「病気に大きいも小さいもない!」

キターーーーー!!!

すいません。つい興奮してしまいました。

みなさん、ついに来ましたよ!!

え?…何が?って…?気付いてない?こんなにはっきり言っちゃってるのに、やっぱり気付いてない??いや、僕らアラフォー世代のドラマっ子は気付いてる…と信じてますよ!…そう!「アンサング・シンデレラ」から感じる“「踊る大捜査線」み”、じゃないですか!

市民(患者さん)に愛されるひたむきな主人公、身近な存在でありながら気付くことのなかった業界トリビア、個性豊かな同僚たちとコミカルな上司、キャリアと所轄(医師と薬剤師)というサラリーマン的構図…と、これまでずっとどこかで僕は「アンサング・シンデレラ」から“「踊る大捜査線」み”を、ほんのり…感じてたんですよ。

特に第1話で登場した、いけ好かない産婦人科医の林先生(飯田基祐)が見せた、薬剤師への軽視、対立、攻防戦なんて、まさに「踊る大捜査線」的でしたよね。

どんな職場でも、例えば病院内だって“学長選挙”みたいな医療ドラマお決まりの構図ではなく、薬剤師というこれまで知ることの出来なかった人たちの中でも、身近に感じられるサラリーマン的な構図があるんだな…まさに“踊る”…としみじみしてたんです。

だけどいかんせん、ニュアンス過ぎて伝わらない。しかも、もう一つの決め手だったのが、「踊る大捜査線THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」で鮮烈に登場した真矢ミキさんがいる!!…んだけど、キャラ全然違う!だけ…。根拠が薄い!だから最近はその辺の妄想も諦めてて、忘れかけてたんですよ。そんな矢先、

「病気に大きいも小さいもない!」

キターーーーー!!!

つまり「事件に大きいも小さいもない!」じゃないですか。深津絵里さん演じる恩田すみれが言ったセリフじゃないですか。いきなり、想像もしてなかったタイミングで、こんなセリフが飛び出たもんだから、ちょっと悲鳴あげちゃいましたよ!完全一致ですよ!!…ね?

だけどこれ、オマージュなのかどうか、制作スタッフが意識したかどうか、そんなことはどうだっていいのです。僕の妄想に勝手だけど答えが出ただけで、それで満足なのです!ご馳走さま!!

っと、ついつい、自分勝手な妄想に字数を費やしてしまいましたが、今回もなんて盛りだくさんな内容だったこと!

「医者は患者を診る。薬剤師は患者の生活や周りの人たちも全部診る」(第4話、田中圭演じる瀬野のセリフ)というこのドラマの信念をまた違った角度で、前回覚醒した相原(西野七瀬)の視点からそれを実践してみせるという回。

それがまた、相原が暴走して、失敗して…っていうありがちではなく、そんな気配を見せ、ミスリーディングさせつつも、相原らしいやり方、若い発想と視点から、葵(石原さとみ)とも違った“おせっかい”によって、患者さんに寄り添うことが出来ましたとさ…、ってなんて良心的なお話!

相原ちゃん(心の中でちゃん呼び)はもうすでに僕の中ですっごく出来る子で、ドライとウェットのバランスを絶妙に保った子で、だから妙に熱っぽくなったり、そのせいで大きな失敗が訪れるとかだと、これまでの成長やキャラを全部ひっくり返しちゃうような気がして冷や冷やしてたんですが、ちゃんと自分なりに、葵のように野球大会やろうぜ!(前回参照)みたいな壮大なおせっかいじゃなくても、小さいけれど丁寧なおせっかいによって患者さんに寄り添えました…ってなんて素敵。

しかも、それを受ける販田部長(真矢ミキ)が「わかる(涙)」って、まさか「わかる!」が、感涙の「わかる!」の域にまで達するとはね…オチまで完璧!

そしてもうひとつの軸となった高齢女性の小川早苗さん(高林由紀子)のエピソードの切なさたるや…。飲んでいる薬を明かさない秘密から、薬が効かない=“多剤耐性菌”なる人類滅亡の危機…という恐ろしく壮大なお話へ発展しそうになり、そこから服用している薬を隠しているのではないか?患者さんと腹割って話せる間柄か?というミニマムだけど薬剤師としての基本姿勢に立ち返り、不要な抗生剤を飲んだことで起こる“クロストリジウム腸炎”の疑いがあると判明。

早苗さんが飲んでいた薬とは何かを葵なりのおせっかいによって探しあて、しかも電話じゃなくわざわざチャリンコ乗って出かけてった時はさすが葵!って拍手したよね。だけどそのことによって顔と顔をつけ合わすことで、かかりつけ医(佐戸井けん太)の思いも深く知ることができ、そしてそれは、早苗さんは誰とも接点がない、自分のために出してくれた“薬だけが社会との接点”だった…ってなんて悲しすぎる真相。

また、その“薬だけが社会との接点”という部分を、決して美談にすることなく、ちゃんと否定する…しかもそれを刈谷(桜井ユキ)の過去と絡めて、しっかり説得力を持って、実感できるようなエピソードでもって否定する…って、無駄がなさすぎ、完璧すぎる。

場面のその部分だけを見ると、シンプルでひねりも少ない感動物語なのに、それに至るまでの経緯とキャラクターの絡め方が尋常じゃないくらい丁寧だから、逆にそのシンプルがより大きな感動を生むんだよね…。素晴らしい。

で、今回、飲んでる薬はお医者さん、薬剤師にちゃんと伝えましょう…という教訓のお話だったわけですが…。こんな素晴らしく完璧なパッケージングで“教訓”を見せられたのだから、僕も白状せざるを得ませんね…。実は…、僕…、薄…毛…、治療薬…を、飲ん…で…いるんですが…。それ…恥ずかしくて、いつも、隠しておりました…。それも、言った方が…いいんですよね?(当然)

“薬だけが社会との接点”…っていう哀しい真相とは雲泥の差!!だけどこっちも哀しいですよね?見ようによってはこっちも哀しいですよね?せっかく白状したんだから「アンサング・シンデレラ2」のエピソードでぜひ使って下さいね!?

text by 大石 庸平 (テレビ視聴しつ 室長)