芸能プロダクション・スターダストに所属する映画監督、役者らが、脚本をリレー形式でつないでいく企画「リレー空想映画」が5月10日よりスタート。そこで完成した2つの脚本が完全リモートでサウンドドラマ化、デジタルコンテンツとしてリリースされることが決定した。

1つの脚本をリレー形式でつなぐ

「リレー空想映画」とは、SNSで公開しながらリレー形式でつないでいく脚本を読んで、読者それぞれの脳内に再生される空想の映画を楽しんでもらうという企画。ステイホームの時間を少しでも楽しんでもらいたい、そして自分たちも楽しめるコンテンツを作りたいと考えられたもので、新作映画の公開や撮影が次々と延期・中止となる中、何か新しいことにチャレンジしようという思いからスタートした。

1つの脚本をリレーで書いていくことで、筆者それぞれの解釈や好みが加わり、思いもよらない方向へストーリーが展開。読者はもとより脚本を書いている筆者自身もその過程を楽しむことができる。

第1弾の脚本リレーは北村匠海、中川大志らが参加

第1弾の脚本リレーに参加したのは、以前よりクリエイティブなことに興味を持っていると公言していた若手俳優の北村匠海と中川大志。

北村は実写映画「思い、思われ、ふり、ふられ」(8月14日(金)公開)、中川は「坂道のアポロン」(2018)で、今回の監督・編集を務めた三木孝浩監督作品に出演しているつながりもあり、この企画に興味を持つのでは、と思った三木監督から声をかけられた。

北村と中川は小学生のレッスン生時代から交流があることも功を奏し両者ともに快諾。北村、中川、三木と中島良監督での4人のチームが結成された。

自分たち自身もとことん楽しむことを目的としているこの企画では、リレーの順番やタイトルを決めるにもユニークな手法を採用。脚本で一番悩むのは最初と最後ということで、1番に三木、4番に中島を配置し、残り2番と3番は、電子あみだくじを使って決定。三木、北村、中川、中島の順番となった。

タイトルはSNSの投票システムを使い、これから書くストーリーのタイトル候補3つを挙げ、投票数が一番多いものに決定。1日1話更新、500文字程度、リレー2周して完成させるというルールだけで、一切の打ち合わせもなくスタートした。

自分の番が来たらその日に脚本の続きをアップしないといけないというプレッシャーの中、次の人にバトンを渡す際に無茶ぶりをするなど、それぞれが企画を楽しむ。

北村は脚本の中に新キャラクター「アヤミ」を登場させてすぐに中川へバトンを渡す。必然的に中川は「アヤミ」のことを書かないといけなくなり、中川が担当の日になかなか脚本がアップされない状況に。ところが「1000文字ぐらいになった…(笑)」と、筆が止まらなくなったようだ。

最終話を書くにあたり、2つの終わり方を思いついた中島は、SNSのフォロワーへアンケートを実施。「爽やかなハッピーエンド」「切ないハッピーエンド」のうち後者が多数となり、その意見を取り入れてストーリーをしめくくった。

サウンドドラマのキャストは、主人公で高校生のリク役を北村、同級生のシュウヘイ役を中川が担当。幼なじみでリクに恋心を寄せるアヤミ役を田辺桃子、ミサキ・ナギサ役は高橋春織が一人で二役にチャレンジ。ナレーションには男性キャスターユニット、イケキャス.の川津武大が抜擢された。

<「嘘とマーガレット」ストーリー>

高校生のリクはある日、机の上に置かれていた一輪のマーガレットと手紙を見つける。なぜ置かれていたのか、理由がさっぱりわからないリクは同級生のシュウヘイに相談。もしかして告白かも、とリクがニヤけていると、リクに恋心を寄せる幼なじみのアヤミがやって来て、その姿をからかう。妄想ばかりを並べるリクの様子を心配して、シュウヘイとアヤミがリクの行動を見張っていると、フワッと花の香りが…。リクは幼いころに起きた出来事を思い出す。

第2弾は葵わかな、中村ゆりかの女性陣に、清原翔も参加

男性陣のみだった第1弾リレーに対して、第2弾では女性陣も加わった形でトライしたいと、葵わかな、中村ゆりかが参加。そこに清原翔も参戦する形となった。

葵は三木組の映画「陽だまりの彼女」や「くちびるに歌を」で演じた経験があり、中村はドラマ「女子高生の無駄づかい」にメインキャストとして出演し、その3話を中島がゲスト監督として担当したというつながりを持つ。

5人チームを組んだ第2弾では、1番と最後に監督を配置し、2~4番はやはり電子あみだくじにより公平に決定。中島、清原、葵、中村、三木の順番になった。

ストーリータイトルはSNSの投票システムを使い、「もう一度逢えたら必ず」「たらればの恋」「夏待ち」の3つの候補の中から46%の投票率を獲得した「もう一度逢えたら必ず」に決定した。

脚本リレーは居酒屋でヤケ酒する失恋女子トークからのスタート。2番手の清原のストーリーがやけに短いのはある理由が。そして新キャラクター「いしかわ」を登場させた意図は座談会で明らかになる。

葵と中村の書くセリフはリアルな女子トークになっており、特にセリフ部分は清原においても役者であることが生かされているようで、数々の台本を読みこなしているからこそ書ける脚本になった。

サウンドドラマでは、脚本リレー当初から皆が思っていた配役になり、彼氏にフラれたばかりの会社員・くるみ役は葵、くるみの会社の先輩・つき役は中村、そうた役は清原が担当。さらにヒロ役には渕野右登、いしかわ役は小柳心がユニークに演じた。またナレーションはロックバンド・FLOWER FLOWERのyuiが初挑戦した。

<「もう一度逢えたら必ず」ストーリー>

彼氏にフラれたばかりのくるみが、会社の先輩・つきに付き合ってもらい居酒屋でヤケ酒を呑んでいる。つきも元彼に心残りがある様子だが何も言わない。ある日くるみが遅刻した罰として、今度はくるみがつきに付き合って特急列車である場所へ向かう。そこは視界いっぱいに広がる海と砂浜がある場所。彼女たちの気持ちが徐々に癒されていき…。

後日、リモート座談会を実施

脚本をリレー形式でつなぐのは、役者はもちろん監督らも初めてのこと。それぞれがどんな感想を抱いたのか、話を聞いてみようと、リレー企画終了後に各チームでリモート座談会を行った。

ストーリーに関しての一切の打ち合わせもなく、流れるままリレーでつながっていく中で、いったいどう考えてこのような展開になったのか、新キャラクターはどういうつもりで登場させたのか、執筆にどれくらいの時間を費やしていたのか、バトンを渡す時に答えを求めるような無茶ぶりなど、お互いの頭の中を探るべく話が尽きない様子のやり取りが行われた。

リモートにこだわるこの企画では、劇伴音楽に至っても、自宅で作れるということを条件に、スターダスト所属のアーティストに依頼。

「嘘とマーガレット」の劇伴音楽はシンガーソングライターのKが担当。「もう一度逢えたら必ず」は、嵐への作詞提供やw-inds.、Little Glee Monsterなど数多くのアーティストへの楽曲提供、アレンジを行っているクリエイターJUNEが行った。

それぞれ完成した脚本を読んで、リモートで三木監督と直接打ち合わせをし、そのイメージに沿って書き下ろした劇伴音楽を提供している。

ジャケットイラストは、「嘘とマーガレット」をコントグループ、テニスコートのメンバーである神谷圭介が担当。「もう一度逢えたら必ず」は脚本リレーにも参加した中村ゆりかが手掛けた。

尚、ステイホームにより生まれた企画という思いから、デジタルコンテンツの収益の一部が公益社団法人日本医師会へ寄付されるという。

<北村匠海 コメント>

サウンドドラマという形で芝居をするのは初めてでした。リモートで実際距離は遠いものの、三木監督の下、心の距離は近く作品をみんなで作れたかなと思います。

自分たちの関わった脚本だし、とっても愛着がある物語です。ふんわりマーガレットのように優しく包んでくれるものになっていると思います。

<中川大志 コメント>

初めて現場から長い期間離れ、家で多くの時間を過ごしていた時に、こんな時だからこそ何か発信できないかと声をかけてもらったプロジェクトでした。

頭を抱えながらストーリーを繋いでいった経験は、表現者として沢山の学びもあり、めちゃくちゃ楽しかったです!この時代を過ごした記憶と共に、この作品が残っていったら嬉しいです。

<葵わかな コメント>

自分に物語を作っていくことが出来るのかどうか、始まる時は不安の方が大きかったのですが、いざ始まってみると本当に楽しかったです!みんなで物語を作っていくのが、自分にはない世界を見せてもらえるようで、ワクワクしたし、どう書いたら自分の思う情景を伝えることができるんだろう、と言葉について考える時間もたくさん持てました。

サウンドドラマでキャラクターとしても参加させていただけると聞いた時はとても嬉しかったです!収録しながら、今まで以上に作品やキャラクターに愛着が沸いていくのがわかりました。全てリモートで行った新しい形のエンターテインメントが、どんな形で皆さんに受け取っていただけるのか、とても楽しみです。

<中村ゆりか コメント>

撮影がストップし、自粛生活をしている中「リレー空想映画」という新しい企画に参加できてとても嬉しかったです。リレーがあっという間に終わってしまい、まだ書きたいなと思うほど本当に楽しみながら行うことができました。

画面越しで声の収録をした際に離れているので声の距離感が掴めなかったり、回想と現在のテンションの変化が難しかったです。今回初めてなのですが、三木監督の優しい丁寧な演出にとても助けられました。完全リモートでのサウンドドラマを是非、皆さんにも楽しんで頂けたら嬉しいです。

<清原翔 コメント>

今まで文章を書くということが苦手で逃げていたので、この企画を頂いてどうしようかすごく迷いましたが、意外にも好評価を頂けました(笑)。リレー形式ならではの、ストーリーが自分の考えの範疇から超えていくのがすごく面白かったですし、参加させて頂けて本当に良かったです。

<三木孝浩監督 コメント>

世界規模で大変な状況が続く中、出来ることが限られた状況下で、少しでも皆さんにエンタテイメントをお届けできないかと、始まったこの「リレー空想映画」。でもひょっとしたら創った僕たちが一番楽しんでたかもしれません(笑)。

想像は力になります。未来を暗いイメージで埋めるのではなく、明るくワクワクするような空想をすることで明日がちょっとでも楽しみになってくれたら嬉しいです。

<中島良監督 コメント>

これまで物語を作るときは、結末からの逆算で作ってきました。しかし、リレー形式で作っていくということで、他の皆さんがどんな続きを描くのか、毎日ドキドキしながら取り組みました。

そしてリレーに参加されたキャストの皆さんがサウンドドラマにも出演されたことで、より物語の面白さが表現されていると思います。

ネットで読んでくださった方々の応援によって作られた部分も大きいと思います。ありがとうございました。ぜひお楽しみください。

<作品情報>
「嘘とマーガレット」
2020年6月18日(木)発売

「もう一度逢えたら必ず」
2020年6月25日(木)発売
※全てデジタル商品

<リレー空想映画 オフィシャルサイト>