お笑い芸人で作家の又吉直樹の小説を実写化した映画「劇場」の初日舞台挨拶が7月17日(金)にリモートで実施され、主演の山﨑賢人と行定勲監督が登壇した。
今作は又吉が芥川賞受賞作品となった「火花」より前に書き始めていた、作家の原点とも言える恋愛小説を原作に、劇作家を目指す主人公・永田(山﨑)と、彼に恋をして必死に支えようとする沙希(松岡茉優)の、生涯忘れることができない恋を描く。
山﨑賢人&行定勲監督、3ヵ月越しの公開に感激「一生忘れない」
新型コロナウイルスの影響で延期となっていた公開がついに迎えられるということで、山﨑は「この映画は劇場で見て欲しい作品なので、こういう風に初日を迎えられて本当に嬉しく思います」とコメントした。
行定も「4月に公開を予定していた時よりちょっと公開規模は縮小したんですが、映画館で上映できる喜びを噛みしめております。僕はこの2020年7月17日に自分の新作が公開されたということを一生忘れないんじゃないかと思います」と思いを語った。
山﨑は演劇に没頭しながらもうまくいかない現実に悩み、時には唯一の理解者でありひたむきに応援してくれる恋人の沙希にも当たってしまうこともある永田というキャラクターに、様々なインタビューで“共感できる部分もあった”と語っていた。
そのことについて山﨑は「永田の人間としての弱さとか、愚かさとか、嫉妬心とか。永田は劇作家で僕も俳優という仕事をやらせて貰っている中で、表現するという意味では近いところもあって。普段自分が抱えているような感情がいっばいありましたし、台本を初めて読ませていただいたときに演じてみたいシーンがいっぱいありました。人間って愚かな部分がたくさんあると思うんですけど、ここまで愚かな部分を出せる役が初めてだったので、本当に永田が演じられて嬉しかったです」と振り返った。
そんな永田役に山﨑を選んだ理由を行定は、「誰が永田をやればいいのか、原作を読んで思いつかなったんですよね。その時に、プロデューサーからの提案で山﨑賢人は、どうかと。思いもしないですよね。山﨑賢人がこれまでそういう役をあまりやってきていないから。ただ、それを聞いてこれは良いと思って(笑)。やっていない人間がやるのが一番僕の気持ちを凌駕してくるんです。それで山﨑くんに来てもらったんですけど、まぁ綺麗な顔をしていて(笑)。その瞬間に先ず汚したい!と思ったんです。汚すために『髭生える?』とか『髪の毛ボサボサにしてさ!』とかって言うと結構本人がノっていて。素直で、いい意味でちょっといかれてるんです。無自覚にいろんな表情するし、やっていて楽しかったですね。得体が知れない山﨑賢人が現場にいて、その場その場の衝動を撮るのに必死だったんです。それを皆さんに披露できるのが嬉しいですね」と語った。
これを聞いた山﨑も「本当に行定さんと映画を作っていく過程は最初に出会った時から楽しくて。永田を作っていく上で、普段舞台の演出もされている行定さんのエッセンスを現場で感じながら永田に入れてみたり。仕草一つ一つ、一緒に作っていくのが楽しかったです」と監督と主演の相思相愛ぶりを見せつけた。
松岡茉優「過去と向き合うのも悪くないんじゃないかなって思える映画」
ここで、スケジュールの都合で舞台挨拶に来れなかった松岡茉優からビデオメッセージが届く。
「公開おめでとうございます!今回の新しい試みに対して、海外にいる山﨑くんや私や行定監督のファンの方が同時に見られるのが嬉しい!という感想をいただいて嬉しかったですし、すごく良いことなんじゃないかなと思いました。(※本作はAmazon Prime Videoにて全世界配信中)舞台挨拶に行けなくてとても残念ですが、私と山﨑くんが演じた永田と沙希ちゃんの7年間の恋の物語、そして夢の物語。恋をしたことがある人、夢を追いかけたことがある人、そして忘れられない人がいる人が、過去と向き合うのも悪くないんじゃないかなって思える映画じゃないかな思います。楽しんでください!」とコメントした。
山﨑は「茉優ちゃんの魅力たっぷりなメッセージでしたね」とにっこり。「茉優ちゃんから撮影に入る前に『劇場』はこういう作品で、こういう結末があるから、どの時期にどういう想いを持っていたかを話そうって言って下さったんです。本当に頼もしい女優さんだなと思いますね。ほぼ2人芝居だったので、お芝居出来てすごく嬉しかったです」と振り返った。
行定は松岡がコメントで今作の全世界配信に触れたことについて「松岡茉優という女優はいろんなことを察してくれて頼もしいですね」と笑顔を見せ、「僕の思いとかを察してくれたんだと思うんですが、僕は今回の様な取り組みになったのは良かったと思うんですね。コロナ禍の中で外に出にくい方もいらっしゃると思うので、そういう方達も見れるという。またこの映画は見るとある仕掛けがありまして、最後にこれは劇場で見たかったなって思ったら見に行くという経験も出来ます」とアピールした。
山﨑賢人の心地いい場所は「家」
また、劇中で沙希が永田に対して優しく語りかける「ここが一番安全な場所だよ」という台詞に因んで、2人にとって「一番心地いい場所」はという質問が。山﨑は「家」、行定は「映画館」と回答した。
その理由を山﨑は「自粛期間もあったりして、家が居心地よくなる様に努力しました。掃除して部屋が広くなるようにしたり、カーテンの色を変えたり、植物を置いたり。だから居心地のいい“場所”で言うと家になっちゃうんですけど、居心地が良い人とか大事な人がいる場所が全部、安全ないい場所になればと思いますね。外へ出れない分、2パターンあります」と明かした。
一方、行定は「やっぱり映画館は居心地いいですよ。例えば映画館でつい寝ちゃう体験をしたことがあると思うんですけど、それもある種、映像や音に没入しているってことだし、逆に暗闇の中で1つの作品を見ている、他者と共有する瞬間っていうのもあるんですよね。そういうものがある映画館っていうのはいいですよね」と語った。
最後に行定は「今日、映画館の入り口に『劇場』の大きな看板がかかっていて、鳥肌が立つ、感じたことのない感動を覚えました。当たり前のようにスクリーンで上映して舞台挨拶をして、というのが今となっては奇跡的な素晴らしい出来事だったんだと感じられる初日を迎えられました。この映画は一人で向き合ってもいいし、いろんな人達と見終わった後に語り合ってもいい映画です。この映画を堪能していただければと思います」と熱いコメントを残した。
山﨑は「劇場公開と同時に配信という形になったんですけど、こういう時期だからこそポジティブに考えていければと思っています。この映画の永田と沙希ちゃんも、どうしようもない時間とか苦しかった時間とか自分の愚かさとか、そういうものがあるからこそ、人とは違う景色が見れていると思います。そんなどうしようもなかった時間も自分の中で肯定できるようなきっかけにこの映画がなってくれたらと思いますし、大切な人に対して普段の自分はどうなのかなと振り返るきっかけにもなると思います。この映画を見てくれた全ての人が、いい未来に向かっていけるようになってくれれば嬉しいなと思います」と話して、イベントは終了した。
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