグラフィ。ビートルズの各アルバムを複数の書き手が担当しているのだが、この人選と、作品のマッチング・センスが絶妙なのだ。ここで近田春夫はアルバム「リヴォルヴァー」について書いている。
音楽家としての近田春夫のキャリアを語りはじめると、ハルヲフォンで日本語のロック/歌謡曲の可能性を突き詰め、ビブラトーンズでニューウェイヴの軽さを極め、プレジデントBPMで日本語ラップを開拓、ビブラストーンでそこにグルーヴの快楽を追求、さらにトランス・ミュージックの妙味に目覚め…と目まぐるしく繰り返された変化を列挙することになる。
この「飽きっぽさ」、「執着のなさ」はどこから来るかというと、興味を持った対象がどうやって成り立っているのかを、そしてその本質(キモ)を天才的な勘で瞬時に把握し、実践してしまう、というスピードのなせる業なのである(投げた球を打ち返す、CM音楽との相性の良さもここにある)。
それはまるで、デビュー・アルバムとして「リヴォルヴァー」を作っちゃって、「サージェント・ペパーズ」を作る前に解散しちゃうビートルズみたいなものなのだ。
ということで、私にとって近田春夫とは「リヴォルヴァー」である。
てな、こんな文章は20世紀にも書くことが出来たかもしれない。
08年、大きな病から奇跡的に生還してからの、21世紀の近田春夫はまた一味も二味も違う。近田春夫なんだから何をやっても面白くってあたりまえに、という絶対的真理が近田春夫名義では38年ぶりとなったソロ・アルバム「超冗談だから」(2018年)を生み、「調子悪くてあたりまえ 近田春夫自伝」(20年、リトルモア)を生み出した。
「考える人」としてのキレの良さは衰え知らず、チャーミングな語り口の魅力はこの番組の60分でも十分伝わってくるものがある。
芸能界を語りつつロックを語り、ロックを考えると芸能界に行きつく。そんな近田節のマジックを、リクエストにお応えして、もう一度お楽しみいただけることになりました。


