毎週月曜21時放送のフジテレビ『SUITS/スーツ2』。全米メガヒットドラマ『SUITS』のシーズン2を原作に、負け知らずの敏腕弁護士・甲斐正午(織田裕二)と経歴詐称の天才ニセ弁護士・鈴木大輔(中島裕翔)のタッグが、さまざまな案件と向き合っていくリーガルドラマだ。
そんな甲斐と大輔の上司であり、「幸村・上杉法律事務所」の代表を務めるのが、鈴木保奈美が演じる幸村チカ。甲斐の少々強引な手段には手を焼きながらも、その実力を高く評価している。
甲斐に対して上からものを言うことができる唯一の人物であり、日本の四大法律事務所の一つを運営する代表でもあるチカは、頭の切れる“強い女性”だが、その外見からは“強さ”よりもエレガントさや柔らかさが漂う。“強く”あっても、決して女性らしさを失っていないのがチカの魅力の一つだ。
そのスタイルを作り上げているのが、今作で鈴木保奈美の専属スタイリストを務める犬走比佐乃さん。フジテレビュー!!では、犬走さんにインタビューを行い、“チカスタイル”が出来上がるまでの過程や、衣装とストーリーの密接な関係などについて話を聞いた。
“チカスタイル”が出来上がるまで
シーズン1より働く女性を中心に注目されていたチカのスタイリングは、今や“チカスタイル”として定着。タイトなスカートに女性らしいフォルムや色使いのトップスという組み合わせを軸とし、そこにさまざまなバリエーションを加えて、視聴者の目を楽しませている。
――いわゆる“チカスタイル”と呼ばれる形が出来上がるまでには、どんな過程があったのでしょうか?
シーズン1が始まるときにドラマの制作サイドからは、アメリカ版の資料をいただいたんですが、(チカのモデルになっている)ジェシカとは、体型も人種も違うので、そこからインスピレーションを受けるというよりは、保奈美さんとお話しをしていく中で作っていきました。
実は、保奈美さんとのお付き合いはかなり長くて、保奈美さんが20代の頃からいろいろとご一緒させていただいているんです。その中でドラマも何本かやらせていただいているんですけど、今回、初めて撮影に入る前に、保奈美さんの方から話がしたい、というご連絡をいただいて、お会いする機会を持ちました。
結局、そのときは細かい衣装のお話はしなかったんですけど(笑)、わざわざ時間を取って前もって話をしたいと思うくらい、この作品に思い入れがあるということを感じて、私の方でも気合が入りました。
具体的なスタイリングに関しては、私も最初は『SUITS/スーツ』というタイトルだけに、スーツスタイルも用意はしていったのですが、2人で「なんか違うね」という話になって。そうやって回を重ねながら選んでいく中で、段々と方向性が見えてきました。パート2の衣装合わせのときには、保奈美さん、衣装を着たら「チカになった」とおっしゃっていました(笑)。
――保奈美さんとは具体的にどんなやり取りをしているのでしょうか?
基本的にはまずは私の方からいくつかセレクトして、それを見ながら、このシーンはこっちの方がいい、とか、もう少し強いイメージが出るものがいい、とか、を話して、それに合わせて変えるなどをしています。演じる側として、チカだったらこのときはこれを選ぶだろう、というのが保奈美さんの中にあるんですよね。それをお話ししながら作っていけるのは、私としてもとても楽しいです。
――法律事務所というと、女性もスーツで、色味もモノトーンや控えめな色が多いイメージがありますが、チカはスーツよりもブラウスで、目にも楽しい彩りのある服をいつも着ています。その辺のこだわりはありますか?
働いている女性はスーツじゃなきゃ、という風に思われる方も多いとは思うのですが、ブラウスでも着方次第では大丈夫なんですよ、というのを提案したい、という思いがありました。スーツを着なくてもきちっと感は出せますし、チカのスタイルなら会議に出るときでも大丈夫だと思います。
それから、チカの周りには男性が多く、皆さんスーツを着ていますから、そこでチカもダークな色を着ていたら、見栄えが寂しいですよね。花を添える意味もあって、色味は工夫しています。
普段使いとは違うドラマならではのスタリング方法とは?
ドラマでのスタリング以外にも、ファッション誌やCMなど、幅広くファッション業界で活躍し、さまざまなスタイルを提案している犬走さん。その中でも“ドラマ”という現場特有の気遣いが必要だと言います。
――普段のスタイリングとドラマでのスタイリングはやはり違いますか?
違いますね。ドラマではかなり派手にしています。テレビに映ったときに、目で楽しめることを意識しています。あと、チカの出演シーンはピンポイントのことが多いので、このシーンで柄を着たら、次は無地とか、この色だったから、次は違う色とかの構成も考えています。
――ストーリー展開に合わせたスタイリングも必要ですよね。
そこは保奈美さんとお話しをさせていただいています。重要なシーンがあるときは、どんな風に見せたいかをお聞きして、それに合ったものを提案できるようにしています。脚本を読まれたときに、保奈美さんはイメージを書き留めたりされているんです。それを伝えてくださったりもするのですが、大体、私も同じようなイメージを持ってることが多いですね(笑)。
強いイメージが必要なときは、ハッキリした色味を使います。なので、1話の終わりで上杉(吉田鋼太郎)と対峙するシーンは闘争心を表すために赤を着ています。逆に、蟹江先生(小手伸也)とのシーンはコミカルなことが多いので、遊びがある派手目の柄だったり、色も少し柔らかめの色を使ったりしています。
――ポスターにも使われている1話の衣装は、明るい若竹色の爽やかな色味のブラウスですね。
春スタートのドラマということで、春色でキレイな色合いを使いたいと思ってこれにしました。一方で、(上杉の妻が亡くなって)墓地に行くシーンでは、チカならこれくらいでもOKだろうと思って、アメリカっぽいスタイルで、ヘッドドレスにマントという形を提案させてもらいました。
――あのスタイルはなかなか真似できないと思いました。
そうだと思います(笑)。でも、こんなのもいいんじゃない?というのを、見ている方に楽しんでいただけたらと思ってスタイリングしました。
――2話での上杉復帰後初の会議のときのスタイリングは、普段とは少し違う雰囲気でしたが、チカのキレる女性像が際立っていて素敵でした。
シーンの雰囲気を考えて、エグゼクティブな女性像を強調するスタイリングにしました。特に会議は周囲が男性ばかりなので、濃紺のワンピースに、パープルのジャケットをわざと肩掛けにして、女性らしさを出しています。
そして、ワンピースとジャケットがきちっとしたスタイルなので、靴、バッグ、ジュエリーで外しています。靴とバッグにはスタッズがついていて、そこでちょっとした闘争心も表しています。チカならこのくらいの遊びはあってもいいよね、という感じです。
私たちでも真似できる?“チカスタイル”のポイント
チカのスタイルに憧れはあるものの、自分が真似をするとなると少々ハードルが高いと思ってしまうところも。そこで、全身同じものは身に付けられなくても、“チカスタイル”に近づけるポイントを教えてもらった。
――“チカスタイル”を真似したい、と思う視聴者も多いと思うのですが、どのようにしたら近づけるでしょうか?
チカはボウブラウス(襟状の紐がついたブラウス)をよく着ているのですが、ボウの巻き方を毎回、工夫しているので、そこを見ていただけると嬉しいですね。普通にリボン結びをしてしまうと合唱隊のようになってしまうので(笑)、横で結んだり、結び方を変えたり、オリジナルでやっています。
ボウブラウス自体が扱っているブランドが少ないのですが、昨年ぐらいからヨーロッパでもクラッシックな形のものが出てきて増えてきたので、楽しんでみてほしいです。