視聴者が“今最も見たい女性”に密着し、自身が課す“7つのルール=こだわり”を手がかりに、その女性の強さ、弱さ、美しさ、人生観を映し出す新感覚ドキュメント『7RULES(セブンルール)』。

7月28日(火)放送回では、イラストレーター・辰巳菜穂に密着。Googleストリートビューで見つけた景色を、独自のアレンジで描いている彼女。自宅にいながら、パソコン一つで旅した世界中の風景を描き、コロナ禍の今、国内外で多くの注目を集める辰巳菜穂のセブンルールとは。

ルール①:空の色から決める

辰巳の作業場は、自宅兼アトリエの一軒家。

彼女が作品作りの最初に行うのが、ストリートビューで世界中を歩き回っての“題材探し”。行ったことない場所や知らない場所を見つけたら、拡大していき、雰囲気をチェックする。住宅街は単調な作りが並んいることが多いため、ポイントとなる看板の文字や、商店・レストランなどの小さなお店の並びを探すのだという。

1時間ほど探しまわり、アメリカ・ロサンゼルス郊外のカーショップを選んだ彼女。鉛筆での下書きのあと、色付け作業で最初に塗り始めたのが「空」。

空が一番印象を左右するため、空の色を先に決めると、他の色も描きやすくなるのだそう。この日は、ポイントとなった黄色の看板の色と合うように、綺麗な水色で空を描いた。

ルール②:家から出ない日もメイクする

平日は、10時にリモート出社する夫に合わせて彼女も制作をスタート。作業前に彼女が必ずしているのが、メイクだ。家から出ない日でも、仕事モードに切り替えるため、メイクは欠かさないという。

夫の琢弥さんも、「ここからが仕事だと分かるのは、僕もどうコミュニケーションを取ったらいいのかが分かりやすい。妻が絵を描いてる時に邪魔をしたくないので。どうやってコミュニケーション取るのか、いまだに工夫し続けているところはあるかもしれない」と話す。

ルール③:画面のズレも描く

福島県で洋服店を営む両親のもとで育った彼女は、建築家になるという夢を叶えるため、大学では建築デザインを学んだ。しかし、もっと自分の手の感覚に近いところで物を作りたいと思い、しだいに違う道を志すように。 

卒業後は、アルバイトをしながら服飾デザインの専門学校に通ったが、中退。アルバイトも辞め、借金をしながら自分のやりたいことを模索していた。

そんな中、25歳の時、独学で描いた絵本がコンテストで最優秀賞を受賞。描きたいストーリーが思い浮かぶのに画力が追いつかないことのジレンマから、社会人向けの講座に通い、32歳で本格的に絵の勉強をスタートした。 

練習の一環で、ストリートビューに映る世界中の景色を描き、100日間連続でインターネットに投稿すると、それがSNSで話題となり、仕事の依頼が多く舞い込むようになった。「本当に自分のやりたいことが見つけられて安心しました。やっと見つけたなと思って」と笑顔を見せる。

密着した日に進めていたのは、「WIRED」というWebサイトのコラムにつけるイラストの仕事。事前に指定されたカナダの都市・トロントに、彼女が作品によく登場させる車のイメージを追加して描いていく。

ストリートビューに写る景色の中には、電線が途切れている部分や、看板のズレも見つかるが、それすら描くのが、彼女のルールの一つ。「現実に旅をして描いているのとは違う、ストリートビューだからこその面白味みたいなものを取り入れていきたい」と、こだわりを覗かせた。

ルール④:デートは割り勘

休日、夫婦で原宿にカフェデートへ。結婚9年目、出会ってから15年が経つ今でも、2人でよく出かけるという。「“コロナ離婚”とかよく聞きますけど、うちは逆に一緒の時間が増えて、楽しい時間が増したって感じ」と話す。

そんな仲の良い2人のルールが、デート時の会計は割り勘にするということ。このルールは、付き合っている当時から、結婚した今まで変わらないという。 

その理由には、彼女の“ある体験”があった。「『サラリーマンの夫の稼ぎがあるから、のんびりそうやって絵描いてられるからいいよね』みたいなことを結構言われることがあって。それがすごい嫌で。夫に頼っているわけじゃないし、寄り掛かりたくないので、食費も全部別にしています」。

ルール⑤:家事は夫婦別々

夫に合わせ、自身も土日を休日としている辰巳。空いた時間にまとめて洗濯をするのだが、すべてまとめて洗ってしまう大雑把な性格の彼女は、衣服の色や素材できちんと分けたい夫とは、別々に洗濯を行うのだという。

対照的な性格は、作業場の机や窓にも現れる。「お互い自分のやり方を相手に押し付けないようにしている」と話す彼女に、夫・琢弥さんは「あまりにもひどいところは、俺がやればいいだけだから」とフォローを入れた。

ルール⑥:犬の散歩で「影の色」を見る

1ヵ月に10枚ほどのペースで制作を続けている彼女が新たに描き始めたのが、フランス・パリの街並み。「パリ描かないんですか?」と言われたことをきっかけに、普段はあまり描くことのないヨーロッパに着手した。

しかし「あまりイメージが湧かないんですよね」と、いつもより筆の進みが遅い。この日は完成に至らず、翌日も同じ絵を描き続けていた。影のつけ方に悩んでいるのだという。

行き詰まった彼女は、愛犬を散歩に連れ出した。散歩の道すがら、見つけた影を目に留めておく。

とある家の屋根の下、手前の青い屋根の色が反射して、青色の混ざった影ができていることからヒントを得たそう。帰宅後、制作途中だった絵の、赤い屋根の影に少し赤みを持たせて描き進めた。

ルール⑦:人のいない風景を描く

日々、制作活動を続ける彼女だが、新型コロナの影響で、今年5月に予定していたスペインでの個展や、国内のイベントはすべて無期限延期になってしまい、この先どうやって活動をしたらいいのか分からなくなってしまったこともあったという。

開催の目処が立たない個展の代わりに、現在は、インターネット上で作品を販売している。そうしたオンラインでの活動は、思わぬ喜びにも繋がった。

SNSを通じ、「コロナ禍でこういうコンセプトの作品は面白いね」「気分だけでも旅行に連れて行ってもらってるような気持ちになれます」といったコメントが、国内外から届くようになったという。

「見た人が、自分をその絵の中に投影して旅してもらえたら」と話す彼女。どこかで誰かが、この絵の中で旅している姿を想像して、今日も人のいない風景を描く。

「本屋さんで本がたくさんあると、生きている意味があるような感じしません?読んでない本がこんなにいっぱいあるんだって思うと。そういう感じで、描きたい景色がこんなにある以上は、描いていたいなと思って」と、真剣な表情で、キャンバスに筆を滑らせた。

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「餃子のハルピン」店主・二宮千鶴に密着

次回、8月4日(火)の『7RULES(セブンルール)』は、「餃子のハルピン」店主・二宮千鶴に密着。肉汁たっぷり、本場の絶品餃子を作りながらも「本当の餃子はこんな味じゃない」と話す彼女の7つのルールとは。