放送が延期になっていた、フジテレビ系火9ドラマ『竜の道~二つの顔の復讐者』が、ついに7月28日からスタートする(初回は2時間スペシャル)。

同作は、白川道の未完の小説「竜の道」を原作に、オリジナルの設定を加えて連続ドラマ化。幼くして親に捨てられた双子の兄弟が、自分たちを育ててくれた養父母を自殺に追いやった運送会社社長に復讐を繰り広げるサスペンス作品だ。

その長男で、焼死したと見せかけて他人の戸籍を奪い、整形して別人になり替わり、裏社会と関わりを持つ竜一を演じるのが、玉木宏。

竜一の弟、竜二を演じるのは高橋一生。竜二は、名字を出生時の「矢幡」に戻し、運送会社を監督する国土交通省に入省。エリート官僚として復讐の機会をうかがう。

ふたりには、美佐(松本穂香)という妹がいるが、竜一が生きていることは、美佐も知らない秘密だ。

竜一と竜二が狙うのは、養父母の運送会社を悪質なやり方で乗っ取った「キリシマ急便」社長で、遠藤憲一が演じる霧島源平。

15歳で復讐を決意した兄弟の、20年以上にわたる姿を描く今作。登場人物たちの愛憎、欲望、利権、策略、予想外の裏切りが絡み合い、どんでん返しに次ぐどんでん返しのスリリングな展開が描かれる。

今作が初共演となる玉木と高橋に、共演の感想や役柄へのアプローチ、作品の魅力などを聞いた。

<玉木宏×高橋一生 インタビュー>

「死んだ魚のような目をしていた」からイメージを(玉木)
「別々に生きてきた竜一と竜二の差を出したい」(高橋)

──おふたりは初共演ですが、ご一緒してみての感想はいかがですか?

玉木:一生くんは、いろいろな役を演じられているので、実際どんな方なのか想像がつきませんでした。でも、一緒にお芝居をしてみると、本当にたくさんのことを考えて、いろいろな方向からアプローチしようとする方なので、新しいものが生まれる予感がしました。

高橋:玉木さんは、ワイルドで、お芝居も直感でガーッと出していく反射力が強い方かと思っていました。それももちろんあったのですが、ものすごく繊細に緻密にお芝居を作っていく方。しかも、お芝居を受けてくださるスピードが速くて、僕の芝居をバーンと受けてバーンと返してくださる。そこに男気を感じるし、バランス感覚がすばらしいなと思います。

──ご自身の演じる役柄の印象は?また、その役柄をどう演じようと思っていますか?

玉木:僕の場合、役を演じる上で、人のセリフがヒントになることが結構あります。今作でも、(自身が演じる)竜一のグレーな仕事をサポートするITのプロ・遠山凛子(奈緒)のセリフに、「ブラジルで竜一に会った時、死んだ魚のような目をしていた」という一言があって、それがヒントになっています。感情的に生きているつもりでも、やはり心が寂しいから目が生きていないんだな、と。そういうことを大事にしながら演じています。

高橋:僕らの若いころの双子を演じる兄弟(役の俳優)にお会いしたんですけど、背格好から顔つきから何もかも、見れば見るほど違うんです。やはり、生き方が反映されてしまうのでしょうね。一緒に育っても、そういう微妙な差異がお互いの中に存在しているのに、竜一と竜二は離れて生きてきたわけですから、ものの捕らえ方は当然、違います。その差を出していきたいと思っています。

──竜一らしさ、竜二らしさを出すのに意識していることはありますか?

玉木:竜一が裏の道を進んで、竜二は表の道を行く。復讐ということでは似ている部分はありますが、生き方としてはまったく別なので、僕はふたりの対比を考えた方がおもしろくなると考えています。

整形までした竜一は、よほどの覚悟をもって復讐を企てているはず。だから、何に対しても躊躇することはないし、強引なところもあると思います。表向きは、IT企業の経営コンサルタントですが、裏社会に通じて生きてきた汚さみたいなものが見え隠れすることで、竜一という人物が成立していくと思います。

高橋:竜一が直情的になってしまうのは、まっとうな社会に生きていなかったために、竜二や美佐のためを思って過剰に攻撃的になってしまうから。それに対して、竜二は「竜一がそんなに復讐したいのなら、自分も全部一緒に背負うよ」というスタンスです。

なぜなら、竜二は国交省の官僚になって、霧島(遠藤憲一)を管理できるポジションなので、ある意味、復讐は終わっていますから。けれど、竜一はそこでは絶対に止まれない。「霧島をぶっつぶしてやらないと復讐は終わらない」という気持ちなので、竜二は竜一に感化されているんです。

これまでの憎しみや苦労の反動で復讐をしているのが竜一だとしたら、竜二は、そのために外堀を埋めていく存在。そこが、大きなふたりの違いだと思います。

──現場で、お互いに意外だったことはありますか?

玉木:クランクインした日のことです。整形後の竜一と竜二が再会するけれど、竜二は相手が兄だとは気づかないというシーンで、竜一が霧島への復讐を語っている時、途中から竜二と言葉がシンクロしていくというアイデアを、一生くんが提案してくれました。離れていても、ふたりの中に根付いているものは同じだと。監督もOKしてくださって、とてもいいシーンになったと思います。

高橋:竜二は、竜一のことをずっと見ている人間だったと思うんです。双子だからこそのシンクロする部分をうまく出していきたくて、発声の仕方や声の張り、微妙な言い回しをできる限りトレースしてみました(笑)。

玉木さんの意外なところは、甘いものがお好きだということ(笑)。竜一と竜二がホテルで復讐について話をするシーンで、ふたりでケーキを食べたんです。

玉木:一生くんも甘いものが大好きで。番宣で出演したバラエティでも甘いものをたくさんいただいたんですけど、劇中でもケーキをペロリと(笑)。それは意外でした。

──最後に、番組の見どころやメッセージをお願いします。

玉木:原作を読んだ時は、非常にダーティでチャレンジングな作品で、映像化するには難しいだろうと感じました。でも、台本を読むと毎話次回が気になる終わり方で、そこは連続ドラマだからこそできるおもしろさだと思いました。

登場人物たちも、それぞれが根底に強い思いを抱いているというところにも魅力を感じました。ある意味、誇張された世界ではありますが、兄弟を復讐というものに突き動かした苦しみを理解してもらえたら、きっとふたりに共感しながら見ていただけると思います。

高橋:ふたりで歩いていると、竜二は止まり、竜一は歩いて行ってしまう…ドラマの宣伝用に撮影した特報映像があるのですが、それがこの作品を象徴すると思います。

竜一と竜二は、まったく違う人生を歩んできたために、復讐のベクトルが少しずつ変わっていきます。かつては、ふたりで平行に歩き続けてきたものが、微妙に角度がずれ始めて、その角度はどんどん広がっていく。そのズレは、家族や周囲の人に対する見方や、復讐の捕らえ方などにも及んでいきます。そういう心理的なものがおもしろく見えてくるといいなと思っています。