映画「文豪ストレイドッグス BEAST」が1月7日(金)に公開された。

もとになる「文豪ストレイドッグス」は、2013年より「ヤングエース」(KADOKAWA刊)で連載を開始し、シリーズ累計850万部を超えるヒットを記録。

現代のヨコハマを舞台に、実在の文豪の名を懐(いだ)くキャラクターたちが繰り広げる“異能アクションバトル”は、原作となる漫画と小説をもとに、2016年に始まったテレビアニメ、2017年に第一作が上演された舞台、また、2018年公開の劇場アニメと、さまざまなメディアミックスを展開してきた。

そして、今回公開される劇場版は、原作者・朝霧カフカ氏自ら脚本を担当。「主人公の中島敦と、その宿敵である芥川龍之介がもし、逆の組織に所属していたら…?」という“if”のストーリーを描いており、三大特撮ヒーロー『スーパー戦隊』『仮面ライダー』『ウルトラマン』シリーズを手がけるなど、国内外で活躍する坂本浩一監督がメガホンを執っている。

そんな注目作の主人公・芥川龍之介&中島敦に扮しているのは、舞台でも同役を演じた橋本祥平と鳥越裕貴。2.5次元作品を中心に活躍する2人に撮影の思い出や見どころを聞いた。

<橋本祥平&鳥越裕貴 対談>

――完成した作品を見た感想から聞かせてください。

橋本:自分が出演している作品なので冷静に見ることができるかなと不安もありましたが、鳥越くんの隣に座りながらきちんと見届けることができました。そして、最後には「“文スト”いいな」と改めて感じました。

鳥越:見ながらずっとソワソワしていましたね(苦笑)。映画をあまり経験していないタイプの役者なので、試写をどういう目で見たらいいのかわからないし、自分の芝居に関しては反省点ばかりが出てきてしまいました。

――激しいアクションが随所に登場しましたが、大変なことも多かったのではないですか?

橋本:毎日が大変で、撮影の半分ぐらいはアクションをしていました。アクションを一つ覚えたらデリートして、また入れてというアップデートがまず大変でしたし、坂本監督が要求するアクションはレベルがとても高いので、心が折れそうになる瞬間もありましたが、鳥越兄やんが引っ張ってくれて、無事に終えることができました。

鳥越:現場は本当に楽しかったです。「坂本監督の作品やったら見に行く」という人が多くて、「いや、僕が出てるからちゃんと見ぃや」って(笑)。それぐらい信頼を集めている監督で、現場の空気がピリつくことは一度もなく、毎日巻いて(予定時間より早く撮影が終わること)終了するぐらい集中していたので、“プロの現場”を感じました。

――スタントマン出身の監督だけに、役者にもよりハイレベルなアクションを求めるのでしょうね。

橋本:レベルの高いものを要求されることは、それだけこちらを信頼してくださっているということなのでうれしかったです。

鳥越:壁を走ったりもしたな。

――ワイヤーアクションはいかがでしたか?

鳥越:めちゃめちゃ楽しかったです。クールにキメなあかんのに、ずっと笑っていました。僕は以前からアクションが好きで、プライベートでヒーローショーを見にいくこともあるので、アクションへの挑戦が夢の一つでもありました。事前に坂本監督が舞台を見に来てくださって、僕がどれぐらい動けるのか把握したうえでアクションをつけてくださったので、毎日やりがいを感じていました。

予告映像の総再生回数のうち、300回は鳥越が一人で稼いだ(笑)

――舞台では表現できない、映像ならではのよさもあったかと思いますが…。

橋本:舞台では、双眼鏡を使わない限りは引きの画しか見られないと思うんですけど、映像は役者の表情をきちんと見ることができて、よりシーンにのめり込めるので、映像ならではだと思いました。アクションも実際にパンチを当てるなどリアルを追求していて、見ごたえがあるものになったのではないでしょうか。

鳥越:物語の舞台になっている横浜で実際に撮影ができたのはよかったです。何よりもうれしかったのは、祥平をちゃんと殴れたこと。遠慮していたら余計に気持ち悪いので(笑)、思う存分殴らせていただいたうえで、「あぁ、楽しいな」って感じていました。

――「思う存分殴られた」のですか?

橋本:躊躇していたら何度もやるハメになるので、「一発で仕留めよう」という先輩の愛を感じました(笑)。

――最も印象に残っているシーンについて聞かせてください。

鳥越:後半のアクションシーンは怒涛やったね。それ以外では自分のシーンではないけど、宮沢賢治(堀之内仁)と芥川の場面は小説でも好きなシーンだったので、ほんわかして沁みるえぇシーンやなぁと思いながら見ました。

橋本:別にメイクとか変えているわけじゃないと思うんですけど、孤児院で院長(南圭介)と会っているシーンの敦はとても可愛らしく見えました。恐怖や怯えといった感情のせいか、幼い子どものようで「鳥さん、すごい」と思いました。

鳥越:祥平のシーンでいうなら、予告でも使われていた「殺す」と言ってバーンと主題歌が流れるあそこ。“映画やな”って感じですね。

橋本:予告映像の再生回数の半分はおそらく、鳥越さんで稼いでいるんじゃないですか?

鳥越:家で飲みながら後輩に見せて、300回は絶対にいっていますね(笑)。

橋本:そして、そのたびにGRANRODEOさんの「時計回りのトルク」を熱唱(笑)。

鳥越:アニメの「文スト」イベントで予告映像を公開したのですが、帰宅途中、横浜の駐車場で「時計回りのトルク」を熱唱するという。サビの「♪死ぬほどに」しかわからないから、あとはオリジナルで歌わせていただきました(笑)。

――孤児院での敦のシーンは、ひと足先に作品を見た方から「守ってあげたくなる」と評判です。

橋本:ああ見ると、鳥越さんって可愛いんだなって。

鳥越:「ああ見ると」ってどういうことやねん。常に可愛いやろ?

橋本:可愛いです。多分、今の鳥越さんは“可愛らしさ”を捨てたと思うんですよね。

鳥越:20代前半は「可愛い」でやっていたけどね。携帯ケースもヒヨコにして、キャラクターを守っていたけれど、途中で違うなって気が付いてこうなりましたよ。

――橋本さんは「可愛い」と言われることは不本意なんですよね?

(*つい最近、ドラマや舞台で「可愛い」と言われるとキレてしまう役柄を演じていた)

橋本:そうなんですよ(笑)。

鳥越:こいつは全然可愛くないです。

鳥さんは昭和の俳優のイメージ。ずっとそのままでいてほしい

――2021年は一緒に過ごす時間がとても長かったそうですが、役者としてのお互いの印象を聞かせてください。

橋本:2.5次元作品に出演するようになってまだそんなに経っていないころに鳥越さんと出会ったのですが、そのころからまわりと違う雰囲気をもった方だと感じていました。いい意味で“昭和の俳優さん”みたいな。ここ数年はみんなでご飯を食べに行くこともかなわないご時世ですが、そんな場で演劇を語って仲を深める、今じゃ珍しい役者さんだと思います。

鳥越:その話の裏に「feat.迷惑」というものがうろついてるよ?

橋本:そんなことはないです。この令和の時代にレアだと思うんですよ。そのままでいてほしいなって思いますし、僕も“程よく”つき合っていきたいです。

鳥越:本人にちょこちょこ伝えていることなのですが、何をどうしていったらいいか悩む時期を若干乗り越えた感じではあるよね。ちゃんと人を見る性格やけど、「たまには人を見ずに、自分が怪我をすることもおもろいで」と教えておきたい。祥平、すごく保険かけるやろ?

橋本:確かにそうですね(苦笑)。

鳥越:その保険を1回捨ててみ。すごいで?失敗して事故になる場合もあるし、うまいこといけたなっていう場合もある。今、一緒にやっている舞台でも祥平は保険をかけた状態で高速道路に乗ってくるんですよ。「いや、祥平。一番右の追い越し車線に来いよ」と思いながら、僕は待っているんですけど、保険が必ずついてくる(笑)。

橋本:保険には絶対に入らないといけないと教えられてやってきたので。

鳥越:「僕がちゃんとケツを拭きますよ」と思いながら待機しているので、いつかグイっときてほしいですね。

――「文スト」という作品はお二人にとってどのような存在ですか?

橋本:今の自分を作ってくださったのはまわりの先輩方やこの作品だと思うので、こうしてここに存在できているのは「文スト」のおかげです。芥川のようなヒールを演じたのも初めてで、そのおもしろさを終えてくれた作品なので、これからも芥川と二人三脚で進んでいけたらと思います。

鳥越:カフカ先生の描く物語には、生きづらい世の中で救いになるような言葉がたくさん詰まっていて、僕自身もその言葉に助けられた一人です。今後どうなっていくのか「文スト」ファンとしても楽しみですし、作品に負けないよう、自分も成長せなあかんと思っています。

――特に注目していただきたいのはどのような部分ですか?

鳥越:エンドロールにも遊び心が込められていて、「こんなに細かいところまで演出をしてくださっているんだ」と制作陣の愛情を感じたので、そんなエンドロールにも注目していただけたらうれしいです。

橋本:作品を純粋に楽しんでいただきたいですし、芥川や敦、それぞれの目線から見ても楽しめると思います。そして、その後には裏テーマでもある「中屋敷を探せ」にチャレンジしてほしいです。

鳥越:隠れキャラや(笑)。

橋本:舞台版の演出をしている中屋敷法仁さんがどこかで登場するので、探してみてください。

最新情報は、「文豪ストレイドッグス BEAST」公式サイトまで。

©映画「文豪ストレイドッグス BEAST」製作委員会

撮影:河井彩美