『ゴシップ#彼女が知りたい本当の○○』第3話完全版
現役高校生という以外は何もかもがベールに包まれ、10代から絶大な支持を集めている“覆面女子高生シンガー”AOIの正体を検証するという動画が急上昇ランキングの1位になっていた。
AOIのことはまったく知らなかったが、その話題性に目をつけた瀬古凛々子(黒木華)は、AOIの正体を暴くと宣言する。根津道春(溝端淳平)や下馬蹴人(野村周平)、一本真琴(石井杏奈)も、この話題には興味津々だったが、正体を暴くのは難しいのではないかと告げるが…。
「検証動画・謎の覆面JKシンガーAOIの正体!?」というタイトルがつけられたその動画は、シルエットのAOIと、ライブハウスのステージに立つ女の子の画像を2分割で並べたものだった。顔こそわからないものの、ともに特徴的なポーズをしていることから、彼女がAOIではないかと話題になったのだ。
凛々子は、動画のUP主に取材を申し込んだが、UP主もネットで画像を拾っただけで確かなことはわからないという。ただ、女の子が映っているライブハウスは渋谷にあるらしい。
凛々子は、椛谷静司(野間口徹)とともにAOIの所属レコード会社を直撃取材したものの、何ら情報を得ることはできなかった。
それにもめげず、動画に映っていたライブハウスへと向かう凛々子たち。そこでスタッフを待つ間、AOIのSNSアカウントを見ていた椛谷は、フォロワーの中に見覚えのある手書きのアイコンを発見する。それは、椛谷の息子・涼太(大西利空)のものだった。
凛々子たちは、ライブハウスのスタッフから、検証動画に映っていたのは青野郁(上國料萌衣)という女性だという情報を得る。画像のライブは1年ほど前のもので、当時から彼女のライブにはフロアに入り切らないほど客が押し寄せており、そのスタッフも歌手としてのオーラ、才能を感じていたという。
夜、凛々子が残って仕事をしていると、シャワーを浴びた根津が戻ってきた。根津は今夜も編集部に泊まるつもりらしい。根津から、椛谷はどうだったか、と問われた凛々子は、自分が知っている椛谷ではなかった、と返す。
そんな会話が途切れた際、ふいに根津は、凛々子を食事に誘った。訪れたのは、黄実子(りょう)の店だった。
食事をしながら、椛谷のことを話す凛々子と根津。椛谷には仕事への意欲が感じられない、という凛々子に対し、ずっと最前線で戦ってきた元エース記者が都落ちしたら張りつめていた糸が切れるもの、と椛谷の置かれている状況に理解を示す根津。しかし凛々子は、根津の言っていることが理解できず、切れた糸はまた結べばいいだけではないか、と返す。
するとそこに、取材の申し込みをしていた青野郁の元ファンだという男性から連絡が入る。その男性ファンによれば、青野郁はとても可愛い女の子だが歌は上手くなかったという。また、当時、ファンはそれほど多くなかったらしい。このファンは、こっそり撮影したライブの動画も持っていた。
取材を終えた凛々子は、ライブハウスのスタッフの証言とはかけはなれた人物像に疑問を抱き…。
あくる日、凛々子は、椛谷とともに再びレコード会社を訪れ、AOIのプロデューサー・井出(金剛地武志)に会う。そこで凛々子は、青野郁の写真を見せて、AOIの正体は彼女ではないか、と切り出す。すると井出は、あっさりそれを認めた。その様子に、違和感を抱く凛々子と椛谷。
凛々子たちが編集部に戻ると「週刊東西」のサイトに、AOIが今夜公式チャンネルで顔出しの生配信ライブを行うという記事が出た。これまでのことは、すべてレコード会社主導のプロモーションだったのだ。「俺たちは踊らされただけ」。椛谷は、そう言い捨てて帰っていく。
その夜、AOIの生配信ライブが行われた。が、視聴者からの絶賛コメントに混じって、口パクを指摘するコメントもあった。凛々子は、ライブハウスのスタッフとファンの男性との評価が違うことに改めて言及すると、「ザワザワする」と言い出す。
黄実子の店を訪れた凛々子は、昔と今で別人のよう、ということがあるのか、と尋ねた。すると、離れた席にいた笹目虎太郎(寛一郎)が、変わりたいと思ったからか、変わらざるを得なかったからではないか、と凛々子たちの会話に入ってきた。
自発的な変化にせよ、強制的な変化にせよ、何かきっかけがあったのではないかと言うのだ。続けて笹目は、でも人は本質的には変わらない、と告げ…。
凛々子は、椛谷がよく行くカラオケ店に押しかけ、ひとりカラオケに興じていた彼に古い「週刊カンフル」を差し出す。そこには、「芸能人ご用達のセレブ進学校で起きた万引き冤罪事件!」という記事が掲載されていた。
都内でも有数の芸能人ご用達の進学校で万引きの犯人とされた16歳のCくんの事件が、有名女優Kを母に持つ真犯人による冤罪事件で、Kが息子の犯行をもみ消すために関係者に口止め料を渡していたことなど、その真相を暴いたのは椛谷だった。
この記事のことが印象に残っていた凛々子は、クスノキ出版の就職説明会で先輩社員の1人として壇上に立った椛谷の、「誰にとってもゆるがない事実を伝えるのが出版社の仕事。だから僕は知りたいんです」という言葉を聞いて、入社したいと思ったのだという。
凛々子は「私も知りたい」と言うと、本当は椛谷もAOIと青野郁が別人であると気づいているのではないか、と問いかけた。
あくる日、凛々子と椛谷は、音響研究所を訪れる。そこで、AOIの歌声と、ライブハウスでファンが撮影した青野郁の動画を検証したところ、やはり両者は別人であることが明らかになった。
凛々子は、歌っている人物を特定すると宣言した。恐らく作詞・作曲も別人がやっている可能性が高いと指摘する凛々子。その言葉に、椛谷は歌詞がずっと気になっていたと言い出す。凛々子と椛谷は、AOIの歌詞を1曲ずつチェックする。そこでついに、決定的なヒントを見つけ…。
あくる日、凛々子たちが訪れたのは古びたアパートの一室だった。その住人男性(濱津隆之)に、「あなたがAOIさんですね?」と切り出す凛々子。その男とは、20年ほど前に1曲だけヒット曲を出しているミザックだった。凛々子たちがそれに気づいたのは、ミザックの曲とAOIの曲の両方に「カラフルなモノトーン」という同じフレーズが入っていたからだった。
ミザックは、半ば自嘲気味に真実を話し始めた。ミザックは、売れなくなってからも曲を作る度にプロデューサーを訪ねていたが、誰も君のようなおじさんの曲なんか聴きたくない、とゴミ扱いされたらしい。そのとき、自分の中で何かが切れた、というミザックは、試しに若者に人気の曲を聴いてみたのだという。
しかしその評価は「若い」「可愛い」という上辺だけのものだった。そのときミザックは、それならば自分の曲も上辺を若く、綺麗にしてやればいい、とひらめいたのだ。
自分の声を若い女性の声に変換し、現役女子高生AOIを名乗って動画サイトに楽曲をあげると、すぐに大きな反響があり、やがて自分を切ったレコード会社のプロデューサーからも連絡があった。「こんなおっさんにJKの皮を被せただけでバズる。どいつもこいつも、AOIに踊らされて奴らは全員馬鹿だ」。そうつぶやくミザックに、凛々子は、今回の一件を記事にすると告げ…。
椛谷は、AOIの真実を記事にするのをためらっていた。涼太がAOIのファンだったからだ。
凛々子は、そんな椛谷に、万引き冤罪事件の記事の最後の一文を覚えているか、と問いかけた。そこには「誰かにとっては不都合な事実でも、別の誰かにとってはかけがえのない真実」とあった。事実をどう受け止めるのかは相手次第だが、事実をどう伝えるかは自分たち次第だという凛々子の言葉を受け、記事を書き始める椛谷。
椛谷の書いた記事は大きな反響を呼んだ。執行役員の仁和正樹(安藤政信)は、レコード会社から苦情が来たが上手くとりなしておいた、と凛々子に告げると、「瀬古が編集長になってよかった。これからも頼むぞ」と声をかけた。
椛谷は、今回の一件で「騙された」「失望した」と思うファンがいる一方で、忘れてはならない事実がもう一つある、と書いていた。それはAOIの曲が多くの人の心を動かした、ということだった。
久しぶりに黄実子の店を訪れていた椛谷は、そこで凛々子に会う。椛谷の記事に、「いいね」がたくさんついている、と知らせる凛々子。椛谷が「いいね」したアカウントを見ていくと、その中に涼太のアカウントもあって…。
黄実子の店を出て帰路についた凛々子は、ネコがいる路地でふいに立ち止まる。そこで凛々子は後ろを振り向くと、「そこにいるんですよね。笹目さん」と声をかけた。道の陰から姿を現した笹目は、凛々子を見つめ…。