――番組では、マンションの階段を30階まで上ってリハビリに励む姿が紹介されました。最初は何階くらいから始めたのですか?

弘道:最初から30階まで上りました。入院中は寝て、食べて、動いて、休憩して…と24時間、リハビリを中心とした生活だったんですけれど、退院したらリハビリに集中できる時間がすごく少なくて。

何かできないかなと思ったときに、それまで基礎トレーニングを積んで体力を培っていたので、階段上りを始めました。今は、週に2〜3回はやるようにしています。

階段トレーニングの様子

――特に病気やケガを抱えていない大人でも、30階は大変だと思います。

久美子:なかなか上らないですよね(苦笑)。

――この“階段トレーニング”があるからこそ、現在の筋力を維持しているのでしょうか。

弘道:今も下半身に麻痺があるんですが、そうすると筋力が落ちるのも早いんです。筋力が落ちる前にトレーニングを積んでいかないと、現状維持もできなくなってしまう。だからもう、やるしかないという感じですね。

階段トレーニングの様子

久美子:一段ずつではなくて、一段抜かしで上ったりもしています。最初に「一段抜かしで上ってきた」と聞いたときは、「え!行けたの!?」と驚きました。そもそも初めは、階段トレーニングをしていることを、家族の誰も知らなかったんです。

弘道:ふふふ(笑)。

久美子:ある日、いつもトレーニングをしているはずの場所にいなくて、息子たちと「お父さんいなくなった!」「どこ?外歩いてる?」「いない!」って慌ててたら、階段を上っていて…(笑)。ビックリしました。陰で努力していたのですね。

SNSの応援コメントが励みに「1人だったら今ここにいない」

――入院生活を経て“ある食材”を克服したことも紹介されました。

久美子:病院食で毎日、その食材が出ていたそうなんです。弘道さんが「毎日それだけ残すって大人として…。こうなったら毎日、絶対食べる!」と宣言して。本当に食べられるようになりました(笑)。

弘道:栄養がありますから、“薬”だと思って食べています(笑)。

――家族や周りから多くの応援があったと思います。特に響いた言葉はありますか? 

弘道:息子たちの「生きてるからいいじゃん」という言葉ですね。生きてさえいれば、何かできることや可能性が増えていくかもしれないと思えました。

佐藤弘道を支えた2人の息子たち

あとはやっぱり、 SNSで発表したときにいただいた、たくさんの励ましのメッセージです。脊髄梗塞は稀(まれ)な病気なのですが、「私も脊髄梗塞になりました。発症して何年も経ちますが、今は海外旅行もしていますよ」とか「10歳の息子が脊髄梗塞になり、今リハビリをすごく頑張っています。ひろみちお兄さんも頑張ってください」という声をいただいて。

リハビリ中の様子

同じ病気の方々が回復したり、頑張ったりしていることを教えていただいたので、僕も皆さんに近づけるんじゃないかなと思って、それが励みになりました。もし1人で抱えていたら、たぶん今ここに僕はいないと思います。