テレビドラマや映画といった映像作品の中で、時に主人公を支え、時に物語に彩りを与えるのがバイプレイヤーだ。彼らの存在はキャストを輝かせ、物語のスパイスとなり、見るものをより楽しませる。

そんなバイプレイヤーへのインタビュー企画「支人【ささえびと】~人を輝かせる達人」。

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今回は、現在放送中の『ラジエーションハウスⅡ〜放射線科の診断レポート〜』(毎週月曜21時~)で、甘春総合病院の放射線科「ラジエーションハウス」の一員・田中福男を、『顔だけ先生』(毎週土曜11時40分~)で面倒ごとをすべて人に押し付ける教頭・川相公二郎を演じている八嶋智人をフィーチャー。

『ラジエーションハウス』の前作でナレーションを務めていた八嶋が続編に参加することになった際の思い、主演・窪田正孝の印象、バイプレイヤーとしての芝居への思いなどを聞いた。

まさかの再招集に驚き「二の足を踏みました」

──シーズンⅠではナレーションを担当されていた八嶋さん。当時は『ラジエーションハウス』をどのように見ていましたか?

ラジエーションハウスのメンバーが仲間になっていく過程というか…それぞれ大事にしていることがバラバラだったのに、個性を生かしながら同じ方向を向いていく物語が「いいな」、「いい仲間たちだな」と思って見ていました。

──シーズンⅡの放送が決まり、田中福男としてレギュラー出演することになったときの思いを改めてお聞かせください。

驚きました。シーズンⅠの最終話に少しだけ参加させてもらったのですが、そのときは監督から「ナレーションをやってるんだから、最終話に出て」と言われて、賑やかしの感覚で現場にいたんです。窪田(正孝)くんやばっさー(本田翼)と一緒に写真を撮ってもらったりして(笑)。

まさか再び現場に呼ばれるとは思っていなかったですし、シーズンⅡの放送が決まって「シーズンⅠの最後に出ていたんだから、出て」と監督から言われたときは驚きました。

声をかけていただいたことはうれしかったので、ぜひ出演したいと思ったものの、ナレーションはどうするのかが気になって聞いてみたんです。そうしたら「ナレーションもお願いします」と言われて、「ナレーションと田中役は、別人ですか?」と聞いたら「一緒だ」と言われて混乱しましたね(笑)。

ナレーションは、僕が尊敬し、憧れる森本レオさんの『王様のレストラン』(フジテレビ系)でのナレーションを意識して入れていて、シーズンⅠのラストに出てきた田中福男は、ナレーションとはまったく別の…すごくクセのあるキャラで演じていたので。どうしようかと二の足を踏みました(笑)。

「ラジハの現場は、打てば響くなんてもんじゃない」

──そうした中で始まった撮影でのエピソードをお聞かせください。

広瀬アリスちゃんからは、「他の現場で会ったときに、ラジハの現場のノリで接してこないでください」って言われました(笑)。それくらい、とにかく皆さん自分を解放していて、楽しい現場なんですよね。

ラジハの現場は、打てば響くなんてもんじゃないんですよ、皆さんが。何か話題を振ったときに「いいよね」と返ってくるくらいが普通ですよね。でも、ラジハの皆さんは(マシンガンのように)ダダダダダ!と返ってくるから、「そう来るならこっちも!」と思ってガガガガガガガ!と返して…と、一足飛びで盛り上がるんです(笑)。

もちろん大きく騒ぐ人は、僕やハマケン(浜野謙太)、アリスちゃん、エンケンさん(遠藤憲一)という限られた人なのですが、丸ちゃん(丸山智己)や矢野っち(矢野聖人)も、「やるときはやるぜ!」というノリがあって、本当に楽しい現場です(笑)。

──そんな皆さんの中で、主演を務めている窪田正孝さんはどんな方ですか?

窪田くんは、僕らとも楽しくふざけることはあるのですが、やっぱりこの物語の真ん中にドンと立っていてもらわないといけなくて。窪田くんが軽く乗っかってしまうと物語がブレてしまう可能性があるということを、ちゃんと理解していることが素晴らしいなと思います。よっぽどのことがなければ、一緒にふざけることはないですから。

それは、真ん中に立とうとする意志があるからなのかなと感じます。でも、その振る舞いが嫌味ではなく、とても自然で。年齢的には楽しいことにフラッと行ってしまいがちですが、バランスをとっているのが本当にすごい。

僕ら脇にいる人は、花になったり、実をつけたり、いろいろな色の葉になったりすることがありますが、それは中心にいる幹がしっかりしていないとできないことなんですよね。そういう意味でも、窪田くんはしなやかで強い幹という印象がありますし、僕は尊敬しています。

「自分の何かが多少足りなくても、いろいろなことで補ってくれる人がいる」

──八嶋さんはバイプレイヤーとして、さまざまな作品で周囲を支える役柄を多く演じていますが、演じるうえで大切にしていることはありますか?

本当に支えることができているのかどうか、分からないですけど(笑)。でも僕は、とにかく目の前の仕事が楽しければ、まずはいいかなと思っていて。楽しくなかったら、辞めればいいので。

あとは、お芝居であり、作品なので、自分1人が頑張っても出来上がらないし、自分の何かが多少足りなくても、いろいろなことで補ってくれる人がいるし…おそらく、自分が表舞台に立つまでの間に、たくさんの人が僕より役のことを考えて準備しているはずなんですよね。だから、僕はごちゃごちゃ言わずに与えられた役に、楽しく乗っかるべきだと思いながら演じています。もちろん、「この人がどういう人か」ということは考えていますが。

周囲を支えるという部分に関して言うと、主演俳優さんだったり、ヒロインだったり、そのお話のメインになる人、そのシーンの中心にいる人が「良く見えるように」ということは意識していますね。そのシーンで何を伝えたいのかということを邪魔しないように、僕らは色味をつけたり、奥行きを出したりすることが役割だと思うので。

お客さんが「明日も強く生きていける」と一瞬でもそう思ってくれれば

──劇中で田中福男とコンビのような役・軒下を演じている浜野謙太さんにも「ささえびと」にご登場いただきました。浜野さんは、八嶋さんから見てどんな役者さんですか?

ハマケンのすごいところは、ミュージシャンだからだと思うのですが…グルーヴ感が大事な場所でバッチリ決めてくるんですよね。

台本を自分の部分しかお読みにならないので、「今、俺の順番?俺の順番きた?よし、覚えてきたものを言う!」みたいな、最初はそんな感じでした(笑)。でも、それをグルーヴ感でカバーできるし、なんといってもチャーミングです。

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──台本の読み方は、八嶋さんとお話する中で変えたと言っていました。

そうでしたか(笑)。でも、お芝居に何が正解ってことはないですから。ハマケンみたいな人もいて、僕みたいな人もいて、エンケンさんみたいな人もいて、(山口)紗弥加ちゃんみたいな人もいて。いろいろな色が同じパレットにバーッと出たときに、遠くから見ると実はすごく色鮮やかで、調和が取れてるほうがいいなって感じますね。

それに最近思うんです。僕たちはドラマを見ている人たちの状況を知らないじゃないですか。いろいろな事情を抱えて鬱屈した生活をしている方もいるでしょうし…どんな状況で作品を見るかによって作品の見え方は変わると思いますし、それぞれ見ている方の中で作品って完成するんじゃないか、と。

それは、誰をフィーチャーして見るかによっても変わりますよね。唯織(窪田正孝)をずっと追いかける人もいるし、女性だったら唯織に思いを寄せる裕乃(広瀬アリス)をモヤモヤしながら追いかける人もいると思うし。いろいろな形で感情移入して、それぞれの中で完成するので、僕らは委ねるという感じ。僕らがどう演じるかというより、受け取ったお客さんが「明日も強く生きていける」と、一瞬でもそう思ってくれれば、それでいいなと感じています。

──今後の『ラジエーションハウスⅡ』の見どころをお聞かせください。

それぞれのキャラクターがどういう人なのか、その背景も含めて、はっきり見えてきていると思います。そういうものを見せた後で、果たして僕らがどういうチームになっていくのか。そこを楽しみにしていてください。

そして、ありがたいことに田中福男をフィーチャーしていただく回がありますので、9話だけ見ていただけたらと思います(笑)。嘘です、最終回まで見てください!

役者は待つことが仕事。元気でいることが一番!

──では最後に、今後のご自身の展望をお聞かせください。

俳優って、そういうものはあんまりないんですよね。「ささえびと」と言っていただいていますが、僕が誰かを支えてるわけじゃなくて、結局、プロデューサーさんとかから「支えて来い」って言われるから、支えに行くわけで。僕がいくら「木村拓哉みたいな役をやりたいんです」と言っても、「は?」ってなるじゃないすか(笑)。使う側の方々が、「八嶋にこういう役をやらせてみたい」ということがないと、僕らはただただ待つことが仕事なんです。

0から1を生み出しているわけじゃなくて、与えられた1を、100にも500にも…もしかしたらマイナス1000にしちゃうかもしれないけど(笑)、そういうことが生業なので、特に展望とか「こういう役がやりたい」という希望はないんですよ。

でも、例えば“いい人”の役ばかりをやっていると、「ちょっとみんなを裏切るようにすげえ悪いやつをやらせてみよう」みたいな展開があったりもするんです。だから、健康で待ち続ける。いつ呼ばれても「はい!」って行けるように、元気でいることが一番ですかね(笑)。